巷で絶賛のiDeCo でも実は、気をつけたい落とし穴もいっぱい
新しくなった個人型確定拠出年金、通称「iDeCo(イデコ)」。その節税効果の高さから、「最強の節税術」「絶対に儲かる資産運用法」などと巷では絶賛されているようですが、実は、すべての人に手放しで勧められない弱点もあります。果たして、あなたには向いているでしょうか?
「自分で運用する」年金
そもそも「確定拠出年金」って?という方のために少し説明を。
意外と勘違いしている人も多いのですが、公的年金(国民年金や厚生年金)は、自分が積み立てた保険料が将来年金として戻ってくるわけではありません。現役世代が払った保険料で高齢者世代に年金を給付する仕組みです。
そのため、少子高齢化が進んで高齢者のほうが多くなると、現役世代の負担がどんどん大きくなってしまいます。そこで、保険料の一部を年金積立金として運用しているのです(運用しているのは年金積立金管理運用独立行政法人)。
将来受け取る金額は自分次第
これに対して、加入者本人が運用方法を選んで積み立てていくのが確定拠出年金(日本版401k)で、企業が運営する企業型と、個人で行う個人型(=iDeCo)があります。ちなみに、「individual-type Defined Contribution pension plan」から5文字を取って「iDeCo」なんだそうです。
2017年からすべての人が個人型に加入できるようになりましたが、掛金(保険料)は職業によって異なっていて、自営業者で月6.8万円、会社員なら月1.2万~2.3万円です(会社員には企業年金もあるため)。「確定拠出」とは、この掛金が確定しているという意味です。
毎月決まった金額を納め、それを自分で選んだ投資信託などで運用し、損益が反映されたものを将来年金として受け取る——これが確定拠出年金の仕組みです。したがって、自分が払ったお金が自分の年金になりますが、いくら受け取れるかは自分の運用実績次第ということになります。
なんと言っても魅力は節税効果!
そんなiDeCoの大きなメリットは節税効果です。
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まず、支払った掛金はすべて課税対象から控除されます。たとえば、自営業で課税所得300万円の人が月額上限の6.8万円を積み立てると、所得税と住民税をあわせて年間16万3,200円の節税になります。30歳から積み立てたとすると、60歳までの節税額は計489万6,000万円にもなります。
さらに、通常の金融商品は、運用益に計20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの運用益はすべて非課税です。しかも、将来年金として受け取った際にも所得控除を受けられます。
年金ゆえの深〜い落とし穴
こうして見てみると、iDeCoはたしかにお得です。どうせ同じ投資信託を買うならiDeCoにしたほうがいいじゃん、と思えてきます。しかし、あえて言いたい。決して万人に勧められる商品ではないということを。ここからは私の実体験をもとに、見落とされがちな落とし穴を解説します。
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私は何度か転職を繰り返している会社員ですが、最初に勤めた会社が企業型確定拠出年金に入ることになり、言ってみれば「入らされる」形で確定拠出年金を始めました。しかし数年後にその会社を退職し、次の就職までは9か月ほど間が空きました。
どんどん積もる手数料の罠
求職中の私のもとに、iDeCoを預けている金融会社から運用状況の報告書が届きました。それを見てびっくり! 数か月で数千円のマイナスになっていたのです。私は、ほぼノーリターンでいいからノーリスクの商品を選択していました。それなのに資産が減っているのです。
当たり前のことですが、iDeCoの運用には銀行や証券会社などの金融機関が携わるので、その運営管理手数料を取られるんですね。会社勤めをしている間は、毎月一定の金額がiDeCoに振り込まれて資産が増えていくため、手数料の存在に気づいていなかったのです。
手数料は多くの場合、月300~400円程度。手数料0円を謳う金融機関も増えていますが、実は国民年金基金連合会などへの手数料(年間2,000円ほど)が別途かかります。iDeCoは年金ですから、60歳までひたすら払い続けることになります。塵も積もれば……ですので注意しましょう。
国民年金もちゃんと払いましょう
手数料に泣いた私に、あくどい考えが浮かびました。国民年金は自分ではなく親世代に払うものですが、iDeCoは、自分が払ったお金は自分に戻ってきます。それならば、国民年金を払わずにiDeCo分だけ払えばいいのではないか!と。
しかし残念ながら、そういう不届き者が出ない仕組みになっていました。日本の年金制度は3階建てで、1階が国民年金、2階が厚生年金、その上がiDeCoです。つまりiDeCoは、国民年金など下階を払っているからこその資格なんですね。
国民年金の保険料を免除されていたり、未納だったりする場合には、たとえiDeCoの掛金を支払っても返金されてしまいます。しかも手数料を引かれて……。だから、iDeCoで年金を積み立てたいなら、国民年金の保険料はちゃんと払っておきましょう。
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60歳になるまで下ろせない!
そんなこんなで、もうiDeCoなんてやめてやる!と思ったのですが、「年金」という性格の金融商品を簡単に解約できたら、そもそも制度として成り立ちませんよね。老後の資産形成を目的とした年金だからこそ数々の税制優遇があるわけで、資産は原則60歳まで引き出すことができません。
でも、貯蓄形成のつもりでiDeCoを始めた人には、これはとてつもない落とし穴です。いくら「老後のため」と考えていたとしても、「重い病気にかかった」「子供が私立校に行く」「ずっと働き続けるはずだった会社を辞めた」など、人生には想定外の出費が付き物です。
そこにまとまったお金があるのに必要なときに使えないのであれば、「貯蓄」としては本末転倒と言わざるを得ません。ライフスタイルがよく変化する人は特に、そうした場面では、毎月こつこつと貯めているiDeCoはなんの役にも立たない……ということを覚えておきましょう。
節税という甘い香りに惑わされない
たしかにiDeCoで節税はできますが、実のところ、月々の掛金が少ないと大した節税にはなりません。掛金を大きくできる経済的余裕がある人ほど(節税効果も高くなるため)、iDeCoに向いていると言えるでしょう。
また、私も泣いた手数料にはくれぐれも気をつけてください。老後の資金だからとノーリスクで運用したい人ほど、運用益より手数料のほうが高くならないよう注意が必要です。預けたはずの資産が毎月微妙に削り取られていくのは、結構モヤモヤしますよ。
そして、投資信託には当然のように元本割れのリスクがあります。運用商品を選ぶのは自己責任なので、将来の自分のために慎重に判断しましょう。金融機関によっては、元本が保証された定期預金や年金保険を選ぶことも可能です。
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年金ということをお忘れなく
iDeCoの掛金は月5000円から。家計が苦しくなればストップや減額もできます。節税にばかり気を取られず、60歳まで下ろせない年金なのだと理解したうえで、無理のない金額で始めて、ライフスタイルの変化に合わせて見直すことをおすすめします。
で、私のiDeCoはどうなったかと言うと、一定の金額があれば毎月の手数料が0円になる金融機関をようやく見つけ(10年前はなかった!)、そちらに資産を移すことでひと段落しました。もとの金融機関に数千円の移管手数料を取られましたけど……(涙)
「オイシイ話には裏がある」のが世の常です。とくに「絶対に儲かる」という表現には、「絶対に裏がある」くらいの気持ちで接しましょう。もちろん、iDeCoをうまく活用して節税できる人もいますが、それが自分の求める利益なのか、はっきりさせておくことが必要です。