まさかの公募割れ!を回避する 「損しないIPO銘柄」の見極め方
IPO投資は「当選すれば儲かる!」と人気の手法です。抽選に申し込んでも当選することはまれですが、だからこそ運良く当選した場合には、ついつい飛びついてしまいがち。ところが、いざ上場してみると……まさかの公募割れ!?
せっかく上場益を狙って投資したのに損をする羽目にならないよう、実績損益をランキングで振り返りつつ、それに基づいたIPO銘柄の見極め方をお教えします。
【IPO投資のざっくり解説はこちら】IPOで株価はどこまで「飛ぶ」のか? 初値爆上げランキング
本当にあった公募割れの話
「公募割れ」とは、上場後の初値が公募価格(売り出し価格)を下回ることです。2017年のIPO(新規上場)は90社、そのうち公募割れ銘柄は8社ありました。この8社に投資した人は、初値で売却した場合、公募価格との差額分を損したことになります。
2017年の残念ランキング
以下は、2017年に公募割れとなった8社を、公募価格と初値の差額(=初値で売却した場合の損失額)順に並べたランキングです。投資家に最も損失を与えてしまったのは西本Wismettacホールディングス<9260>。100株あたりの損失額は28,500円で、騰落率はマイナス6%でした。
ワースト8社はこんな銘柄
【第1位】西本Wismettacホールディングス<9260>
日本食を中心としたアジア食品・食材を「Shirakiku」ブランドで主に米国で販売する企業。アジア食グローバル事業を柱に、農水産商社事業も手がけ、欧州展開も加速中です。
[どうして割れた?]
東証1部案件で、ティックポイント・インク<6697>やマネーフォワード<3994>といった注目の銘柄も同日上場であったことから、残念ながら初値は公募価格を割り込み、初値売りでは28,500円のマイナスとなりました。
【第2位】スシローグローバルホールディングス<3563>
回転すしチェーン「あきんどスシロー」を展開し、回転すし業界では首位。2009年に上場廃止となっていましたが、2017年3月、再上場を果たしました。
[どうして割れた?]
認知度こそ高いものの、超大型案件で、公募株なし、売出株のみの再上場。そして、仮条件の下限で公募価格が決まったことで人気のなさが露呈し、初値売りではマイナス17,000円という残念な結果となってしまいました。
【第3位】LIXILビバ<3564>
家庭日用品、インテリア用品、住宅設備機器等の総合小売業、住宅リフォームなど数業態を展開する企業。「スーパービバホーム」(売り場面積1万㎡超が目安)などを運営しています。
[どうして割れた?]
東証1部上場案件であることや、親子上場(LIXILグループ<5938>の子会社)で再上場銘柄、公開規模が400億円超とサイズが大きいこと、さらに地政学リスクへの警戒感が高まり地合も悪く、初値売りではマイナス10,300円となりました。
【第4位】プレミアグループ<7199>
オートクレジットを中心としたファイナンス事業、ワランティ(自動車保証)事業などを手掛け、中古車小売店を主な取引先として複数サービスを提供しています。
[どうして割れた?]
公開規模が大きく、投資ファンドの出口案件ということもあり、初値は公募価格を下回りました。
【第5位】マクロミル<3978>
オンラインを中心としたマーケティング・リサーチや、デジタル・マーケティング・ソリューションの提供を行う企業で、2014年に米ベインキャピタルの完全子会社となり、上場廃止した経緯があります。
[どうして割れた?]
東証1部上場案件であることや投資ファンドが大株主であること、再上場案件であることなどが懸念され、2017年の公募割れ第一号となりました。
【第6位】MS&Consulting<6555>
調査員が顧客企業の運営する店舗などを訪問して、実際の購買活動を通じて商品やサービスの評価を行う、という「顧客満足度覆面調査」が事業の柱の企業です。
[どうして割れた?]
マザーズ上場案件にしては公募規模が50億円超えと大きいこと、ベンチャーキャピタル系の出口案件であったことから、初値は公募価格を割り込む結果となりました。
【第7位】アルヒ<7198>
固定金利住宅ローン「フラット35」の販売シェアトップ。住宅ローンの貸付および回収を行うモーゲージバンク事業を展開しています。
[どうして割れた?]
大型案件であること、また超大型案件であるSGホールディングス<9143>の上場翌日ということも懸念され、初値が公募価格を下回りました。
【第8位】ウエーブロックホールディングス<7940>
各種合成樹脂製品の製造・加工・販売などを手がける企業。2009年にMBO(経営陣による買収)を実施して、東証2部上場廃止した経緯があります。
[どうして割れた?]
東証2部上場であることや、公募規模が大きく、再上場であること、ファンドの出口案件であることなどが懸念されて、初値は公募価格を下回る結果となりました。
公募割れ銘柄を見極める5つのポイント
では、公募割れする銘柄に共通するポイントを見ていきましょう。言い換えると、「公募割れしそうな銘柄を見極めるポイント」となり、その反対側には「上がる銘柄のポイント」が見えてきます。
①上場市場が東証1部または東証2部
IPO投資は、新規上場企業の成長性に期待して投資するものです。一般的にはIPOは創業から間もない企業が行うため、上場先は新興市場であることが多いです。それゆえ、マザーズ上場は成長企業というイメージが強く、注目度も高くなります。
一方で、東証1部、2部上場は老舗企業や成熟した企業というイメージがあり、成長期待で人気化するのは難しく、初値にはマイナス要因となりがちです。
②公開規模が大きい
公開規模とはIPOのボリュームサイズのことで「発行価格×発行株式数」で表されます。IPO銘柄の上場によって市場に資金が流入しますので、「吸収金額」とも呼ばれます。
そして、株価は需給で決まりますので、公開規模が小さければ需給がタイトで人気化し、株価が上がりやすく、公開規模が大きければ需給が悪化して初値にはマイナス要因になりやすい、というわけです。目安としては、以下の数字が挙げられます。
- 公開規模が10億円以下……初値にプラス要因
- 公開規模が10〜20億円……ニュートラル
- 公開規模が30億円以上……初値にマイナス要因
③公募価格が仮条件の上限で決まらない
IPOの価格は、企業と証券会社が協議して「いくらから、いくらの間」という公募の仮条件を決定し、その仮条件を投資家に提示して、投資家の需要状況を把握することによって、マーケットに即した公募価格が決定されます。
人気のある銘柄なら、仮条件の上限で公募価格が決定します。逆に言うと、公募価格が仮条件の上限でない場合には、あまり人気のない銘柄だと判断できるわけです。なお上限で決まらない場合は、仮条件の中値や下限で決定する場合が多くなります。
④公募株式より売出株式のほうが多い
通常のIPOは企業が新しい株を発行し、それを投資家に販売して事業資金を得ます。これを「公募株式」と言います。一方で、創業者など既存の株主が手持ちの株の中から売り出す株のことを「売出株式」と言います。そして売出株式の分は、既存の株主に資金が入ります。
つまり、売出株式が多い場合は、既存の株主が利益確定のための「売り」が入るため、初値にはマイナス要因となります。
⑤再上場銘柄
過去になんらかの経緯で上場廃止となった企業が、再び上場するケースは多くありますが、過去に一度上場しているため、目新しさがありません。よほどの成長性がない限り人気化するのは難しく、初値にはマイナス要因となります。
もしも当選したら覚えておくべきこと
2017年に公募割れとなった8銘柄も、上の5つのポイントのうちどれか、または複数のポイントが当てはまっています。これらのポイントをチェックするだけでも、IPO銘柄を見極める力がついてくることでしょう。また、同日に上場する他の銘柄が、これらのポイントの反対側にあって人気となっていないかどうかも、見ておく必要があるかもしれません。
抽選に当選しても、辞退することは可能です。もしも当選したとしてもすぐには飛びつかず、冷静に判断して、実際に購入するかどうかを決めるようにしてください。