【株と平成と私】FXから仮想通貨へ──アベノミクスでハイになって学んだこと

川島寛貴
2019年4月17日 8時00分

 

平成を賑わせた相場の中には、「FX」「仮想通貨」といったキーワードも必ず登場します。これらをきっかけに「投資」というものに初めて触れた人も多いのはないでしょうか。

FX発、リーマンショック経由、アベノミクス……そして

平成を「投資」で振り返る──といっても、私の歴史は浅い。平成18年(2006)あたりからのスタートだ。その短い経験の中からではあるが、3つの視点から平成を考えてみたいと思う。

  • 600倍のレバレッジ:FXから「投資」の扉が開かれた
  • リーマンショックで閉じられた扉:メリルリンチ2ドルの衝撃
  • はじめての上昇相場:上げ続けることに慣れていない僕たちの運命

1万円で600万円分の取引!? 〜FXレバレッジ物語〜

だいたいこの手の話は友人・知人の噂話から、と決まっている。私もその口であった。

「FXで100万円儲かったらしい」
「元手は数万円みたい」

そんな心躍るワードが出てくるなかでその本人が登場し、質問攻めにしたことを覚えている。

結局、600倍近いレバレッジを全力でかけて、たまたま「ポンド円」で数円(数百pips)を見事に抜いた(=利益確定した)ということだった。当時は話の10分の1もわからなかったが、いま思えば、そういうことだった。

必死で教えてもらった会社に口座開設をし、20万円を入金。1か月で全額がしっかりキレイになくなったのは、ご想像の通りである。こうして私の「投資」の扉が開かれたのでした。

リーマンショックの衝撃 〜日々、世の中が変わっていく中で〜

平成20年(2008)9月15日に起こった「リーマンショック」。当日、ニュースや周りは騒いでいたが、私は正直、事の重大さを認識できていなかった。

確かに相場は全面安、日経平均株価もそれを受けて大幅安(9月15日は敬老の日で祝日だったため、翌16日がその日である)にはなったが、605円安(▲4.9%)の11,609円となり「歴史的な大暴落の日」とはならなかった。

(平成31年〈2019〉4月の現在の感覚で言えば、1,000円安程度の「〇〇ショック」に慣れてしまった投資家の皆さんは、この程度ではもうビクともしない鋼の心をお持ちだと思います)


(Chart by TradingView

もちろん、ここから40日間かけて、日経平均は7,162円(▲38%)まで下落し続けるわけだが、日々のニュースを受けながらポジションをもっていなかった私には、もはや自分事ではなかった。

ただ、非常に記憶に残っているのは「AIGの株価が1ドル」「メリルリンチが2ドル」といった個別銘柄の暴落だ。それこそが、私にこのショックの凄まじさ(銘柄の紙切れ感)を感じさせたのかもしれない。

平成が終わろうとしている今、このときにメリルリンチを買収したバンク・オブ・アメリカがトレーディング・投資運用事業から「メリルリンチ」の看板を下ろすというのも、一つの歴史が終わるのだなと思わせるニュースだった。

上昇相場を知らない僕たちは、そして、ハイ(灰)になった

100年に一度の金融危機として名を馳せた「リーマンショック」から「ギリシャショック」「チャイナショック」など、ある意味でショックがブームになり、毎年「100年に一度」が来るボジョレーヌーボーのような状態になった(毎年、「最高の出来です!」みたいな)。

そんななか、日本では自民党安倍政権が誕生し、「アベノミクス」による上昇相場が勢い良くスタートする。

平成24年(2012)12月のご祝儀相場そのままに、平成25年(2013)1月〜5月まで圧倒的な強さで上昇し続けた。1月4日の10,604.5円にてスタートした日経平均株価は、5月23日には15,942.6円(+66%)まで上昇したのだった。


(Chart by TradingView

結果から見れば、簡単な相場に見えるかもしれない。ただ、この相場を買い続ける人はあまりいなかったのも事実だ。少なくとも私の周りには。

なぜか? それは「これほどの上昇相場を体験したことがない世代」だったからに他ならない。文字通りの疑心暗鬼のなか、少しずつ買っては売る。次は買って、ちょっと買い増す。そして利益を確定する。途中の調整的な急落で損切りをする。そんなことを繰り返した5カ月間。

これは本当に長期上昇のトレンド(米国株に見る3〜5年続く強い上昇相場)なのか? そう勘違いし始めた頃(もちろん、新聞・雑誌も盛り上げMAX中)、日経平均はわずか数日で3,000円近い急落を演じてみせた。これが相場だ!とでも言わんばかりに。


(Chart by TradingView

このときの私はと言えば、5月上旬に「この波に乗り遅れるなー!」と買いに買い増しており、信用も全力で駆使していた。期待に胸と財布とポジションをパンパンに膨らませながらハイになり、そして、灰になったわけだ。

平成の最後に思うこと

平成25年(2013)に体験したはじめての上昇相場を、私は平成29年(2017)に「仮想通貨」において再確認した。うまく乗ったこともあったが、結局これを見極めるのは不可能だという実感を、改めて体験もした。

  • 勝ち続けるためには「再現性のあること」しかやらないこと。
  • 予測できないことは「体験する」ことよりも「避ける」こと。
  • そして、トレードを「楽しまない」こと。

そんなことを学んだ平成だったと思うわけです。

[執筆者]川島寛貴
川島寛貴
[かわしま・ひろたか]「みんなの株式(みんかぶ)」創業メンバーとして、多くの億トレーダーやアナリストから豊富な知識とテクニックを吸収。投資アドバイザーとしてセミナー講師などもこなす、通称「為替王子」。「ワールドビジネスサテライト(WBS)」、「よるべん」(TBS)、日経CNBCほかメディア出演多数。
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