ハブ、オービック、エディア… 2019年相場を人知れず盛り上げた銘柄たち
株式市場を賑わせるのは、誰もが注目する大型株だけではありません。様々なテーマや業界ごとに、話題を振りまき、株価を大きく動かせて、相場を盛り上げる銘柄があります。「かぶまど」執筆陣による「2019年いちばん私をアツくさせた銘柄」、今回はそんな銘柄たちの登場です──
泡と消えた「ハブ」への期待
・山下耕太郎(個人投資家、元・証券ディーラー)
「ラグビーワールドカップ2019日本大会」が9月20日から11月2日まで全国12会場で開催されました。日本でもラグビー人気が高まりつつありますが、ヨーロッパやオセアニアではオリンピックやサッカーワールドカップに次ぐ世界規模のスポーツイベントです。
ラグビー関連として注目を浴びたのがハブ<3030>。英国風パブ「HUB」などを展開する企業です。
「ラグビーファンは支払い金額を気にせず、水のようにビールを飲む」と言われます。今大会参加国の中で年間ビール消費量が1位なのは、アイルランドの94.9リットル。これは日本の2.4倍にもなります。オーストラリアや南アフリカなど強豪国も上位に並びます。ラグビー強豪国は、ビール強豪国というわけです。
私自身もビール党なので、ハブの値動きには注目していました。9月3日に1,055円の安値をつけていた株価は、開幕直後の24日に1,445円まで上昇。しかし、閉会後の11月13日には994円まで下落。その人気は一過性で終わりました。
(Chart by TradingView)
「オービック」にお任せあれ
・川島寛貴(投資アドバイザー、「為替王子」)
「勘定奉行にお任せあれ〜♪」でおなじみなのはオービックビジネスコンサルタント<4733>。業績も株価も好調で、時価総額は約4000億円(2019年12月現在)。
この親会社がオービック<4684>で、時価総額はなんと約1.5兆円(同)。日本のERP(基幹系情報システム)の草分け的存在で、業績は絶好調。2020年3月期(通期)の業績予想は売上800億円、営業利益410億円、純利益323億円と、システムベンダーでは考えられない利益率を叩き出しています。
(Chart by TradingView)
2019年は、大手企業向けソフトウェアを手がけるワークスアプリケーション(現在は上場廃止)が主力2製品をアメリカの投資会社に売却するなど、SaaS(Software as a Service=インターネット経由で、必要な機能を必要な分だけ提供するソフトウェア・サービス)が盛り上がりました。
その一方で、国内での安定した基幹システム提供は「オービックにお任せあれ」な状態であることが明確になったのが、2019年だったのかなと思います。大企業向けの高単価なERPに対して、中小企業向けのクラウド(SaaS)は安価で便利で標準的。システム業界も明暗が分かれてきました。
オタクの期待を背負って──「エディア」と「オルトプラス」
・網代奈都子(OL兼トレーダー)
私が今年気になった銘柄は、ずばりエディア<3935>です。なぜならオタクコンテンツ銘柄で、かつ、ほぼ臆測だけで株価が上がった銘柄だからです。
今、女性のオタクに超流行っている人気男性声優を起用したキャラクターによるラップユニット「ヒプノシスマイク」(運営はキングレコード)がソーシャルゲーム化を予定しています。そのゲーム開発をオルトプラス<3672>が行うという発表が9月にあり、同社は株価を順調に伸ばしました。
まぁ、これはわかります。ですが、さらにここで「エディアもすでにヒプマイ関連グッズの販売を行っているし、自社でゲーム開発も手がけている。ってことは、エディアもヒプマイのゲームに関わるのでは!?」という臆測が生まれたのです。
その結果、エディアの株価は3営業日連続のストップ高、年初来高値も更新しました。
ただし、その前週に発表された中間決算で、前四半期が営業黒字に転換したこともあり、単純に「ヒプマイ効果」とは言えません。それでも、ダダ下がりだった株価に、上記の「臆測」が喝を入れたのではないかとも思われます。年初に380円ほどだった株価は、800円を超えるまでに上昇しました。
(Chart by TradingView)
ちなみに、エディアが本当に「ヒプノシスマイク」のゲームを開発するかのどうか、いまだ「公式発表」はされていません(2019年12月時点)。
オルトプラスのほうは、当初の12月だったゲームのリリースが3月に延期となり、その発表に伴って株価はストップ安となりましたが、年末に向けては再び上昇を見せています。
(Chart by TradingView)
オタクコンテンツの「旬」は結構移り変わりが速いです。また、投資家がコンテンツを見るときは、オタクがコンテンツを見るときよりも期待重視になるでしょうから、オタクがコンテンツに目移りする旬よりもさらに早くなるでしょう。
ヒプノシスマイクがゲームをリリースしたときに株価は再び急騰するか、あるいは、そのころにはまったく別のコンテンツ(銘柄)に市場の注目が集まっているのか、オタクを愛するトレーダーとして今後も注目していきたいです。