企業のホンネが丸わかり? もっと活用したいアニュアルレポートの楽しみ方

佐々木 達也 2019/11/05 8:00

アニュアルレポートをご存じですか?

銘柄選びでいろいろな企業について調べているうちに、最近の業績だけでなく、そもそもどういう事業構造の企業なのか、どういうビジョンを持っているのか、といったことまで知りたくなることもあるでしょう。そのようなときに役に立つのが「アニュアルレポート統合報告書)」です。

アニュアルレポートと統合報告書

アニュアルレポートは「年次報告書」ともいわれ、事業の年度が終了してから投資家や株主、金融機関などに向けて作成される経営や事業全体の総合的な情報をまとめたものです。

決算資料に比べて写真やグラフなどが活用されており、初めて企業について調べた場合でも、直感的に企業の全体像が理解できるような構成になっていることが多いです。

統合報告書は、もともと別々に公表されていた財務情報と非財務情報を〝統合〟して作成される書類ですが、近年ではアニュアルレポートと同一に記されることも多くなっています。そこで本記事でも、統合報告書の要素を含む文書としてのアニュアルレポートとして扱います。

アニュアルレポートに書かれていること

アニュアルレポート(統合報告書)は、有価証券報告書などと異なり法定の提出書類ではないため、企業によりフォーマットは異なります。

本来のアニュアルレポート、つまり年次報告書は、その名のとおり、企業の年次の財務の報告書という位置付けでした。しかし近年は、中・長期の成長戦略や環境への取り組み、コーポレートガバナンスといった非財務の情報も企業価値の向上に寄与するとして重視されるようになっています。

さらに、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)に関する情報のように、企業の競争力強化や持続的発展だけでなく、社会全体の利害関係者に対して、経済全体の活性化やより良い社会づくりを目指す自発的な取り組みなども記載されるようになっています。

そんなアニュアルレポートに書かれている内容は、大まかに以下の4点に分けられます。

  • どのような企業で、どのような事業展開を行っているか
  • 売上高や利益、資産内容などの財務情報
  • 今後どのような経営戦略を持っているか
  • 企業として伝えたいこと

この先は、NTTドコモ<9437>の実際のアニュアルレポートをもとに、その内容を詳しく見ていきましょう。なお、以下に引用する同社の2018年度版アニュアルレポート「統合報告書2019」は、公式ホームページから閲覧・ダウンロードすることができます。

(NTTドコモ「統合報告書2019」より表紙と目次)

・どのような企業で、どのような事業展開を行っているか

まず冒頭に、事業概要の説明があります。

(NTTドコモ「統合報告書2019」より)

これによると、NTTドコモの事業構成は大きく「通信事業」「スマートライフ事業」「その他の事業」の3つに分かれていることがわかります。同時に、主力の通信事業に関しては、国内マーケットシェアが1位(44.7%)であることや、競合他社と比べて解約率が低いことがグラフ付きで示されています。

このようにカラーや図版等をふんだんに使った表現が多用されるのがアニュアルレポートの特徴です。企業によってはセグメントが多岐にわたっていたり、祖業とはまったく違う分野の事業を手がけていたりする場合もあるため、まずは大まかな事業構造を把握する際に役立つでしょう。

また、NTTドコモのアニュアルレポートには「ドコモを取り巻くリスクと機会への対応」というページもあります。ここでは、「新規事業者の参入等による競争環境激化に伴うリスク」など企業固有の想定リスクと、そのリスクの低減に向けた対応策などが併せて記載されています。

株式投資にはあらゆるリスクが付き物ですが、少なくとも企業自身が考えているリスクを事前に知っておけば、ムダな損失を回避することにもつながるでしょう。

・売上高や利益、資産内容などの財務情報

財務情報は、企業の中身を数値で知ることのできる重要な情報です。

アニュアルレポートの財務情報は、必要項目をすべて載せなければならない決算短信などに比べて、ポイントを絞ったわかりやすい表記となっています。言い換えると、企業が投資家にアピールしたい数値にフォーカスされていることが多いため、それがどこかを探るのに適しているともいえます。

NTTドコモのアニュアルレポート(2018年度版)の場合、「財務レビュー」としてセグメント別の営業利益や株主に帰属する当期利益などがグラフで示されているほか、巻末の「データ編」では過去5年間の主要財務・非財務データを時系列で比較できるようになっています。

(NTTドコモ「統合報告書2019」より)

実は、前年度(2017年度版)のアニュアルレポートでは、財務や株式に関するデータを競合2社と比較するグラフも載っていたのですが、2018年度版ではなくなっていました。こうした点も、企業の姿勢を推し量るうえで参考になるのかもしれません。

・今後どのような経営戦略を持っているか

アニュアルレポートを見るうえで、企業の将来の戦略がわかる項目は抑えておきたいポイントです。決算短信や有価証券報告書などには載っていないダイレクトなメッセージで、経営の方向性をつかむことができることもあります。

NTTドコモのアニュアルレポート(2018年度版)では、「トップコミットメント」として代表取締役社長からのメッセージが3ページにわたって掲載されています。

また、「ドコモの価値創造アクション」という項目に全体として多くのページを割いており、前年度のアニュアルレポートと比べると、現状をデータで示すこと以上に、企業として目指す方針を明示することに力を入れていることが見て取れます。

(NTTドコモ「統合報告書2019」より)

・企業として伝えたいこと

企業を知るうえでは、財務情報だけでなく、非財務情報といわれる数値で表せない要素を知ることも大切になります。

NTTドコモのアニュアルレポート(2018年度版)では、CSR重点課題に向けた主な取り組みの実績に加えて、2020年度までのKPI(主要業績評価指標)が一覧で掲載されています。社員満足度や女性管理職の比率のほか、障がい者雇用率、CO2排出削減貢献量などが、SDGsとの関連とあわせて示されています。

(NTTドコモ「統合報告書2019」より)

この非財務情報は特に、企業によって何を掲載するかが異なるため、各社の特色が出やすい項目といえるでしょう。財務に関する数値は有価証券報告書などで詳しく知ることができるので、非財務情報を読み解くことがアニュアルレポートを読み解く肝といえるかもしれません。

比較する楽しみもある

アニュアルレポート(統合報告書)には、企業の過去・現在・未来を理解するために役に立つコンテンツが詰まっています。また、財務情報などの数字ではいまひとつイメージがつかめない、数字はちょっと苦手……という人にも、わかりやすいビジュアルで示してくれるため大いに役に立つでしょう。

ただし、決算短信や有価証券報告書などの法定書類と異なり書式や内容に関するルールがないため、企業によって内容は大きく異なります。しかし、だからこそ、企業の方針やIR活動に対する姿勢などが出やすく、そこに、数字だけではわからない企業の姿が垣間見えることもあります。

同業種の企業同士で見比べてみる、同じ企業でも過去のものと比較してみるなど、フォーマットの決まっていないアニュアルレポートならではの楽しみを見つけるのも面白いでしょう。年に一度の企業の労作を、ぜひ大いに活用してください。

2019/11/05
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[執筆者]佐々木 達也
佐々木 達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。

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