9月・10月の相場はどうなる? トレーダーも警戒する秋相場の傾向とは
《8月末になっても猛暑日が続く2020年の夏。ついには首相辞任というサプライズまで起きて、果たして株式市場は一体どのような反応を見せるのか……。9月と10月の秋相場について、トレーダーの目線から傾向を探ります》
危機で下げやすい9月相場
8月は「夏枯れ相場」といわれることがあります。海外投資家がバカンスで市場参加者が少なくなることや、日本でもお盆休みになると市場参加者が減るため、マーケットがあまり動かなくなるという意味です。
それに加えて7~9月期は過去に大きな危機がよく発生し、あまりパフォーマンスは好調とはいえません。具体的には、1997年7月のアジア通貨危機、1998年8月のロシア危機、2001年9月のアメリカ同時多発テロ、2007年8月のパリバショック、2008年9月のリーマンショックなどです。
このような危機が発生していたので、日経平均株価は8月から9月にかけて下げやすい傾向が生じたと考えられます。またダウ平均株価も8月から9月にかけて下げやすく、それが日経平均の値動きにも大きな影響をおよぼしているとも考えられます。外国人投資家の日本株の売買比率は60%を超えているからです。
米ウォール街の格言──「株は9月に買え」
アメリカの有名な格言に「Sell in May, and go away(5月に株を売って、市場には近づくな)」というものがあります(いわゆる「セルインメイ」)。これは5月頃に株式市場が高値をつけ、秋頃まで低迷が続くという現象がしばしば見られることから生まれたアノマリーでもあります。
そして、この格言には「Don’t come back until St. Leger day(セント・レジャー・デイまで戻ってくるな)」という続きがあります。セント・レジャー・デイとは、9月の第2土曜日のこと(その日に行われる競馬レースの名前にちなんでいる)。
つまり、5月に株を売り、9月に株を買えばいい、という話になります。これは7〜9月期に危機が起こりやすいことや、夏休みを挟むので投資家の買い意欲が低下しやすいなどが影響していると考えられます。
直近3年間は連続上放れ
このように、下げやすい傾向にあると思われている9月相場ですが、直近2017~2019年の3年間の日本市場は、8月までに値を固めて9月から上昇する展開になっています。過去5年間における日経平均株価の9月の騰落状況は以下の通りです。
年 | 始値 | 終値 | 騰落 |
2015年 | 18,763.72円 | 17,388.15円 | -1,375.57円 |
2016年 | 16,885.16円 | 16,449.84円 | -435.32円 |
2017年 | 19,733.57円 | 20,356.28円 | 622.71円 |
2018年 | 22,819.17円 | 24,120.04円 | 1,300.87円 |
2019年 | 20,625.75円 | 21,755.84円 | 1,130.09円 |
2020年8月の日経平均株価は、3月の安値(16,358円)から7,000円近く上昇していますが、4年連続の上放れになるかどうかに注目です。
10月相場は堅調か? 大暴落か?
これに対して、10月の日経平均株価の騰落状況(過去5年間)は、以下のようになっています。
年 | 始値 | 終値 | 騰落 |
2015年 | 17,479.97円 | 19,083.10円 | 1,603.13円 |
2016年 | 16,566.03円 | 17,425.02円 | 858.99円 |
2017年 | 20,400.51円 | 22,011.61円 | 1,611.10円 |
2018年 | 24,173.37円 | 21,920.46円 | -2,252.91円 |
2019年 | 21,831.44円 | 22,927.04円 | 1,095.60円 |
7〜9月期の決算が発表されるので、とくに10月中旬以降のアメリカ株は上昇しやすくなります。また日本株も10月後半から始まる中間決算発表が注目されます。過去5年間に1,000円以上も上昇している年が3年あり、堅調な展開になっているのです。
ただし、2018年には2252.91円の急落となっています。実は10月は、1929年の「暗黒の木曜日」、1987年の「ブラックマンデー」といった歴史的な大暴落があった月です。
1929年の暴落は、その後の世界恐慌の始まりとなりました。また、ブラックマンデーはダウ平均が22.6%も下落。日経平均株価も1日で14.90%下落し、下落幅・下落率ともに日経平均株価のワースト記録となっています。
「ハロウィン効果」は日本株にも当てはまるのか?
このように大暴落を記録している10月相場ですが、毎年10月31日のハロウィンを境に株価が上昇するという「ハロウィン効果」というアノマリーがアメリカにはあります。はたして、日本の株式市場には当てはまるのでしょうか。過去5年間の10月末と翌年5月末の日経平均株価を比べてみました。
年 | 10月終値 | 翌年5月終値 | 騰落 |
2015年 | 19,083.10円 | 17234.98円 | -1,848.12円 |
2016年 | 17,425.02円 | 19650.57円 | 2,225.55円 |
2017年 | 22,011.61円 | 22201.82円 | 190.21円 |
2018年 | 21,920.46円 | 20601.19円 | -1,319.27円 |
2019年 | 22,927.04円 | 21877.89円 | -1,049.15円 |
2016年は2,000円以上の上昇となっていますが、その他の年は冴えません。過去5年間の平均も-360.16円で、直近の日経平均株価を見るかぎりは、日本では「ハロウィン効果」はあまり期待できないようです。
相場展開よりも大切なこと
過去、7月から9月にかけて暴落がしばしば起こったことや、10月には「暗黒の木曜日」「ブラックマンデー」といった大暴落が起こったことから、9月・10月の相場には「急落」というイメージがつきまといます。
しかしながら、過去5年間の9月・10月の日経平均株価を振り返ってみれば、「しっかり」の展開が多いことがわかります。2020年の夏相場は堅調でしたが、秋相場も好調な環境が続くのか注目です。
ただし、くれぐれも一方向だけに賭けることのないように、相場がどう動いても対処できる用意をしておくことが肝要です。