【今年の3本】プロが解説! 出来高と売買代金が教えてくれる「数値から測れないもの」とは

網代奈都子
2019年12月26日 8時00分

もうすぐ2019年の株式市場も幕を下ろします。そこで「今年の3本」と題して、一年を通じて特に多くの読者に読まれた3つの記事を再掲載します。1本目は、とあるトレーダーにシェアされたことで、ツイッターで広くリツイートされた記事。出来高と売買代金でわかる、プロの銘柄選びとは──

おさらい〜出来高と売買代金〜

株をやる上で(株価をのぞけば)最も身近なデータとも言える「出来高」と「売買代金」。あなたは、これらをどんなふうに活用していますか? 一応チェックはしているけど、特にそれで何かを判断したことはない……という人も多いのではないでしょうか。

まずは簡単におさらいを。「出来高」とは、一定の期間内に成立した売買の数を表します。たとえば、ある日の出来高が「10万株」であれば、その日一日で取引された株の総数が10万株、ということです。ちなみに、東証1部全体で言うと、大体一日2~4兆円の間で推移しています。

一方の「売買代金」は、一定の期間内に成立した売買の金額のことで、株価×出来高で算出します。

どちらも、株価ニュースで必ず登場しますし、ヤフーファイナンスなどの情報サイトではランキング表示もされています。つまり、誰もが平等に見ることができるデータです。

では、プロのトレーダーは、これらのデータをどのように活用しているのでしょうか。専業トレーダーとして長年活躍し、安定して勝ち続けているトレーダーのHさんに聞いてみました!

プロの銘柄選びの極意

出来高は銘柄選びの入り口になるのか?

実は、僕たちが注目しているのは出来高よりも売買代金です。なぜなら、売買代金を見れば「市場の中で、どの銘柄にお金が集まっているか」がわかるからです。

売買代金を見て、いいなと思った銘柄があったら、そこで初めて出来高の推移や変化を見ます。売買代金を見たうえで、かつ、変化と推移を見ないと出来高を見る意味はないんです。

それに対して出来高を見る場合は、変化をとらえることが大切です。わかりやすく小さい数字で説明すると、ずっと出来高が100株だった銘柄がある日突然1000株の出来高になっていたら「あれっ?」と思いますよね。

その際、出来高だけでなく株価の推移も見ます。出来高の平均が100株で、それが10倍の1000株まで上がったのに株価が変わらないまま……ということはほとんどあり得ません。もしも株価が動いていなかったら、それは怪しいから触らないほうがいいな、と判断できるわけです。

反対に、出来高が平均100株だったものが1000株に急増して、翌日以降も700~800株と高いところで安定し、株価も出来高と同じように動いて高値の状態で落ち着いていたら、今度は、その出来高が3000株ぐらいに上がるタイミングが来て、株価も上がっていくことが考えられます。

出来高が5倍になった時に考えるべきこと

また、普段は東証1部の売買代金上位50位以内にかすりもしないような銘柄がいきなり出てきたときはチェックします。上位50位に入るのは日本を代表する大企業ですから。そこに、まったく知らない会社が入ってきたとなると、何らかの理由で資金が集まっているのだろう、と。

つまり、「出来高が○○株を超えた」とか「売買代金が○○円を超えた」ではなく、「それまでの出来高や売買代金から5倍(10倍)になった!」という場合に注目するんです。

それまで出来高も売買代金もさほどの規模ではなかった銘柄が、急に出来高も売買代金も伸びて、かつ、それが単発ではなく継続しているのであれば、資金が入り続けている銘柄だとわかります。株価チャートというのは、多少は思惑のある人によって作れてしまいますが、出来高は絶対隠せないんです。

だからと言って、株価のように「年初来」や「上場以来最高出来高」などを気にするかというと、そうではありません。それよりも、前回株価が1000円だったときの出来高が100株で、今回株価が900円を超えてきたときの出来高が100株、もしくは200〜300株まで行っていれば、株価が1000円を超えていくんじゃないのか?と見ます。

これは逆の場合もあって、出来高が増えているにも関わらず、株価が前回と同じ値幅で推移してるなら、「その分だけ売っている人もいる」っていうことですよね。

トレーダーにとって数値よりも大切なものとは?

出来高にしろ売買代金にしろ、よく「出来高は100万株あればいい」とか「売買代金は10億円あればいい」とかっていう話があるんですが、そういうものじゃないんです。

出来高も売買代金も、相対的なものです。たとえば、東証全体の売買代金が1兆円を切っているときに、個別銘柄なら10億円あれば上等と言えますが、全体で4兆のときに10億なら全然足りないっていうことです。

そんなふうに「売買代金いくらなら売買していい」と具体的な金額で縛ってしまうと、市場に大量の資金が入っているときは何でも買えることになるし、反対に、資金が少ないときは何も買えないことになってしまいます。

もしも「出来高が10億株以上なら売買してよい」としてしまうと、銀行系や任天堂は普段からそのレベルですから、結局いつ買ってもいいことになる。でも実際には、銘柄や状況によって変わるわけですから、はっきり「いくら」なんて言えないんです。

これは、イケメンとか美人の定義をしているときに「鼻の高さが何センチあればいいのでしょうか?」と聞くようなものです。そんなのは言い切れるわけがなく、全体のバランス、顔全体を見て判断するしかありませんよね。鼻が2センチあれば誰もがイケメンや美人かと言えば、そんなことはないはずです。

でも、「なんとか見極めるために鼻の高さを数値化して!」という声が強いから、「じゃあ、2センチってことで」と決めた途端、その「2センチ」という数値だけが独り歩きしてしまうんです。

出来高や売買代金だけでなく、どんなデータや情報であっても、それ「だけ」で判断してはいけないんです。やはり全体を見て、変化や推移も見て、トータルで判断する癖をつけることが、勝てるトレーダーへの第一歩になると思いますよ。

勝ち続けるプロの思考

Hさんの話を聞いて、まず、株価ばかり見ていて出来高にも売買代金にも無頓着だった自分を激しく反省しました。

そして、プロは「売買代金が多い=多くの人が取引している」銘柄に手を出しているのであって、「知る人ぞ知る銘柄を、誰も気づかないタイミングで」売買しているわけではないことを、あらためて痛感。これを心に刻み、今日もトレードに勤しみたいと思います。

※本記事は再掲載です

[執筆者]網代奈都子
網代奈都子
[あじろ・なつこ]30代OL。仕事のかたわらトレードを行っており、そのスキルを磨くべく日々勉強中。目下の目標は年間の利益100万円。安定した利益を出し、ペット可物件に引っ越すのが夢。
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