低迷続く中国株から、世界の資金は日本株へ 新たなライバルはインド株? 

山下耕太郎
2024年2月28日 12時00分

中国の株式市場が下落しています。その一方で、日本とインドの株式市場は活況を呈しています。中国株の現状とその影響、そして、日本とインドが新たな投資の舞台として台頭している背景を解説します。

中国株市場の基礎知識

中国の株式市場は、上海・深圳の本土市場と、香港市場に分けられます。そして、中国の代表的な株価指数は、以下の3つです。

  • 上海総合指数
  • CSI300指数
  • 香港ハンセン指数

それぞれの指数について解説します。

・上海総合指数

上海総合指数は中国の主要な株価指数で、上海証券取引所に上場されている全銘柄が対象となります。この指数は時価総額を加重平均して算出され、中国の株式市場の動向を反映しています。

・CSI300指数

CSI300指数は、上海証券取引所と深圳証券取引所に上場しているA株・300銘柄のパフォーマンスを再現するように設計された時価総額加重型の株価指数です。A株とは、中国本土の上海証券取引所と深圳証券取引所に上場している人民元建ての株式のことです。

このA株は、基本的に中国の国内投資家専用の市場となっていますが、一部の銘柄については、滬港通(上海・香港ストックコネクト)や深港通(深圳・香港ストックコネクト)という制度により、海外の個人投資家も取引できるようになっています。

CSI300指数は中国大陸のブルーチップ銘柄の株価指数とされていて、2004年12月31日を基準日とし、その日の指数値を1000として算出されています。

・香港ハンセン指数

香港ハンセン指数は香港の株式市場の主要な指数で、香港証券取引所に上場されている銘柄を対象としています。同指数は時価総額を加重平均して算出され、香港の株式市場の動向を反映しているので、世界中の投資家が注目しています。

低迷が続く中国株

2023年の中国株は「ゼロコロナ政策」の終了による期待から始まりましたが、年中盤に不動産不況が再燃し、株価は下落しました。この低迷が、2024年に入っても続いています。

上海総合指数は一時的に約3年9か月ぶりに2800ポイントを割り込みました。CSI指数は今年1月に6.3%下落し、過去最悪の6か月連続マイナスとなっています。香港のハンセン指数も同様に低迷しており、4年連続で年間の騰落率がマイナスとなるなど、累計では約4割も下落しています。

中国の個人投資家は中国株を見限り、日経平均株価に連動型するETFなどへと投資対象を移行させています。

いま、中国経済は「3D危機」に直面していると言われています。それは、巨額の債務(Debt)、人口減少といったデモグラフィー(Demography=人口統計学)、そして、需要不足によるデフレ(Deflation)です。さらには米中対立の激化により、海外マネーの中国離れが続いているのです。

こうした背景から流出した資金が日本市場に流れ込んでいることも、日本市場が活況を呈している要因のひとつになっています。中国株が本格的に回復し、マネーが逆流するシナリオは現状では描きにくく、しばらくは日本優位の状況が続きそうです。

中国株低迷の原因

中国株市場の不安定な相場動向は、リスクの蓄積と投資家の信頼の崩壊を示しているといえます。弱い経済見通し、レバレッジ投資家による株式売却や信用取引のマージンコール、そして「スノーボール」による売り要因が、トレーダーを不安に陥れているのです。

さらに、11月のアメリカ大統領選を控え、地政学的リスクも再燃しています。

株安の一因「スノーボール」

中国の株価下落の一因とされているものに「スノーボール(雪玉)」があります。「スノーボール」とは中国の上中位銘柄で構成されるCSI500指数やCSI1000指数を対象にした仕組み債で、プットオプション(売る権利)が組み込まれています。

指数が一定の範囲内で推移すれば安定したクーポンを得られますが、範囲を超えたり下回ったりすると投資家は損失を被ります。とくに、範囲を下回った場合(ノックイン)、ブローカーは指数先物を売却するため、これが市場での売りにつながり、大幅な株価下落を引き起こします。

空売り規制はどう影響する?

中国証券監督管理委員会は、株式市場の低迷に対応するため、未保有の株式を借りて売却する「空売り」を制限し、譲渡制限株式の貸し出しを全面禁止する、と発表しました。これにより、投資家は空売りに必要な株式を調達しづらくなります。

譲渡制限がない一般の株式の空売りは可能ですが、市場に出回る貸株の量は減るため、空売りを抑制する効果があります。

しかし、この制限は市場の流動性を低下させ、株式市場の値動きが荒くなる可能性もあります。また、中国は銀行の収益への影響を考慮して政策金利の引き下げを見送っており、今回の空売り制限がどこまで相場を下支えできるかは不透明です。

躍進を続けるインド株

日本では2024年1月から新NISAが始まりましたが、新興国株で人気があるのがインド株の投資信託です。これまで人気だった中国株の低迷が続き、中国に変わる高成長が期待できる国としてインドに資金を振り向ける動きが加速しているのです。

アメリカ株やグローバル株の人気も継続しているものの、インド株はそれに次ぐ存在になろうとしています。

インドの株式市場は、2024年1月に時価総額で香港を抜き、世界4位に躍進しました。インド株市場の活況は、個人投資家の急増と企業の好業績に支えられています。

インドは世界で最も人口が多い国であり、中国に代わる選択肢として位置づけられていることに加え、政治の安定と急速な消費主導型経済の成長により、世界の投資家や企業から新たな資金を集めています。しばらくは〝ネクストチャイナ〟としてインド株への資金流入が続きそうです。

インドか、日本か

1月17日、上海証券取引所に上場する日経平均連動型ETFの売買が一時停止になりました。中国人投資家による日本株ブームで、ETF価格が基準価格を大幅に上回ったためです。その一方で、上海総合指数は2020年6月以来の安値を記録しています。

いま中国では「中国株を売って、日本株を買う」という傾向が明確になっており、これには「インフレ時代に入った日本経済 vs デフレ時代に入った中国経済」という背景も影響しています。この流れは、中国人投資家だけでなく、これまで中国に投資してきた海外投資家にもみられます。

中国株から日本株やインド株に資金を移動させる動きは、しばらく続く可能性が高いでしょう。〝ネクストチャイナ〟としてより多くの資金を取り込むことに成功するのは、インドか、それとも日本か。今後の行方に大いに注目です。

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[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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