いま中小型株がアツい? その背景と買われている銘柄の傾向
大型株が調整相場入りした7月以降、一部の中小型株の健闘が目立っています。いま中小型株が買われている背景について探ります。
大型株の調整から物色は中小型株へ?
2023年の上半期は、円安の進行とともにナスダック総合株価指数、日経平均株価の上昇が続きました。アメリカの金利の高止まりで、低金利の円を売ってドルを買う「円キャリートレード」も動きに拍車をかけました。
日本市場では、円安の恩恵を受けやすい大型の輸出関連株など外需株に資金が流入する一方、円安がコスト増加につながる内需株は物色の蚊帳の外となっていました。
しかし7月以降、にわかにアメリカの利下げ観測が浮上。さらに、7月末には日銀が追加の利上げを決定。日本の長期金利が上昇する中で、8月5日、日経平均株価は4000円を超える大幅下落となり、大型株を中心とした調整局面入りとなりました。
その反面、月末にかけての自民党総裁選を巡る期待では、各候補者の提唱する政策に関連した中小型株が物色される場面がありました。
アメリカの利下げは成長株を下支え?
アメリカの利下げによる金利の低下は、中小型株の中でも成長株(グロース株)の下支え要因になると見られています。
成長株は、業績が好調で売上高や純利益が伸びている企業が多く、新しい技術を持つハイテク企業やITの最先端企業、新しい産業・サービスを提供する企業などがこれに該当します。
成長株のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)は通常、市場平均より高くなりがちです。そして、PERの逆数である益利回りは、成長株では低いことが多いです。
金利が高いときは高金利の債券などに資金が流れる傾向にありますが、金利が下がってくると相対的に成長株の投資の魅力が増すため、値上がりしやすくなると言われているのです。
いま買われている中小型株の傾向
8月の急落以降、株価が上昇している銘柄の傾向を見てみましょう。日経平均株価は8月5日の終値31,458円から、10月15日の終値39,910円まで2割ほど上昇しました。
この間に買われた銘柄のひとつとして、宇宙関連銘柄があげられます。
宇宙ごみ(スペースデブリ)の除去サービスなどを提供するアストロスケールホールディングス<186A>は、同じ期間中に約2.6倍程度まで値上がりしました。イギリスの子会社が英宇宙庁からスペースデブリ除去ミッションのプロジェクト継続で契約したと発表したことも、買い材料視されました。
月面着陸や開発などの事業化を目指す民間宇宙企業のispace<9348>も、この期間に約8割上昇しました。民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2の打ち上げをこれまでは2024年冬頃としていましたが、最速2024年12月に予定していると発表したことが好感されました。
経済産業省の「宇宙基本計画」では「2020年に4.0兆円となっている市場規模を、2030年代の早期に2倍の8.0兆円に拡大していくことを目標とする」とされており、官民による宇宙開発への勢いは引き続き加速すると期待されています。
好業績銘柄な中小型株にも資金が流入
そのほか、好業績銘柄にもまんべんなく資金が流入しています。アミューズメント施設「GiGO」やカラオケ「BanBan」を運営するGENDA<9166>は期間中に株価が約9割が上昇し、10月3日には上場来高値を更新しました。
GENDAは2023年7月に東証グロース市場に新規上場(IPO)した新興アミューズメント企業です。M&A(合併・買収)や新規出店による事業拡大が投資家の関心を引き、株価は上昇トレンドが続いています。
クラウド型の小型POSレジ「スマレジ」を展開するスマレジ<4431>の期間上昇率は7割を超えました。
基本的な機能は無料で使える手軽さが受け、セレクトショップ、飲食チェーンなどの小~中規模の店舗で新規導入が広がっています。2024年5~7月期は売上高が前年同期比39%増、営業利益が46%増と、大幅な増収増益となり、ともに過去最高でした。
中小型株の今後を左右するTOPIX改革
東証は、主要指数である東証株価指数(TOPIX)の改革を進めています。今年6月には改革第2弾の草案を公表しました。実はこの改革が、中小型株にプラスとマイナスの両側面をもたらす可能性があります。
プラス面は、TOPIXへの組み入れです。これまでTOPIXへの組み入れは東証プライムに上場している銘柄が大半を占めていましたが、今後はスタンダード市場やグロース市場の銘柄も定期的な入れ替えの対象となる予定です。
スタンダード市場やグロース市場の時価総額上位銘柄は、これまではTOPIXの対象外でしたが、将来的には指数採用に伴う資金流入が期待されます。
マイナス面としては、毎年10月末の定期入れ替え基準を大幅に変更する計画であることです。草案によると、8月末時点で浮動株時価総額の96%以内に収まる企業を選定し、下位4%の企業は除外されることになります(年間の売買代金の基準もあります)。
つまり、これまで時価総額が100億円を超えていればTOPIXに残ることができた銘柄でも、今後は下位に位置すると常に入れ替え競争のプレッシャーを受けることになります。現在プライム市場で時価総額低位の銘柄は、今後TOPIXからの除外リスクが意識されることになりそうです。
中小型株にアメリカからも熱視線?
日本の中小型株を巡る環境について見てきましたが、アメリカの主要な中小型株で構成されるラッセル2000指数も、アメリカの利下げなどを受けて年初来高値圏で推移しています。
日本の中小型株についても、日本の個人投資家だけでなく、海外投資家からも関心が寄せられ始めている向きもあるため、今後も引き続き注目していきたいところです。