JINSは4年で154倍! 爆騰する中小型株に出会えるお宝発掘法

岡田禎子
2018年4月20日 8時00分

株に馴染みのない人や株初心者にとっては、株と言えば「トヨタ」や「任天堂」といった大型株が思い浮かぶかもしれませんが、いま、日本には4,000近くもの銘柄があります。そのなかで、個人投資家にとって「宝の山」になりうる魅力を秘めているのが、中小型株です。

中小型株は、企業としては決して有名ではないかもしれませんが、企業規模が小さいからこそ将来への成長余地も大きく、そこにチャンスも眠っているのです。今回は、その〝発掘法〟をご紹介します。

【参考記事】トヨタやイオンはもう卒業? 中小型株という「宝の山」の魅力を解説

中小型株のおさらい

まず、中小型株の定義についておさらいしておきましょう。「中型」や「小型」という呼び方は、文字どおり企業の規模を表しています。そして、株式市場において企業の規模は、「発行済み株数×株価」で計算されます。これを「時価総額」と言います。

この時価総額が2,000億円以上の銘柄を「大型株」、1,000〜2,000億円の銘柄を「中型株」、1,000億円未満の銘柄を「小型株」と呼ぶのです(5,000億円以上を大型株とする場合もありますが、本記事では2,000億円以上とします)。

このうち大型株は、わずか500社程度。残り3000以上の「中小型株」が、お宝の発掘現場となります。

・JINSの場合

身近な中小型株の例を、ひとつご紹介しましょう。

JINS(ジンズ)<3046>は均一料金のアイウェア(メガネ、サングラスなど)を扱う「JINSブランド」を展開する製造小売会社です。2001年にアイウェアに進出し、2006年に大証ヘラクレス(現・JASDAQ)に上場しました(現在は東証1部)。

しかし、競合他社との競争が激しくなり、2008年8月期には赤字に転落、2009年2月には株価が39円にまで下落します。

新たな戦略を模索した末、同社は、ユニクロのビジネスモデルを参考にSPA(製造小売)方式を導入して、「NEWオールインワンプライス」(メガネ価格:4,990円、5,990円、7,990円、9,990円の4プライス)を実現します。

新しい市場を開拓したことで業績は急回復し、2013年5月には、株価は6,020円を付けました。約4年で約154倍という驚異的な上昇を見せたのです。まさに「お宝銘柄」と呼べる成長ぶりです。

お宝発掘のポイント

ここからは、中小型株投資で「お宝」を発掘するためのアイデアを、いくつかご紹介します。

成長株(グロース株)に投資する

株価というものは、短期的には思惑や需給で変動しますが、長期的には業績に連動します。そこで、その銘柄に利益成長性があるかどうかを判断して投資します。

たとえば新製品や新事業で大きな改革が期待できる企業であること、独自の成長ドライバーを持ち、長期的な成長ストーリーがあること、また、直近の収益の成長率が2ケタ以上で伸びており、そのスピードが加速していること……などが見極めるポイントとなるでしょう。

先ほど紹介したJINSは、メガネ業界にSPA方式を持ち込むことで、市場にイノベーションを起こしました。その後も、PC用アイウェアなどの新機能性商品を次々に投入し、業績を拡大しています。

同社の業績推移を見ると、株価が〝爆騰〟した2011年から2013年にかけては、利益は2ケタ以上の伸びを示し、1株あたり純利益(EPS)の成長率も加速していることがわかります。

【参考記事】未来のアップル株を探そう! 成長株を見分ける5つのポイント

IPO銘柄に投資する

IPO(新規株式公開)市場は、将来性のある企業の宝庫です。上場後まもなくは時価総額も小さく、成長性の高い事業を持つ企業が多くあります。

ただし、IPOを購入できるかどうかは抽選で決まるうえ、人気もあるため、当選することは稀です。上場後に買うにしても、IPO銘柄は初値が高くなりやすい傾向があります。値動きが落ち着き、適正な株価水準になった銘柄を対象として、あらためて投資判断をするのが賢明でしょう。

【参考記事】まさかの公募割れ!を回避する 「損しないIPO銘柄」の見極め方

バリュー株(割安株)に投資する

中小型株には、割安のまま放置されている銘柄が数多く存在します。

割安株」の定義はいろいろとありますが、最も基本的なものは「PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低い」というものです。具体的には、PERであれば15倍以下、PBRであれば1倍割れ「割安」とされます。

  • PER=株価÷1株あたりの当期純利益(EPS)
  • PBR=株価÷1株あたり純資産(BPS)

また、業績よりも資産に着目して、ネットキャッシュ(手元流動性−有利子負債)が時価総額を上回っているなど、資産面で優良なバリュー株に投資する手法もあります。こうした銘柄の場合、何か好材料があれば株価が上昇する可能性があります。

いずれにせよ、いくら数値が「割安」の範囲であっても、将来性のない企業であれば、株価の上昇は見込めません。これらの指標は、あくまで判断材料のひとつにすぎないということを、お忘れなく。

【参考記事】PER・PBRの裏に隠された真実…… ROEとの密かな三角関係とは?

冒険にはリスクが付き物

株式投資にはリスクが付き物ですが、お宝銘柄となれば、当然それも小さくありません。

中小型株投資の注意点としては、ひとつには、市場参加者が少ないために流動性が低い点が挙げられます。買いたいときに買えなかったり、売りたい値段で売れなかったりする、ということです。いくら値上がりしても売れなければ、利益を確定することができません。

また、いったん株価が動き出すと値幅が大きくなることも、注意しておくべき点です。大きく儲けることができる反面、値崩れして大きな損失を抱える可能性もあるからです。その際、流動性が低いことで、さらに損失が大きくなる危険性もあります(売りたくても買ってくれる人がいない)。

大型には大型の魅力がある

株初心者が大型株を好むのは、やはり安心感があるからでしょう。いつでも売買でき(流動性が高い)、いきなり倒産するような事態も少ないからです(ゼロではありませんが)。

それに比べると、中小型株は企業規模が小さいため、業績が悪化して倒産するリスクは大きくなります。メディアを通じて数多くの情報が飛び交う大型株と違って、中小型株の情報は少ない点も念頭に置いておくべきでしょう。

しかしながら、この流動性の低さや大きな値幅こそが中小型株投資の魅力、とも言えます。リスクを覚悟でお宝探しに乗り出すか、大型株がもつ安心感を頼りにするか、どちらの道を選ぶかは投資家次第。自分に合ったスタイルを見極めることが、何よりも大切です。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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