その投資信託は大丈夫? ハズレを引かないためのファンドレポートの読み解き方
ファンドレポート、見ていますか?
株初心者や運用に時間を割けない人などにとって、運用を任せられる投資信託は有力な選択肢と言えます。ただ、いくら「お任せできる」とはいえ、運用の状況や成績など、ある程度の情報はきちんと押さえておきたいもの。
そこで活用したいのが、運用状況の把握に欠かせないファンドレポートです。ファンドレポートを読みこなすことができれば、運用状況を正しく理解・評価できるようになり、資産運用の精度を高めることにもつながります。
ファンドレポートを読みこなす
ファンドレポートには主に2種類、個別の投資信託の運用状況が記されている「月次レポート」(運用会社によって呼び方が異なります)と、マーケットの状況やイベント(出来事)に対するファンドマネージャーの見通しを示す「マーケットレポート」があります。
月次レポートで運用状況を把握する
個別の投資信託の、最新の運用状況を知ることができる月次レポート。月次ではなく週次レポートが発行される場合や、相場コメントをはじめ詳細な情報が簡略化されている場合もあるなど、商品によって発行頻度や記載内容は異なります。
早速、実際の月次レポートを使って読み解き方を説明しましょう。
サンプルとして用意したのは、朝日ライフ アセットマネジメントが運用する「朝日Nvest グローバル バリュー株オープン」の月次レポート。世界の株式で運用するオープン型の株式ファンドで、2017年のモーニングスターアワード「ファンド オブ ザ イヤー 2017」国際株式型部⾨で優秀賞を受賞しています。
(朝日ライフ アセットマネジメントのホームページより。丸数字と薄黄色のアミは編集部で入れたもの)
・純資産総額
ファンドレポートの形式は運用会社によって異なりますが、掲載されている情報はほぼ同じです。冒頭には、主にファンドの成績を示すファンドの概況や期間別騰落率、分配金の推移などが記載されています。
このうちチェックしたい項目は純資産総額(①)です。ファンドの組み入れの株式や債券などの時価を合計したもので、組み入れた株式や債券などの値上がり、また、新たに投資信託を購入する人が増えたり、資金が流入したりすることなどによって増えていきます。
反対に、株式や債券などの値下がりや解約による資金の流出は、純資産総額が減る要因となります。
販売会社の規模にもよるので、単純に純資産が多ければ良い・少なければ良くないとは言えませんが、順調に純資産総額が増えている場合には、運用が好調で、投資信託の新たな購入者も増える好循環が生まれている可能性が高い、と読み解くことができます。
翻って、純資産総額の減少が続いているファンドは運用成績が芳しくなく、投資家の解約が続く悪循環に陥っているとも推測できます。極端に純資産総額の少ないファンドは運営費用が賄えず、繰り上げ償還による運用終了のリスクがある点も留意しておく必要があります。
・期間別の騰落率
次にチェックしたいのは期間別の騰落率(②)です。基準価額の騰落率のほか、一般に、ファンド運用の巧拙の参考となるベンチマークや、参考指数などの騰落率が併記されています。また、基準価額の推移はチャートで掲載されていることが多く、長期的な値動きがひと目でわかります(③)。
同ファンドは、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルが算出するAll Country World Index ex Japan(ドルベース)を参考指数にしています。これは、日本を除いた世界の新興国と先進国の株式市場の株式を指数化したもので、世界の多くの投資家のベンチマークとして採用されています。
騰落率を見てみると、2020年5月末時点ではコロナショックの影響もあり、3か月前比〜3年前比はいずれもマイナスになっており、また、参考指数の数値も下回っています。
これだけを見ると見劣りしてしまいますが、注目すべきは、設定された2000年3月からのおよそ20年間の騰落率でしょう。参考指数が+53.5%であるのに対して、同ファンドは348.9%と大きく上昇しています。20年という長期間ではありますが、投資家にとって満足のいく運用成績と言えるでしょう。
もちろん、投資信託は確定利回りの運用商品ではありませんので、今後の運用がうまくいく保証はありません。しかし、過去の成績を参考にするならば、このようなファンドを長期で定額積み立てるといった投資戦略が選択肢に入ってくるでしょう。
・構成比、組み入れ銘柄
月次レポートには、投資信託の中身について把握するためのデータも掲載されています(④)。地域別の構成比を見てみると、北米が57.5%、欧州が35.2%と、全体の9割以上を占めています。通貨の場合も同様に、米ドル・英ポンド・欧州ユーロ・スイスフランの比率が高くなっています。
これらのデータから、同ファンドは欧米の先進国に軸足を置いた投資戦略を取っており、グローバルとは言いながらも、新興国のウェイトは低いことが読み取れます。
業種別の構成比については、メディア・娯楽、銀行、自動車・自動車部品、ソフトウェア・サービスなどの業種が上位となっているようです。製造業や金融の大企業はPERなどの投資指標が割安になるケースが多いことを踏まえると、バリュー株ファンドならではの業種のポートフォリオ構成と言えるでしょう。
さらに、実際の組み入れ銘柄の比率と概要を確認することもできます(⑤)。マスターカード<MA>やグーグルの持株会社であるアルファベット<GOOGL>を筆頭に、先進国の優良銘柄がズラリ。
これらの情報の活用方法としては、例えば投資方針との擦り合わせが考えられます。「今後は世界の人口増加に合わせて世界の消費市場が伸びるだろう」と考えた場合、組み入れ銘柄のほとんどが自動車やハイテクといった投資信託などは、投資対象としては見直しが必要かもしれません。
ファンドマネージャーに運用を任せられるのが投資信託のメリットですが、ある程度の運用方針や方向性はきちんと確認しておきたいところです。
マーケットレポートで市況を知る
投資信託の運用会社は個別の投資信託のレポートのほかにも、市況全体の見通しがわかるマーケットレポートを掲載しています。
以下は、三井住友DSアセットマネジメントのマーケットレポートが見られるページです。デイリーやウィークリー、マンスリーの株式や債券などの市場情報のほか、コロナショックやアメリカ大統領選など、タイムリーなイベントを含むレポートが掲載されていることがわかります。
投資信託を選ぶ際は、運用会社の情報提供の量やタイミング、わかりやすさをポイントとするのもひとつの手です。ただし、運用会社という性質上、市況に対しては強気になる傾向があることも十分に理解して、その内容を参考にしたほうがいいでしょう。
運用状況を効率的に把握する
たくさんの数字や情報が記載されたファンドレポートは、一見するととっつきにくく感じられるかもしれません。しかし、チェックするべきポイントは限られていますし、銀行や証券会社の担当者を通じて購入した場合は、疑問点や不安点を遠慮なく聞いてみるといいのではないでしょうか。
投資信託の運用状況を効率的に把握するうえで、ファンドレポートは欠かせない資料です。まずは現在投資している、あるいは、これから投資しようとしている投資信託のファンドレポートを一読してみてはいかがでしょうか。