2025年に注目すべき5つの地政学的リスクと、個人投資家の対応策

山下耕太郎
2024年12月13日 13時30分

国際情勢が経済や株式市場に与える影響は大きく、地政学的リスク(地政学リスク)が投資戦略を左右する場面も少なくありません。

そもそも地政学的リスクとはどんなリスクのことを言うのか? 個人投資家は何に気をつければいいのか? 地政学的リスクの概要と、2025年に特に注目される5つの主要リスク、そして、投資家としての対策のヒントをお届けします。

地政学的リスクとは?

地政学的リスク地政学リスク)とは、国家間の政治的・経済的な関係や紛争が、金融市場(マーケット)や経済に与える影響を指します。具体的には、戦争やテロ、外交問題、資源の争奪などが、地政学的リスクの主な要因です。

これらによって特定の地域での経済活動が不安定になり、関連市場が動揺することがあります。たとえば、中東地域での緊張が高まると原油価格が急騰する可能性があり、投資家心理に不安をもたらします。

また、米中の対立やロシアの動向も、資産価格の変動要因となることが少なくありません。特に、資源供給の不安定さがエネルギー価格に影響を与え、経済全体に波及することも考えられます。

これら地政学的リスクは、企業活動にも直接的な影響を及ぼす可能性があります。サプライチェーンの寸断や輸出入の制限といった問題が発生し、企業の収益性に悪影響を与えることがあるからです。

そのため企業経営者や投資家は、リスクを予測し、柔軟に対応する体制を整えておく必要があります。地政学的リスクに直面する投資家は、安全資産としての金(ゴールド)や米ドル、日本円、スイスフランなどに注目する傾向があります。

まずは市場の動きに敏感であることが、リスク軽減のための重要なポイントです。状況によってはこれらの資産が避難先となり、資金が集中することで価格が急騰することがあります。

2025年に注目すべき地政学的リスク5選

来たる2025年も、国際情勢は混乱が続く見通しです。特に注目すべき5つのリスクを見てみましょう。

1.米中関係の激化

トランプ氏の大統領再選により、米中間の経済分断(デカップリング)が進行し、サプライチェーンの再構築が必要となる可能性があります。

アメリカは同盟国と連携し、技術面や経済面で中国からの依存を減らす方向で動いています。一方、中国は自立的な産業構造を確立し、他国への依存度を下げる取り組みを進めています。

このような対立の激化は、特に半導体やレアメタルの供給に影響を与え、日本企業にも大きなリスクをもたらす可能性があります。

デカップリングの進展により企業間の取引関係が見直される中で、どのようにサプライチェーンを再構築するか、それが日本企業の課題となります。代替供給源の確保や新たな貿易ルートの構築など、柔軟な対応が求められるでしょう。

2.中東情勢とエネルギー価格

中東では、イランやイスラエルをはじめ湾岸諸国間の緊張が高まっています。

この地域の不安定化は世界の石油供給に直接的な影響を与える可能性があり、エネルギー価格の高騰を招く要因となります。日本はエネルギーの多くを中東から輸入しているため、エネルギー安全保障の観点からも中東情勢を注視する必要があります。

さらに、中東の不安定化は石油だけでなく、天然ガスの供給にも影響を与えます。

特にヨーロッパ諸国はロシアに代わる供給源として中東に期待を寄せているため、この地域の安定は世界全体にとっても重要です。エネルギー価格の変動は産業全体に影響を及ぼし、日本企業のコスト増加や消費者物価の上昇にもつながる可能性があります。

3.ロシア・ウクライナの対立

ロシアとウクライナの紛争は2025年も継続する見通しです。特にロシアに対する経済制裁は、ヨーロッパ全体のエネルギー供給に影響を与え続けています。天然ガスの供給不安が広がる中で、エネルギーの安定供給が難しくなることが懸念されます。

日本にとっても、このエネルギー市場の不安定さは無視できない問題です。

ロシアからのエネルギー輸入の制約が続く中で、日本企業は他の供給元を確保し、エネルギーの多様化を図る必要があります。また、エネルギー価格の高騰は製造コストの増加につながり、国内企業の競争力にも影響を与える可能性があります。

4.台湾情勢の緊張

中国が台湾への圧力を強めており、アジア全体の安全保障上の懸念が高まっています。台湾は半導体の主要な供給元であり、その安定性が損なわれることは、日本をはじめとする世界のテクノロジー産業にとっても大きなリスクです。

万が一、台湾海峡で軍事的な緊張が高まれば、半導体の供給が途絶えるリスクがあります。日本企業にとっては、半導体を含む重要部品の供給源を多様化し、リスクを分散させることが求められます。

また、台湾情勢は米中対立とも深く関わっており、アジア全体の経済に波及する影響も大きいため、注意が必要です。

5.北朝鮮の核・ミサイル活動

北朝鮮は2025年も核・ミサイル開発を続け、地域の安定を脅かす可能性があります。その影響は、日米韓の協力体制にとって大きな課題であり、防衛力の強化や地域の安定に向けた対応が求められています。

特に、日本の防衛政策において、北朝鮮の動向は非常に重要な要素です。

また、北朝鮮の挑発行為は周辺国の軍備増強を促し、地域全体の緊張を高める結果となります。これにより、日本の防衛費増加や外交的な対話の必要性が増し、経済への影響も無視できないものになると考えられます。

投資家に求められる対応策

2025年の地政学的リスクに備えるためには、どうすればいいでしょうか。有効な対策をいくつかご紹介します。

・ポートフォリオの多様化

異なる地域や資産クラスに分散投資を行うことで、リスクを軽減します。特に、エネルギー関連やテクノロジー関連資産は地政学的リスクに影響を受けやすいため、慎重な選択が求められます。

・安全資産の活用

市場が不安定な時期には、安全資産とされる金や米ドル、日本円、スイスフランなどを積極的に活用することで、資産の価値を守ることができます。

なぜならこれらの資産は、地政学的リスクが高まった際に価値が上昇する傾向があるからです。リスクヘッジの一環として取り入れるといいでしょう。

・情報収集と早期対応

最新の国際情勢に常に目を光らせることで、リスクの兆候を早期に察知し、迅速に対応することが重要です。信頼できる情報源からの情報収集を行い、リスクが顕在化する前に必要な対策を講じ、被害を最小限に抑えることが可能になります。

不安定の先にはチャンスも

金融市場というのは、不安定であればあるほど大きな投資機会を生み出す可能性も出てきます。地政学的リスクを理解し、適切な対応策を取ることで、不安定な状況でも安定した収益を目指すことが可能だということです。

2025年に向けて、投資家は柔軟な視点と堅実なリスク管理の両立を図りながら、戦略的にポートフォリオを構築していくことが求められます。自分の資産は自分で守るという姿勢で、常に最新の情報に基づき、冷静な判断を心がけましょう。

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[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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