【株と平成と私】相場を見つめて30年、やっと見つけた「勝てる成長株」

岡田禎子
2019年4月30日 8時00分

いよいよ「平成」が幕を下ろします。この時代の始まりとともに株の世界に足を踏み入れ、刻々と変化する時代の中で着実に力を磨いてきた個人投資家が、特に思い出深い銘柄とともに平成を振り返ります。ついに確信を得た銘柄とは一体?

思い出の銘柄たちで平成の株式相場を振り返る

筆者は平成元年に証券会社に入社し、運用会社、独立系ファイナンシャルプランナーと業態を変えながら、平成の30年間、株式相場とともに歩んでまいりました。個人投資家としても様々な銘柄に投資しましたが、特に印象に残っている銘柄とともに「平成」という時代を振り返ってみたいと思います。

「平成」とともにスタートした投資家人生

筆者は平成元年(1989)に東京・茅場町にある証券会社に入社しました。

その当時の証券会社は、バブル景気の真っただ中で、とても活気に満ちていました。ランチは社員食堂か香取寿司、深夜残業には会社からタクシーが用意され、入社1年目でも札束を扇形に広げられるほどのボーナス……と、そんな華やかな時代でした。

個人投資家として最初に投資したのは、三井造船(現・三井E&Sホールディングス<7003>)です。

何を買っても儲かるという相場環境の中、まだリサーチの方法も分からず、お堅い銘柄が確実だろうという理由で選び、僅かながらも利益が出て、「株式相場というのはなんて面白いのだろう」と実感しました。初めて株で稼いだお金で茅場町の鰻屋で食べたあの美味しさと喜びは、今でも心の原点です。

平成最初の12月末の大納会で日経平均株価は38,915円まで上昇し、「来年春には4万円台に載せるだろう」とマーケット関係者は見ていました。しかし、実際の株価は下落の一途を辿ります。その後、山一証券やシステム投資に失敗した三洋証券の倒産、証券会社同士の合併など、証券界は大きく様変わりしました。

個人的には、上司から「株価のチャートを書き写すと自分の相場観が身につく」と言われ、半導体製造装置のアドバンテスト<6857>のローソク足チャートを毎日せっせと書き写していました。同社は半導体関連の代表銘柄として知られ、世界的な半導体需要から株価は強い右肩上がりの上昇を描いていました。

今のようにネットで簡単にチャートを観られる時代ではなく、また当時は、日々チャートを丹念に描く、というのが投資家としての下積みの一つでした。積み上げられた分厚いチャート帳に尊敬のまなざしが向けられる──そんな時代だったのです。

ITバブルで大失敗したのは、あの銘柄

ITバブルの真っただ中、筆者が初めて大失敗した銘柄はアスキー<9473>です。PC業界では有名な西和彦氏が創業した、コンピュータ関連の雑誌書籍の販売を手掛ける会社です。

当時は債務超過で再建中でしたが、ITバブルでヤフー<4689>やトレンドマイクロ<4704>が爆騰しており、同社は財務リスクこそあるものの、出遅れ株として投資家から注目されていました。

また、インターネット関連のソフト販売に本格的に再開することや、グループ企業であるCSK<9737>の株価が順調に推移していたことなどでグングンと値を上げ、500円程度で買った株価が7,000円以上まで上昇しました。

株式新聞の一面に「アスキー」の緑の文字が躍るなど、「この勢いでもっと上がるだろう」と思っていた矢先に一気に株価が崩壊し、最終的には上場廃止に……。株式投資の恐ろしさを思い知りました。

ネット時代の新しい株式投資の幕開け

1990年代後半には、現在のマネックス証券の前身、日興ビーンズ証券がポップなロゴで華々しく登場するなど、ネット専業の証券が次々にデビューしました。それまでの株式投資のイメージががらりと変わり、ネット時代の新しい株式投資が若い人を中心に浸透していきます。

また、ネット証券の登場のおかげで、米国株へ投資する人が周りでも増え始めます。

『1000ドルから本気でやるアメリカ株式投資』(荒井拓也 NTT出版)を熟読し、バイクで世界中を回って投資する世界的な投資家ジム・ロジャースに憧れ、実際に米国株で3000万円稼いだなど、景気の良い話が飛び交っていました。筆者が運用会社に転職したのも、この頃です。

その後、ITバブルがはじけて、平成15年(2003)4月には日経平均は7,607円まで下落し、バブル崩壊後の最安値を付けます。あるファンドマネージャーが、「どう考えても日本株が絶対的に安いのは分かっている。でもどうしても買えない」とふと呟いたのが、今でも忘れられません。

日本全体が株式相場の先行きに対して疑心暗鬼になっていた、そういう状況だったのです。

そんな中、新しい動きもありました。平成12年(2000)は新興株式市場であるマザースナスダックジャパンの創設もあり、IPO全盛となりました。その後、ITバブル崩壊や銀行の不良債権処理で一時は減少気味となりましたが、国内景気復調もあり、平成16年(2004)ごろからIPO件数が再び伸びてきます。

特に平成17年(2005)のIPOは、秋の日本郵政グループの大型上場につなげる動きとして「質の向上」が見られ、96%もの銘柄の初値が公募価格を上回る盛況な年でした。

オールアバウト<2434>、GMOペイメントゲートウェイ<3769>、ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>、占いサイトのザッパラス<3770>など新しいサービスで上場し大成功を収めた若い経営者たちを、インタビューや様々な場で目にするようになりました。

運用会社では、決算資料や株式指標を徹底的に調べ上げ、興味が動いた企業にインタビューを繰り返す日々でした。テーマ性や中期事業計画や経営者なども、重要な判断材料となります。

株価はいずれ業績に連動するという一つの真実や、PERが高くても独自のビジネスや参入障壁が高い事業を行っている企業は強い、ということを現場で学びました。

個人投資家でも勝てる時代の到来を実感

平成24年(2012)12月の安倍政権誕生によりアベノミクス相場が始まります。

株式相場が蘇った平成25年(2013)、資生堂<4911>に魚谷雅彦社長が就任します。当時、老舗企業としての知名度の高さはあるものの、各ブランドの価値は品数の多すぎることから低下しており、ドラックストアなどでは低価格商品にシェアを奪われ、主力の国内事業は減収が続いていました。

そこに迎え入れられた魚谷氏は、日本コカ・コーラの社長やNTTドコモの特別顧問などを務め、各社のマーケティング戦略にかかわったマーケティングのプロ。

運用会社を退職して個人で活動していた筆者は、元々良い会社だと思っていたこともあり、個人投資家の立場でどこまでやれるか、本腰で同銘柄にチャレンジしてみようと決めます。

社長就任後はマーケティング投資を強化しつつ、構造改革を断行していきます。平成25年(2013)に国内事業は増収へ、平成27年(2015)には2020年までの中長期戦略「VISION2020」をスタート、日本、中国、トラベルリテールを成長軌道に乗せます。

そうして、魚谷社長の就任から4年で同社の株価は約4倍に成長。特に、株価がジャンプアップした平成29年(2017)、中間決算の資料をチェックした際には、「こんなに売れるものなのか」と中国の購買層の凄まじいパワーに驚いたのを覚えています。

(Chart by TradingView

「これは」と思った銘柄は長期保有スタンスで、ネットで手に入れた決算資料を丹念に読み込み、決算説明会の動画や総会をチェックし、店頭にも足を運ぶ。その実体験で感じたものが決算で如実に数字に表れ、さらに株価を押し上げる。

まさに王道の成長株投資を個人投資家の立場でもしっかり実践できると確信したのが、資生堂でした。

新たな時代の新たな株式相場に向けて

その後も、働き方改革関連や仮想通貨関連、型破りな経営者・前澤友作氏率いるZOZO<3092>、日本初のユニコーン企業のメルカリ<4385>など、面白い銘柄が次々と現れました。また、平成最後の大納会は日経平均が2万円台を死守して、マーケットの意地のようなものを感じました。

こうして振り返ってみると、筆者の投資人生はまさに平成とともにありました。

成功した株、失敗した株、テンバガーとなった株など様々経験しましたが、平成の時代は、株式市場が個人投資家でも勝てる場に大変革した30年とも言えそうです。あらゆる情報がネットで簡単に手に入り、何かと制限のある機関投資家よりも自由な投資が出来る──そのことを日々実感しています。

いよいよ新元号「令和」が5月1日にスタート。新しい御代の株式相場でも、自分なりの成長株投資を極めていきたいです。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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