プラス445万円のヒーローも誕生! 2018年・IPO初値爆上げランキング
メルカリやソフトバンクなど大型案件が続いているIPO。これまで興味がなかったが少し気になっている、という人もいるでしょう。一体、IPOではどれくらい儲けられるのか? 初値が〝爆上げ〟した銘柄をランキングでご紹介します。
2018年のIPOはどうだった?
IPO史上最大の初値上昇率となったHEROZ<4382>や、日本初のユニコーン上場で注目されたメルカリ<4385>、史上最大の公募規模となったソフトバンク<9434>など、2018年の株式市場はIPOの話題性に事欠かない一年でした。
そうした話題銘柄の注目度もあって、IPO投資は「簡単に儲かる」とますます人気になっています。全体で見てみると、2018年の新規上場は89社。そのうち初値が公募価格を上回ったのは81社、下回ったIPOは8社で、初値で売った場合の「勝率」は91%でした。
IPOとは? 仕組みを簡単におさらい
IPO(新規株式公開)とは、企業が資金を集めるために、自社の株を株式市場に上場して一般の投資家に売り出すことをいいます。
その際、株式の売れ残りが出ないように、公募価格(売り出し価格)を比較的割安に設定します。そのため、上場後に市場で初めてつく株価(初値)は、公募価格より値上がりすることが多くなります。
近年人気を集めているIPO投資とはこの値上がりを利用する手法で、IPO株を上場直後に売却することでかなりの確率で利益を得ることができる、とされています。
ちなみに過去のデータでも、初値が公募価格を上回る勝率は、2016年が81%、2017年が91%、2018年も91%と、たしかに高い確率で利益が出ています。
2018年の初値上昇額トップ10
では、1回のIPOでいくら利益を出せるのか? 2018年のランキングで確認してみましょう。以下は、2018年の公募価格と初値との差額トップ10(つまり初値で売却した場合の利益上位10社)です。
投資家に最も利益をもたらしたHEROZ<4382>では、45万円(100株購入)の投資でプラス445万円と、実に驚異的なリターンとなりました!
No. | 上場日 | 社名 | 市場 | 公募価格 | 100株購入時の利益 | 初値上昇率 |
初値 | ||||||
1 | 4/20 | HEROZ | マザーズ | 4,500 | 4,450,000 | 988.9% |
49,000 | ||||||
2 | 3/28 | アジャイルメディア・ネットワーク | マザーズ | 3,000 | 1,247,000 | 415.7% |
15,470 | ||||||
3 | 3/27 | RPAホールディングス | マザーズ | 3,570 | 1,071,000 | 300.0% |
14,280 | ||||||
4 | 4/25 | ベストワンドットコム | マザーズ | 4,330 | 1,050,000 | 242.5% |
14,830 | ||||||
5 | 12/19 | Kudan | マザーズ | 3,720 | 1,028,000 | 276.3% |
14,000 | ||||||
6 | 4/4 | ビープラッツ | マザーズ | 2,200 | 780,000 | 354.5% |
10,000 | ||||||
7 | 2/28 | ジェイテックコーポレーション | マザーズ | 2,250 | 745,000 | 331.1% |
9,700 | ||||||
8 | 2/23 | Mマート | マザーズ | 1,240 | 414,000 | 333.9% |
5,380 | ||||||
9 | 12/25 | リンク | マザーズ | 3,580 | 404,000 | 112.8% |
7,620 | ||||||
10 | 9/21 | イーエムネットジャパン | マザーズ | 3,000 | 400,000 | 133.3% |
7,000 |
トップ10はこんな銘柄
【第1位】HEROZ<4382>
人工知能(AI)を活用したインターネットサービスの企画や開発、運営を手がけている会社。将棋AIロボット「Ponanza」が2017年に現役の将棋名人に勝利したことで有名です。「AI」という大注目のテーマを主力事業に据えていることに加えて、公開株数が極めて少なかったことから、上場から3日間も初値がつかないという異常な人気となりました。
公募価格4,500円に対して、ついた初値は49,000円! 初値上昇率は988.9%で、100株利益は445万円となりました。これは、1999年10月1日のエム・ティー・アイ<9438>の809.1%を超えて、IPOの新記録。初の「初値テンバガー(10倍株)」となる超お宝銘柄となりました。
ここまで人気が過熱した背景には、同様のAI関連で2017年9月に上場したPKSHA Technology<3993>の影響があります。同社は公募価格2,400円に対して初値は5,480円(上昇率128%)となり、その後も16,730円まで株価が高騰しました。「第二のPKSHA Technology」を狙う投資家の熱い期待感から5万円近くまで買われた、と考えられています。
また、同様のAI関連株で前の月に上場したRPAホールディングス(第3位)も公募価格に対して4倍以上になったことや、IPO市場自体が好調だったことも後押ししました。
【第2位】アジャイルメディア・ネットワーク<6573>
ソーシャルメディアや体験を通じたファン発見・活性化・分析サービス「アンバサダープログラム」の提供を行っている会社。「アンバサダー」を通じたマーケティング活動というSNS時代の新しいマーケティング手法として成長期待が高まる中、公開規模が4億円未満と東証マザーズとしては超小規模なことから人気化し、初値上昇率は415.7%、100株利益は124.7万円となりました。
【第3位】RPAホールディングス<6572>
事務作業代行ソフトウェアの販売等を行うロボットアウトソーシング事業等を展開する会社。Robotic Process Automation(RPA)の先駆的企業であり、「働き方改革」の代表銘柄です。次世代テクノロジー関連で、ソフトバンクが出資して業務提携していることも追い風となり人気化、初値上昇率は300%、100株利益は107.1万円でした。
【第4位】ベストワンドットコム<6577>
クルーズ旅行に特化した旅行予約サイト「ベストワンクルーズ」などの運営を手がける会社。団塊世代や訪日外国人客(インバウンド)の需要拡大から業績への成長期待が高く、また公開規模も5億円と小さいため人気化し、初値上昇率は242.5%、100株利益は105万円となりました。
【第5位】Kudan<4425>
AP(人工知覚)技術を提唱・研究開発する会社。APとは、人間の眼と同様に、機械に周囲の状況を理解するための「眼」を与える、AI(人工知能)の進化に欠かせない技術で、同社がパイオニア企業です。注目テーマであるAI関連株であり、同じAI関連のPKSHA TechnologyやHEROZの爆上げを受けた思惑から人気化し、初値上昇率は、276.3%、100株利益は102.8万円となりました。
【第6位】ビープラッツ<4381>
継続課金の販売・管理プラットフォームの提供を行う会社。IoT関連のクラウドサービスを取り扱っていることや、マザーズの小型案件という理由もあって人気度は高く、初値上昇率は354.5%、100株利益は78万円となりました。
【第7位】ジェイテックコーポレーション<3446>
大型放射光施設で使われるエックス線ナノ集光ミラーの開発、製造、販売などを手がける会社。2月8日上場予定だった世紀が上場取り消しとなったことで、同月末上場の同社が2018年のIPO第2号となり、投資家の意欲は強く、また業績好調から高成長の期待もあり、初値上昇率は331.1%、100株利益は74.5万円となりました。
【第8位】Mマート<4380>
BtoBに特化したインターネットマーケットプレイス事業を手がける会社。食材市場の「Mマート」が主力。2018年のIPO第1号で、2カ月という空白期間を経ての待望のIPOとあって注目度も高く、初値上昇率は333.9%、100株利益は41.4万円と好発進を切りました。
【第9位】リンク<4428>
在庫を最適化するソフトウエアパッケージ群「sinops(シノプス)」シリーズを開発・展開する企業。2018年12月最後のIPO銘柄でした。ソフトバンク<9434>の公募割れやレオスキャピタルワークスの直前での上場延期、ベルトラ<7048>と同日上場といった状況から需給環境は厳しいと見られていたものの、IT関連企業のマザーズ上場は人気が根強く、初値上昇率112.8%、100株利益は40.4万円としっかり結果を残しました。
【第10位】イーエムネットジャパン<7036>
検索連動型広告や運用型ディスプレイ広告などを企画から運営、効果分析、改善提案まで一括して提供する会社。韓国KOSDAQ上場のEMNET INC.が親会社です。業績も好調で小型案件であることから人気化し、初値上昇率133.3%、100株利益は40万円となりました。
2018年のIPOを振り返る
こうして2018年のトップ10を見てみると、「AI」「IOT」「人材不足解消に関連するサービス」など旬なテーマに属する銘柄は、やはり初値が〝飛び〟やすくなるようです。
しかし一年を通して振り返ると、HEROZがテンバガーとなり、メルカリがプラスとなったことなどからIPO人気は加速しましたが、後半は失速し、特に12月はソフトバンクの公募割れなどIPO自体が冷え込む展開となりました。
(ちなみに、日本初のユニコーン上場〔企業価値10億ドル超の未公開企業〕として2018年の話題をさらったメルカリ<4385>は、公募価格3,000円に対して初値は5,000円。初値上昇率は67%でした)
ソフトバンクの例を挙げるまでもなく、IPOが「絶対に」儲かるわけではないことを肝に銘じておく必要があります。それを心に刻むために、次は2018年のワースト10をご紹介します。