安定が魅力の配当株投資…のはずが 「高配当」に潜む意外な落とし穴

岡田禎子 2020/05/13

安定した利益が魅力の配当株投資

いま、銀行の預金利息は0.01%、日本国債10年の利回りはマイナス0.006%と、銀行に預けても国債を買っても、お金はほとんど増えません。

一方の株式市場では、東証1部上場銘柄の配当利回りの平均が1.8%を超え、4%以上の銘柄もゴロゴロあります。近年、日本企業は株主還元策を積極的に強化しており、財務省の「法人企業統計」によると、2000年度から2018年度までで配当は5.4倍に増加しています。

中東情勢や米中貿易戦争の行方、さらには新型コロナウイルスの感染拡大といった相場環境の不透明感も加わり、定期的かつ安定的な収入が得られる配当重視の投資が個人投資家に一層注目され、特に高配当銘柄に人気が集まっています。

しかし、「高配当」というだけで銘柄を選ぶと、思わぬ痛い目にあってしまう可能性があります。

高配当銘柄の落とし穴

下の表は、2020年5月11日現在の高配当銘柄ランキング(時価総額100億円以上)です。

高配当銘柄ランキング(時価総額100億円以上)

高配当銘柄としては、ランキングにもあるJT日本たばこ産業<2914>)やコニカミノルタ<4902>など有名企業の名前がよく上がり、投資さえすれば安定的に利益を得られるイメージがあります。また、IPO募集時のソフトバンク<9434>のように、高い配当利回りを売りにする銘柄も増えてきています。

しかし、高配当だからその銘柄が安全だとは限りません。

例えば、2018年の高配当の代表的な銘柄のひとつに日産自動車<7201>がありました。高い配当利回りが魅力で、個人投資家に人気が高く、NISA保有株の中でもトップ10の常連でした。

2018年11月、カルロス・ゴーン元会長が逮捕されたニュースで株価は下落しましたが、その後に反発。高い配当利回りを理由にして、株価が下がったところで個人投資家の買いが増加したのです。しかし、のちに業績悪化による減配、株価下落という悪循環に陥り、結果的に投資家に大きな損害を与えました。

高配当を売りにしていたソフトバンクも、IPO後は公募価格を下回る展開が続いていたのは記憶に新しいところです。

つまり、高配当だからという理由だけで銘柄を選んでしまうと、株価が大きく下がれば、いくら配当をもらっても損失になる可能性がある、ということです。

配当利回りが高い“本当”の理由

そもそも「高配当」とは、配当金額ではなく配当利回りが高いことを言います。その配当利回りは、以下のようにして算出されます。

  • 配当利回り(%)=1株あたり配当額÷株価×100

この式からもわかるのは、高配当(配当利回りが高い)ということは、言い換えれば「配当金に対して株価が割安」ということなのです。

配当を出しているということは、業績は悪くないはずです。にもかかわらず、株価が割安な状態だということは、そこには株価が上がらない「何らかの理由」を含んでいる可能性があります。特に、極端に配当利回りの高い銘柄はリスクが高いと考えられます。

一方で、配当利回りが低い銘柄は当然リスクも低くなります。安定性を求めて配当株投資をしているはずが、気づけば高リスクの銘柄をつかんでいた……なんてことになっては本末転倒。配当利回りの高さだけに惑わされず、個々の銘柄を見極める眼が必要です。

「よい高配当銘柄」を探せ

では、どうすれば「よい高配当銘柄」を見極めることができるでしょうか。それをご説明するために、まずは配当についておさらいしましょう。

配当とは、企業が稼いだ利益を株主に還元することです。一般的には、決算発表時に今期の業績予想とともに1株あたりの配当予想も発表され、年に1〜2回に分けて支払われます。

投資家にとっては、株式を保有していることで得られる利益、インカムゲインとなります。株価の変動によって利益を得るキャピタルゲインと違って、その安定性が魅力です。ですから、配当株投資では、その銘柄が「長期的に安定した配当を出せるのか」が重要になります。

「安全な高配当銘柄」を見極める4つのポイント

安全な高配当銘柄を選ぶためのポイントは4つ。なお、NISAを活用すると配当は非課税となりますので、合理的な運用ができるでしょう。

・業績が好調

高配当銘柄を見極める際に最も重要なのは「業績」です。なぜなら、配当のもとになっているのは企業が稼ぐ利益だからです。業績が悪化すれば減配(配当が減ること)となり、株価も下落します。売上や利益は安定的に伸びているか、業績面で不安はないかをしっかりと確認する必要があります。

・配当利回りが高すぎない

配当利回りは、株価に対して1年間にいくらの配当をもらえるかを示す指標です。そのため、配当金額が高い水準で、安定的に継続して配当されている場合に、株価が下がれば配当利回りは高くなります。一方、配当の金額が変わらず株価だけが上昇した場合は、配当利回りは低くなります。

また、会社創立○周年などの「記念配当」によって一時的に配当利回りが高くなる銘柄もあるので、注意が必要です。上でも述べたリスクも考慮すれば、理想的な配当利回りは3〜6%といった水準ではないでしょうか。

・配当性向が30〜50%程度

配当性向とは、企業が稼いだ利益のうちどれくらいを配当に回しているかを示す指標です。以下の計算式で算出されます。

  • 配当性向(%)=1株あたり配当金÷1株あたり利益×100

たとえば、業績は好調でも、外部環境や先行投資で一時的に利益が減少する場合があります。そのような場合に、配当を維持して今後増やす余力があるかを測ることができるのが、この配当性向です。日本企業の配当性向の平均は30%です。

なかには配当性向100%の会社もありますが、これは儲けた利益を全て株主に還元しているということです。一見ものすごく魅力的ですが、業績が悪化した場合には一気に減配するリスクがあるので、安定性を考えれば避けたほうがよさそうです。

また、配当性向が高すぎる企業は、利益に見合わない配当を無理に行っている場合もありますので、そういう視点で検証することも必要です。一般的には30〜50%が妥当といわれています。

・財務面がよい

財務面で自己資本比率が高い、つまり企業の借金が少なければ、配当を維持する力があります。さらにキャッシュフローで手持ち現金が潤沢か、配当を継続する条件が整っているか、といった点を確認すれば、さらに安心感が高まります。

「将来の高配当銘柄」を見つける

業績が好調で高い成長性を感じられる企業で、かつ、東証1部の平均利回り2%程度より高い配当利回り、そんな銘柄を割安なうちに購入して長期保有してみるのも面白いかもしれません。

たとえば、配当利回り2.5%の銘柄を10年保有した場合、税引き後の手取りでは20%の利回りとなります。利益成長による増配や株価の上昇も期待できます。仮に株価が下落したとしても、成長企業であれば下値は固く、10年で20%も下落する確率は高くはないでしょう(もちろんゼロではありません)。

このように、成長企業を配当という視点から分析することで、「将来の高配当銘柄」を見つけることができるかもしれません。

高配当より注目したい「連続増配」

配当株投資では業績を見極める力が最も重要ですが、それは決して簡単ではないのも事実。そこで、もうひとつの選択肢として「連続増配銘柄」が挙げられます。連続増配とは、毎年配当金を増やしていることです。

業績が好調でなければ配当を増やし続けることは難しく、増配できるということは、将来の業績や利益成長の継続性に対する企業側の自信の表れといえます。特に長年続けての増配は、好業績で企業体力もあることの証しです。

また、株主還元を充実させるという経営側の意思表示でもあるため、長期投資においては安心感につながります。

このような銘柄は株式市場での評価も高く、同時に利回りアップを狙った投資家の買いも入るため、株価は上昇します。たとえば、29期連続増配の花王<4452>の株価は、この10年で4倍近くも上昇し、利回りも、10年間保有し続けた場合では2.6%から5.9%とアップしています。

配当が増えない高配当株よりも連続増配銘柄に投資することで、保有するだけで年々受け取る配当金額が増えて利回りがアップし、さらに株価上昇により資産が増える可能性がある、ということです。

以下は、2020年5月11日現在の連続増配銘柄の配当利回りランキングです。

10年連続増配銘柄・配当利回りランキング

増配が永遠に続くとは限らない

連続増配銘柄の特徴として、世界景気や為替の影響を受けない内需株で、かつ利益率も高いという点があります。また、高配当銘柄は配当性向が高い傾向にありますが、連続増配銘柄は平均並み。これは減配リスクが低く、さらに増配の余力もあるということで、連続増配記録を伸ばすことが可能ということです。

ただし、連続増配しているからといって、それが将来も続くとは限りません。しまむら<8227>のように、2019年2月期に業績悪化による減配を発表し、連続増配が17期でストップとなった例もあります。

連続増配銘柄であっても、経営環境や業績の行方などを丹念に見ていく必要があるのは、他の銘柄選びと同様です。また、1銘柄に資金を集中投下させないほうがいいのも、あらゆる投資手法におけるリスク管理の基本のひとつです。

高配当でも銘柄選びは慎重に

コロナショックによる市場の混乱で、どんな銘柄を選べばいいのかわからなくなっている人も多いでしょう。そんなときは、定期的に利益が入ってくる配当株投資の魅力が、普段より際立って見えるかもしれません。

しかし、配当の原資は利益であることを忘れてはいけません。業績が大きく悪化すれば、減配ではなく一気に無配(無配当)になる可能性も。結局のところ、何のリスクも負わずに利益を得られる道はないのです。

また、配当狙いということは、基本的には長期保有が前提です。それなのに、目先の短期的な株価の動きに一喜一憂して、つい手放してしまっているようでは、本来得られた利益までも手放すことになります。投資の目的を明確にした上で、それに見合った銘柄を選ぶ姿勢が何より大切です。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)【株窓アワード2019大賞】 →この執筆者の記事一覧へ

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