3月の株価はどうなる? 重要イベント満載で相場は春の嵐か、サクラ咲くか

岡田禎子
2024年3月1日 8時00分

《マーケットには、その月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)がたくさん存在します。それらを知っておけば、下落局面でも先読みして投資することができます。月末に向けて盛り上がる3月相場の傾向と対策を解説する【今月の株価はどうなる?】》

3月相場は月末に向け盛り上がる

3月は、月末に向けて盛り上がる月です。期末特有の好需給に支えられて、株価が上昇しやすくなるからです。

上旬から中旬はアメリカ株が下落しやすい季節性があるほか、金融機関や企業による持ち合い解消の売りが出やすく、日本株は調整局面になりやすいです。しかし後半からは配当・優待取りの動きが活発化し、権利落ち分を再投資する先物買いなども入って、月末に向けて徐々に盛り上がりを見せます。

特に今年は、日本の春闘に例年以上に注目が集まっているほか、スーパーチューズデーや全人代など重要な政治イベントが目白押しで、株価が不安定になる可能性があります。具体的なイベントとしては、次のようなものがあります。

  • 5日(火):アメリカ・スーパーチューズデー(大統領選)
  • 5日(火):中国・全国人民代表大会(全人代)が開幕
  • 7日(木):アメリカ・大統領一般教書演説
  • 8日(金)夜:アメリカ・2月の雇用統計が発表
  • 12日(火)夜:アメリカ・2月の消費者物価指数(CPI)が発表
  • 18日(月)〜19日(火):日銀の金融政策決定会合
  • 19日(火)〜20日(水):アメリカ・FOMC

そして、18日から開催される日銀の金融政策決定会合では、いよいよマイナス金利政策解除に踏み切るとの観測が強まっています。一方で、アメリカでは早期利下げへの期待が高く、日米による逆方向の金融政策修正により、株式&為替市場のボラティリティが高まるリスクがあります。

3月の株価は前半下落・後半上昇か?

近年の3月相場を見てみると、日経平均株価の成績は、過去20年では11勝9敗の勝ち越しですが、10年では5勝5敗の五分となっており、総じてほぼ互角の成績となっています。

ところが、日ごとの騰落率を見てみると際立った特徴が見て取れます。24日以降は、ほぼ勝ち越しとなっているのです。

この背景としては複数の要因が考えられます。

まず、3月期決算企業の権利付き最終日(27日)に向けて、個人投資家による配当や優待などを狙った権利取りの買い(または売り控え)の動きが活発化します。それとともに、権利付き最終日の前後では、指数に連動させて運用する年金やETFなどの、権利落ちを再投資する先物買い需要が発生します。

さらには、年度末に向けては持ち合い解消の売りも落ち着き、機関投資家による利回り評価引き上げのためのドレッシング買いが入りやすい、といったことも後半の勝率が良い理由として挙げられます。

注意したいのは、2月から3月にかけては季節的にアメリカ株が下落しやすく、日本株も〝連れ安〟となりやすい傾向があることです。そうした不安定な時季を乗り越えて、3月期末に向けて日米ともに株価が上昇していく……という流れが過去のアノマリーからはイメージできそうです。

3月の日経平均株価はどう動く?

では、実際の3月の日経平均株価はどのように動いたのか、過去3年の値動きをチャートで見てみましょう。

・2023年3月の日経平均株価

米シリコンバレーバンクの経営破綻を発端として世界のマーケットに動揺が走り、月中では下落となりました。しかし、アメリカ当局の早急な対策によって市場は落ち着きを取り戻し、月後半は日経平均株価も上昇となりました。

・2022年3月の日経平均株価

ウクライナ情勢懸念もある中、9日に年初来安値を更新したのちは上昇基調に転じました。その後はアメリカの金融政策の先行き不透明感が後退して円安基調となったことで、日本株買いに弾みがつきました。

・2021年3月の日経平均株価

アメリカの長期金利の上昇が一服したことや、バイデン政権による追加の経済対策(コロナ対策)への期待感の広がりにより、日経平均株価は月中には30,000円台を回復するなど堅調な動きとなりました。

過去3年のチャートを見ると、「前半は下落しやすく、後半は上昇しやすい」という3月相場の特徴がよく現れた動きになっていることがわかります。

その一方で、2月後半から3月中旬にかけての、アメリカ株が下落しやすいという季節性も、チャートから観測できます。なお、2020年のコロナショックでダウ平均株価が2997ドル安となった歴史的な大暴落も、3月でした。

2024年は米中の重要な政治イベントも重なるため、警戒ムードが広がって株価が乱調となる可能性もあります。日経平均株価が史上最高値を更新するなど株価は絶好調のようにも見えますが、一時的な調整は十分に起こり得ることですので、今から備えと心構えをしておきましょう。

3月は重要イベントが目白押し

3月は日・米・中で重要なイベントが目白押しです。

・日本:春闘(2月〜3月)

春闘とは、企業などの労働組合が毎年2月から3月にかけて行う、企業との賃上げ交渉です。例年行われていますが、特に今年の春闘は注目を集めています。その理由は、日銀が20年以上にわたって続けてきた「ゼロ金利政策」が、春闘の結果次第では解除に動く可能性があるためです。

もしもゼロ金利解除となれば、為替市場や株式市場に多大な影響を与えます。アメリカでは利下げ期待が進んでいる中で、日本がゼロ金利解除(=利上げ)となれば、「ドル安・円高」が急激に進む可能性があります。円高は、日本の株式市場にとってはマイナス要因です。

トヨタ自動車など大企業はすでに賃上げ方針を示しており、この流れが中小企業を含めてどの程度まで波及するのか、がカギとなるでしょう。

・アメリカ:スーパーチューズデー(3月5日)

今年3月5日に開催される予定の「スーパーチューズデー(決戦の火曜日)」とは、4年に1度行われるアメリカ大統領選挙に向けた候補者選びの大きなヤマ場です。各党の予備選や党員集会がこの日に集中し、事実上、ここで候補者が絞りこまれます。

現在、民主党は現職のバイデン大統領、共和党は前大統領のトランプ氏が有力候補と目されています。今年の世界のマーケットを動かす最大の要因は「インフレとアメリカ大統領選」といわれている中、バイデン大統領とトランプ氏の再対決となるのかに注目したいところです。

なお、大統領選の本戦は11月5日です。

・中国:全国人民代表大会(3月5日〜)

中国では、最も重要な政治日程である全国人民代表大会(全人代)が開かれます。

今年の経済成長率の目標が発表されるほか、重要な経済政策の決定などが行われます。昨年の目標である5%超えの成長は達成できたものの、2022年の反動という側面もあり、今年も同程度の目標設定となれば一段の景気支援策が必要となるでしょう。

また、1月の台湾・総統選挙の結果を踏まえて強行姿勢を示す可能性もあり、さらには米スーパーチューズデーでトランプ氏が優勢となれば米中対立悪化の懸念から地政学リスクが高まる可能性があります。いずれにしても、米中の政治イベントはどちらも要注目です。

高配当株ゲットのラストチャンス

3月末には、3月期決算企業の権利付き最終日(27日)がやってきます。配当や株主優待の権利取りを狙うなら、ここが最後の買いチャンスとなります。

アノマリー的には、3月前半の下落しやすい場面ですかさず拾いたいところ。高配当利回り銘柄なら、保有期間利回りの高さを考えると効率的な投資になります。

なかでも注目したいのが、3月期に一括配当を行う銘柄です。配当利回り4%であっても中間配当がある場合、3月期と9月期が同じ配当率であれば、3月期分として手にできるのは半分の2%です。しかし、期末一括配当の銘柄であれば、4%をまるまる手にすることができるのです。

たとえば、建設など公共投資関連の銘柄は期末一括配当が多いことで知られています。これは、1〜3月期の収益のウエイトが高く、中間時点では業績動向が読みづらいためと考えられます。ただし、同じ理由から直前での減配発表などもあるため、買う前に必ずチェックしましょう。

参考までに、いくつか具体的な銘柄を挙げておきます。数字は2月27日終値時点の配当利回り(会社予想)です。

  • 淺沼組<1852> 4.61%
  • 熊谷組<1861> 3.41%
  • 三井松島ホールディングス<1518> 3.28%
  • 日本郵政<6178> 3.48%

満開の桜で一献

2024年の桜の開花予想は平年より早まる見込みで、東京では3月18日頃となるそうです。

花見の市場規模は約2000億円以上ともいわれています。ひと足お先に2月の期末決算を終えた外食・飲食関連銘柄などが、この時期には好調となります。決算対策の売りが一巡して買いが入りやすくなるためです。

持ち株の上昇を眺めながら、心地よい花見酒となるか。3月のアノマリーを理解することで、その確率はぐんと上がることでしょう。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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