5月の株価はどうなる? 10連休と新元号に向けて急騰する銘柄とは

岡田禎子
2019年4月22日 8時00分

株式相場にはお決まりの「パターン」があり、月ごとの特徴や株価を動かすイベントを熟知しておけば、大きなチャンスもつかめます。「10連休」「新天皇の即位」「改元」という歴史的なイベントが控えている2019年5月は、一体どんな銘柄に注目すればいいのでしょうか。

5月相場は「セルインメイ」

5月の株式相場は、年初から4月にかけての上昇相場に暗雲が立ち込める月です

ここ数年は、4月に天井をつけて5月中旬頃から「セルインメイ」入りするパターンが通例。3月期の決算発表がいよいよ本格化し、ゴールデンウィークを経た後の中旬以降に下がり始める……という流れです。

特に2019年は、新天皇即位に関連して稀に見る超大型連休が控えており、波乱相場の一因となる可能性があります。「新元号関連銘柄」も人気化するかもしれません。

3月期決算企業の決算発表が本格化

4月末から5月中旬にかけて、3月期決算企業の決算発表がいよいよ本格化します。本決算発表で投資家が最も重視するのが、新しい期に対する会社側の業績見通しです。なぜなら、来期の数字は投資判断をする際に最も重要な判断材料の一つになるからです。

しかし、日本企業は総じて保守的な見通しを出すことでよく知られており、それが投資家の失望売りに繋がる可能性もあります。特に2019年3月期の第3四半期決算の国内企業の業績は減速傾向にあり、例年以上に保守的になることが予想されています。

決算シーズンは株価が乱高下しやすい

また、決算シーズンは株価が乱高下しやすく、決算内容が良くても株価が下落することもあれば、どんなに業績が悪くとも急騰することも多々あります。5月は株価が読みづらく、短期的な売買に終始しやすい時期と言えます

なぜなら、結局のところ、決算は蓋を開けてみなければわからないからです。特に近年は、アナリストの決算前企業へのインタビューが禁止されたことから、ますますその傾向が顕著になっています。

博打とならないためには事前にポジション調整(=持ち株を現金化)して、決算発表に備えるという選択肢も検討してみてください。

手掛かりがなく方向感を失いやすい時期

その後、企業が発表した来期の業績見通しや中期事業計画の中身が精査され、そこに独自の見解を加えたアナリストによる今期の予想が出揃います。それを受けて、株価は適正水準に収束していきます。

この間の株式市場は手掛かりとなる材料が少ないため、方向感を失いやすい展開となります。慌てて参加するよりも、株価が平常モードに落ち着いてから、ゆっくりと自分なりの投資判断を下すほうが賢明でしょう。

このように5月相場は、4月の上昇相場から一転して下落しやすく、方向感を失いやすい傾向にあります。過去3年間の日経平均株価の推移をみても、華やかな上昇相場だった4月と比べて、その勢いはトーンダウンしていることがわかります。




(Chart by TradingView

日本でも「セルインメイ」な理由

セルインメイSell in May)とは、アメリカの株式市場のアノマリー(ジンクスのようなもの)の一つで、「5月に株を売って9月半ばまでは相場から出て行け」というものです。

実際、アメリカの株式市場は5月から9月にかけて株価が下落しやすく、9月半ばから上昇しやすい傾向があります。これは、欧米では6〜8月はバカンスシーズンで休暇を取る投資家も多く、プレイヤー不在の閑散相場となるために株価が下がりやすくなるからです。

現在、日本の株式市場のプレイヤーの7割は外国人投資家であり、市場の動向は彼ら次第ともいえます。アメリカ市場が軟調であれば日本市場も同様の動きになりやすく、国内投資家といえども「セルインメイ」を意識せざるを得ません。

(参考記事:株は「5月に売れ」って本当? 過去12年のセルインメイを検証してみた

新天皇、新元号、超大型連休……

ゴールデンウィーク前の株式市場は、「大型連休中に海外市場が大きく変動するかもしれない」という思惑から、リスク回避の動きとなって売られやすくなります。また、3月期決算発表の真っただ中であるために動きづらく、「GW関連銘柄」に資金が集中しやすくなります。

特に、2019年のゴールデンウィークは、新天皇が即位する5月1日を祝日扱いとしたことによる、史上初の10連休という超大型連休が実現するため、連休中に売上増加が期待できる銘柄に物色の矛先が向かいそうです。

超大型連休関連銘柄を狙え

超大型連休関連としては、「旅行関連銘柄」や「レジャー関連銘柄」などが挙げられます。

旅行関連銘柄では、旅行大手のエイチ・アイ・エス<9603>や近鉄系のKNT-CTホールディングス<9726>、旅行サイト「トラベルコ」を運営するオープンドア<3926>や、現地ツアー専門サイトを運営するベルトラ<7048>などがあります。

そのほかにも、観光地のお土産を扱う寿スピリッツ<2222>、ビジネスホテル・リゾートホテルを手がける共和メンテナンス<9616>なども、旅行シーズンに注目される銘柄です。

・寿スピリッツ<2222>

北海道の「ルタオ」など地域限定ブランド菓子を展開している会社で、大型連休関連で必ず名前が挙がる銘柄の一つ。過去には「インバウンド銘柄」として大きく株価を上げた銘柄ですが、東京オリンピックを控えて再浮上の期待も高まっています。


(Chart by TradingView

一方、レジャー関連銘柄では、東京ディズニーランド・シーを運営するオリエンタルランド<4661>、スパリゾートハワイアンズを運営する常盤興産<9675>などがあります。

近場の娯楽需要を満たす企業であれば、ボーリングなど複合レジャーを全国展開するラウンドワン<4680>や遊園地を運営するよみうりランド<9671>などにも期待が寄せられます。

連休明けには個人も機関投資家も戻ってきますので、全体の株価の押し上げとともに、これらの銘柄がさらに上昇する傾向にあります。しかし、中旬を過ぎるとセルインメイが意識され始めますので、5月中旬までの短期的な売買が中心となります。

新元号関連銘柄にも注目

2019年5月1日から、いよいよ新元号「令和」に切り替わります。新天皇即位に伴う「ご祝儀相場」も期待されますが、株式市場では今、元号切り替えによって特需が発生する「新元号関連銘柄」に注目が集まっています

利益拡大を期待されるのは、主に印刷関連会社です。改元に伴って多くの印刷物が刷り直しされますので、業績へのインパクトは大きくなります。商業印刷やカレンダーなどを手がける野崎印刷紙業<7919>、図書製本のナカバヤシ<7987>などが注目されています。

・野崎印刷紙業<7919>

2016年8月8日に天皇陛下が生前退位の意向を表明されたことを受けて、100円台だった株価は上昇を始めます。2017年12月8日に改元が閣議決定され、株価は248円まで上昇。2018年10月に569円の高値をつけました。「生前退位の意向表明」から約4倍に上昇しています。


(Chart by TradingView

また、改元には紙幣や硬貨の更新も必要になりますので、硬貨・紙幣処理機を手がけるグローリー<6457>や日本金銭機械<6418>も関連銘柄に挙げられます。2019年4月に紙幣のデザイン刷新が発表されたことからも、市場の注目が一段と高まりそうです。

また、新元号の幕開けで“あやかり婚ブーム”の到来が予想されるブライダル関連銘柄には、挙式サービスを手がけるワタベウェディング<4696>やハウスウエディングのテイクアンドギヴ・ニーズ<4331>、婚活サービスを展開するIBJ<6071>などが挙げられます。

上がっても、下がっても

4月までの上昇相場から一転して売り込まれやすいのが5月の株式相場です。決算が期待されていた銘柄が、蓋を開けてみると期待外れで失望売りになることも多々あり、慎重に動かざるを得ない月と言えます。

しかし見方を変えれば、普段からウォッチしていて自信のある銘柄であれば、想定以上に暴落した場合には買いのチャンス到来とも言えます。株価が上がっても下がっても利益に変えられる──それは株の醍醐味の一つであり、同時に、投資家・トレーダーの喜びでもあります。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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