生成AIやリスキリングの関連株が買われ、MBOが急増。2023年に注目を集めたテーマと話題

かぶまど編集部
2023年12月27日 8時00分

《日経平均株価が33年ぶりの高値を更新した2023年の株式市場。具体的に、どんな銘柄が注目を集めたのでしょうか。かぶまど執筆陣が2023年相場で気になった銘柄を振り返ります》

【特集】相場をにぎわせた「今年の銘柄」2023

生成AIの波は株式市場にも

・さくらインターネット<3778>

2023年は、生成AIへの関心が高まりました。

生成AIは、ジェネレーティブAIとも呼ばれ、あらかじめ学習したデータをもとに文章や画像、音楽などを自動的に作成する人工知能のことです。たとえば、会話型チャットボットの「ChatGPT」や画像生成AIツールの「DALL-E」などがあります。

これら生成AIを開発する企業だけでなく、生成AIを活用する企業にも注目が集まっています。特にChatGPTに対する関心は高く、「生成AI」「Chat(チャット)GPT」の2語が新語・流行語大賞の候補に入るなど、AIは人々の生活の一部になりつつあります。

AI技術は日々進化しており、2024年の株式市場でもますます生成AIへの関心が高まるでしょう。

データセンターを運営するさくらインターネット<3778>は、同社のクラウドサービス(クラウドプログラム)が経済産業省の助成金の支給対象に認定されたことから、6月に株価が上昇し、この月の上昇率がプライム市場のトップになりました。

さらに12月に入って、米エヌビディア<NVDA>のジェンスン・ファンCEOが、生成AIでさくらインターネットとの連携に意欲を示し、株価が上昇。2016年1月につけた上場来高値を約8年ぶりに更新しました。

さくらインターネットは、クラウド事業拡大の期待から年初から4倍近い水準まで上昇しましたが、2024年も生成AI関連の中核銘柄として注目されます。

(選・山下耕太郎

リスキリングが注目される理由

・プログリット<9560>

リスキリング」という言葉は、2022年末からよく聞かれるようになりました。

リスキリングとは、新たな業務に取り組むための「学び直し」のことです。同じ意味の言葉に「リカレント」がありますが、リカレントは自分自身が大学などで学び直すことを言い、リスキリングは企業が社員に将来必要とされるスキルを身につけさせるための取り組みに使われます。

岸田首相は2022年10月の所信表明演説で、成長分野である「リスキリング」に5年間で1兆円の公的支援を行うと表明しました。こうしたことからリスキリングへの関心が高まり、株式市場でも関連銘柄に注目が集まりました。

リスキリング関連銘柄として2023年に株価が大きく上昇したのが、プログリット<9560>です。英語学習を支援するコーチングサービスを提供しています。

プログリットの株価は、経済産業省が企業で働く人を対象に転職を目的とした学び直しを支援する、との材料で6月に上昇しました。1対2の株式分割を月末に控え、20日には7,500円まで上昇して上場来高値を更新。昨年末の株価は735円だったので、2023年初のテンバガー(10倍株)となりました。

AIの進化やビッグデータ、IoTなどにより、仕事のDX化や自動化が進んでいます。これにより、従来の仕事がAIや機械に置き換えられる可能性が高まっていますが、その一方で、DX化に対応できる高度な知識や技術を持った人材が不足しており、リスキリングが急務です。

少子高齢化が進む日本でリスキリングは重要なテーマとなっているので、2024年以降も息の長いテーマになると考えられます。

(選・山下耕太郎

MBOによる非上場化が増加

・大正製薬ホールディングス<4581>

MBO(経営陣が参加する自社買収・非公開化)が、増勢を強めている。ブルームバーグの調べでは2023年のMBO総額は8700億円超と、2022年の約2.7倍に上るという。確認可能なデータで過去最大規模に及び、その増加率は世界全体の50%を大きく上回るとされる。

MBOの目的は、非公開化により経営の自由度を得て、業態の構造改革を実現することだと説明される。東京証券取引所の「企業価値向上」への呼びかけが、MBO増加の一因とする見方もある。さらには、その背景にアクティビスト(物言う株主)の存在も指摘される。

2023年にMBOを発表した大手企業のひとつに、大正製薬ホールディングス<4581>がある。

創業家出身で副社長の上原茂が代表取締役社長を務める会社が、2024年1月15日までに1株当たり8,620円(24日終値より約5割高)でTOB(株式公開買い付け)を行う。普通株で66.57%を上回ることが成立条件だ。創業家も株式放出の意向を示している。

MBOによって企業価値拡充に成功するか否かは時間の経過を待たねばならないが、敢えて言えば、大正製薬ホールディングスの非公開後の動きに注目したい。

製薬業界に明るいアナリストは、こう解説する。「傘下の大正製薬は『リポビタンD』や『パブロン』など大衆薬を製造している。ドラッグストアなど店頭販売が主力だが、その軸足を(ネット)通販に移そうと考えている。アジア市場での同業他社のM&Aも視野に入れており、経営の自由度が不可欠」

私はこのMBOについて、「資金需要に対して口うるさい、一筋縄ではいかない金融機関が背後についた」ことに興味を覚える。MBOに必要な資金は7000億円超。国内では過去最大規模だが、その発表時点で「三井住友銀行からの借り入れ」が決まっていた。お墨付きのある日本最大級のMBOなのである。

(選・千葉 明

[執筆者]かぶまど編集部
かぶまど編集部
無防備なまま株式市場に参加して大切なお金をなくしてしまう人をひとりでも減らしたい──そんな思いから、未来の株価や相場を予測するのではなく、過去の事例やデータといった「普遍的な事実」に焦点を当てた記事を発信します。同時に、株初心者の方や、これから株を本気で始めようとしている方にもわかりやすい解説を心がけています。
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