連日の急騰で話題の「ミーム株」 その実態と注意すべきポイントとは

石津大希
2021年8月5日 8時00分

《アメリカでは、株式市場に参入したばかりの若い投資家が増えています。株式投資への知識がまだ少ない彼らが情報源にするのが、SNSやインターネット掲示板。ここで注目を浴びた「ミーム株」が、いま、株式市場に波乱を巻き起こしています》

ミーム株とは?

ミーム(meme)とはインターネットを通じて一気に拡散していく話題や流行などを指す言葉で、ミーム株とは、TwitterなどのSNSやインターネット掲示板によって情報が拡散され、大きく注目されるようになった銘柄を指す。

そんなミーム株の特徴は主に次の2つが挙げられる。

  • 株価が短期的に大きく上昇・下落する
  • 売買主体が個人投資家である

ミーム株はマーケットの注目を大きく集める銘柄で、短期的に出来高が急増し、値動きは荒くなる。しかし、話題が過ぎ去った直後は急落する傾向が強い。

また、ミーム株の主な取引主体は個人投資家である点も特徴だ。特に、個人投資家の中でも短期志向が強く、一時の話題性のみで売買するケースが多く見受けられる。

話題をさらったミーム株

では、具体的にどのような銘柄がミーム株であるといえるのだろうか。2021年の代表的なミーム株を2つ紹介しよう。

・ゲームストップ<GME>

ゲームストップ<GME>は、ゲームショップを展開するアメリカ企業。近年はEコマースの普及で実店舗経営が不調になり、株価は低迷していた。

しかし、アメリカのインターネット掲示板「Reddit-wallstreetbets」で話題となり、個人投資家の間で買い注文が殺到。2021年1月初旬時点では30ドルだった株価が、同27日には300ドルを突破するなど、個人投資家の結託力が話題となる一方、相場の大きな波乱要因ともなった。

〈参考記事〉ゲームストップ事件のロビンフッドと、その急成長を支える「HFT」

およそ半年後の6月末には株価は200ドルまで低下しており、急騰・急落をたどったミーム株の代表格といえる。

・AMCエンターテインメント・ホールディングス<AMC>

AMCエンターテインメント・ホールディングス<AMC>は、北米で300以上の映画館を運営している持ち株会社だ。

新型コロナウィルスの影響で映画館への客足が途絶え、売上高が急激に低下したが、ゲームストップと同じくインターネット掲示板「Reddit-wallstreetbets」で話題に。2021年6月2日の終値は、前日終値比でなんと90%以上も上昇。年初来上昇率は3000%となり、まさにミーム株の教科書的な値動きを見せた。

ミーム株の注意点

ミーム株は株価が短期間で大きく上昇するため、「うまく乗れたらテンバガーも夢じゃない!」という期待を抱く人も多いだろう。

ゲームストップやAMCエンターテインメントが注目されたのもアメリカのインターネット掲示板がきっかけであるため、普段からSNSや掲示板で情報収集している人なら、次なるミーム株をいち早く予測して、大きな利益を手にすることも夢ではないかもしれない。

ただし、ボラティリティー(株価の変動率)が非常に大きいだけに、もし手を出すにしても、より慎重な注意が必要になる。

ファンダメンタルズ分析は通用しない

ミーム株の株価はもっぱら話題性によって変動する。つまりは市場の気分次第ということであり、その値動きにファンダメンタルズ分析を用いた「根拠」はない。そのため、基本的に「過熱状態」であることを認識した上で取引することが重要だ。

また、ミーム株は株価上昇のスピードも速いが、下落するときも一瞬だ。数日にわたって徐々に下がる場合もあるものの、たった数日で30%以上の大幅下落を見せることも珍しくない。

〈参考記事〉次の波はいつ来るの? 急騰狙いの投資がうまくいかない理由

ミーム株を手がけるのであれば、「◎%上昇したら売却する」といった出口戦略を事前にしっかりとイメージすることが大切だ。

機関投資家もミーム株を見ている

ミーム株を売買するのは主に個人投資家だが、機関投資家のポジションにも影響を与えることがあるため、マーケット全体が注目している。

大半の機関投資家はミーム株の取引を敬遠しているが、なかにはミーム株の下落に賭け始めている機関投資家もいるようだ。そうした動きが、また新たな株価形成に繋がらないとも言えない。

そもそも「根拠」を呼べるものがない状況で株価が上昇するため、ミーム株にまつわる情報には常に目を配っておくべきだろう。

ギャンブルだと心得よ

ミーム株はある日急騰し、予期せぬタイミングで急落する。そこに、合理的な分析は全く通用しない。したがって、これは株式投資ではなく「ギャンブル」なのだと割り切ることができるのであれば、その波に乗ってみるのも一興かもしれない。

だが、そもそも株式投資にリスクはつきものだ。企業業績や経済動向などの根拠に基づいた慎重な投資判断を下したとしても、それでも損失を出してしまうことはある。ましてや、単なる話題性や気分だけで株価が大きく乱高下するとなれば、そのリスクは「確実」なものだと言ってもいいだろう。

大きな話題になると「買えばよかった!」「自分も稼ぎたい!」と思うのが投資家心理だろうが、決して、いきなり大きな資金を投じることのないように注意してほしい。

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[執筆者]石津大希
石津大希
[いしづ・だいき]外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。
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