株式市場でも話題の「メタバース」 期待される理由と注目の関連銘柄は?
《フェイスブックの社名変更で一躍注目を浴びた「メタバース」。株式市場でも投資テーマとして注目されており、関連銘柄とされる銘柄が急騰するなど投資家の関心を集めています》
メタバースとは?
そもそもメタバース(Metaverse)とは、「〇〇を超える」を意味する「メタ(meta)」と宇宙の意味の「ユニバース(universe)」を組み合わせて作られた造語で、大規模な仮想空間を指します。
米フェイスブック<FB>が2021年10月に社名を「メタ・プラットフォームズ」に変更し、マーク・ザッカーバーグCEOが今後はメタバースに注力すると宣言して話題となりました。また、米ウォルト・ディズニーのボブ・チャペックCEOもメタバースへの参入を準備していると述べています。
メタバースの空間上では、参加者はインターネットを介してショッピングやコミュニケーション、ライブコンサートへの参加、旅行といった様々な活動を、現実世界と同様の臨場感で体験することができます。参加者は「アバター」と呼ばれるキャラクターのような分身を自由に選んで、自由なファッションやメイクを身にまとい、参加者同士での交流も可能です。
異業種からの参入も相次ぐ
メタバースには異業種からの参入も相次いでいます。
たとえば、ANAホールディングス<9202>はスマホやタブレットからアクセスできる仮想空間での旅行プラットフォーム「SKY WHALE」の開発や運営を手掛けるANA NEOを2021年5月に設立。「SKY WHALE」ではバーチャル旅行を楽しめるほか、空港を模した仮想空間のモールでショッピングなどのサービスを利用することができるそうです(2022年にサービス開始予定)。
従来も、オンラインゲームで参加者同士でのミニゲームやチャットでのコミュケーションは可能でした。大ヒットゲーム「ファイナルファンタジー14」「あつまれ どうぶつの森」などで交流を楽しんだ方も多いのではないでしょうか。
現実世界にリンクした仮想空間
では、なぜいまメタバースの普及が進んでいるのでしょうか?
メタバースの目指す仮想空間では、参加者同士のコミュニケーションにとどまることなく、ショッピングやアイテムの売り買いなどを通じて、より現実世界にリンクした経済活動が可能となることから、今後も企業などの参入が相次ぐと見込まれています。
コロナ禍でデジタル上でのコミュニケーションへのシフトが一気に進んだほか、ネットショッピングの利用の加速、スマホなどデジタル端末の性能の進化によって、メタバースが広がるために必要な素地が整ってきていることも背景となっています。
メタバースの今後の課題
このようにさまざまな分野での利用が期待されているメタバースですが、今後に向けた課題もあります。
メタバースのリアルな体験はスマートフォンによるAR(拡張現実)アプリでも可能ですが、やはり、より臨場感のある体験にはVRゴーグルなどの専用のハードウェアの利用が求められます。VRゲームやコンテンツの普及で数年前よりは手頃になってきましたが、高性能な端末は高価なことが多く、一般消費者にはハードルが高いと言えます。
また、ヘッドセットの付け外しなどの手間や、VR空間を視聴することによる目の疲れ、いわゆるVR酔いなどの問題もあります。
ちなみに、米アップル<AAPL>はスマートフォンに代わる次世代のハードウェアとしてウエアラブルのゴーグルやVRヘッドセットなどを開発しているとみられ、期待されています。
そのほかにも、リアルなコンテンツの制作に時間・資金がかかるといった問題や、クレジットカード決済などの経済活動が増えることによるセキュリティや法整備をどう担保するかといった問題も、今後の課題となりそうです。
メタバース関連の注目銘柄
このように、メタバースはこれから長期的に投資テーマとして注目される可能性があります。さらに、メタバースは半導体やエンタメ、ゲーム、旅行など様々な業界で今後キーワードとして注目されそうです。
メタバースで盛り上がる関連業界
米半導体大手のエヌビディア<NVDA>は2021年12月7日、商用展開を開始したメタバース開発プラットフォームの日本での導入支援にSCSK<9719>やNTT(日本電信電話<9432>)、伊藤忠テクノソリューションズ<4739>など24社が参画すると発表しています。
また、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>、カプコン<9697>などの大手ゲーム会社なども、コンテンツ開発力やこれまでに培ったキャラクターのような知的財産権(IP)、ユーザー層といった強みを生かすことで、メタバースの広がりによる恩恵が大きいとされています。
さらに、メタバース空間を構築するためのサーバーや端末などには、当然ながら半導体が多く用いられます。よりリアルな仮想空間の実現のためには演算能力の高い半導体チップや高性能なメモリーなどが不可欠になるため、東京エレクトロン<8035>、アドバンテスト<6857>、レーザーテック<6920>、SUMCO<3436>などの半導体関連銘柄にとってもプラスとなるでしょう。
断然注目は、あのソニー
そんなメタバース関連銘柄のなかでも注目したいのが、ソニーグループ<6758>です。
ソニーは2016年に「プレイステーションVR」を発売しており、さらに2022年1月5日、次世代機であるプレイステーション5用の新型「プレイステーションVR2」を正式発表しました。この新型VRシステムは解像度や視野角などあらゆる点を強化して、プレイステーションらしいユニークな体験を実現できるとされています。
また、ソニーが出資している米エピックゲームズが手がけるオンラインゲーム「フォートナイト」は全世界で3億5000万人のユーザーを抱えています。そのゲーム内ではアリアナ・グランデや米津玄師が仮想空間でライブを行って話題となりました。そのほか、映画のプロモーションやアイテムの売買なども活発に行われています。
このようにソニーは、グループ全体でメタバースに必要なハード、ユーザー、コンテンツなどについてすでに強みを持っているのです。
代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏はソニーの存在意義(Purpose)を「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」と定義しています。メタバースの広がりはソニーの「半導体」「ゲーム」「音楽」「映画」などの事業分野と相性が良いため企業成長の大きな柱となりそうです。
注目度が高いだけに注意も必要
幅広い業界で注目が集まるメタバースですが、投資家の関心が高いこともあって、関連銘柄には多額の短期資金が流入して株価が急騰することも多くなっているため、実際に投資するにあたっては注意が必要です。
・シャノン<3976>
マーケティングなどのソフト開発を手がけるシャノン<3976・マザーズ>は、2021年10月末にメタバース型のバーチャル展示会開催サービスを企業向けに開始すると発表し、株価が急騰。11月4日には2,710円の年初来高値をつけましたが、その後は資金の逃げ足も早く、12月には1,400円台まで売られて、いわゆる「行って来い」の株価推移となりました。
・シーズメン<3083>
アパレル小売のシーズメン<3083・ジャスダック>は、2021年12月初旬にファッションブランドのメタバース参入支援事業を開始すると発表。10月にはメタバースのアバター向けなどのアパレルブランドを立ち上げるなど、メタバース関連として物色されました。株価は、10月安値の280円から11月高値は2,540円と急騰し、乱高下する場面がありました。
今後もいろいろな企業がメタバースに参入するとみられますが、短期での株価乱高下も想定されることから、そうした材料をもとに手がける場合には「そういうものだ」と割り切って、機敏なスタンスを取る姿勢が必要でしょう。