日経平均株価はこれからどうなる? 指数を動かす大物たちに要注意
日経平均株価は「平均」ではない
2021年2月15日、日経平均株価はついに3万円を突破しました。新型コロナウイルスはいまだ経済に悪影響を与えているものの、ワクチン接種が始まるなど今後の景気回復が期待されるため、市場も強気になったのではないでしょうか(その後しばらく調整が続いていますが)。
日経平均株価とは「Nikkei 225」とも呼ばれるように、225の銘柄から構成される株式指数です。構成銘柄は、東証1部に上場する約2,200銘柄から選ばれ、業界による偏りがないように選定されています。ただし、自動車関連が10銘柄に対してゴム業界が2銘柄など、業界の規模による差はあります。
また、225銘柄の「平均値」が日経平均株価として公表されますが、各銘柄の株価を単純に平均するわけではありません。1株あたり数百円から数万円までの銘柄があるため、単純平均では安価な銘柄の影響が小さくなってしまうからです。
そこで「みなし額面」を使った補正がかけられます(「額面」はすでに廃止されていますが、かつてあった株券には額面が記載されており、ここから「みなし額面」が派生しました)。補正の計算式は次のとおりです。
- 株価 ×(50円 ÷ みなし額面)=日経平均株価に採用される株価
これは、各銘柄の額面を50円に統一した場合の株価が採用される、ということです。したがって、みなし額面が50円の銘柄の場合は、(株価×1となるため)現在の株価がそのまま日経平均株価の算出に使われますが、みなし額面が500円なら、日経平均株価に採用されるのはその10分の1の株価です。
各銘柄のみなし額面は、日経平均株価に関する様々なデータが掲載されている「日経平均プロフィル」というサイトで確認することができます。それをもとに、いくつかの銘柄の補正株価してみます。
コード | 銘柄 | 株価 | みなし額面 | 補正株価 |
1333 | マルハニチロ | 2,676円 | 500円 | 267円 |
7203 | トヨタ自動車 | 8,362円 | 50円 | 8,362円 |
4503 | アステラス製薬 | 1,732円 | 10円 | 8,660円 |
マルハニチロやアステラス製薬のように、みなし額面の違いによって、日経平均株価に採用される株価は実際の株価から大きく変わることがあります。
そして日経平均株価は、全銘柄の補正株価の合計を「除数」で割ることで算出されます。この「除数」は必要に応じて変動し、2021年3月現在の除数は27.769です。
- 日経平均株価=225銘柄の補正株価の合計 ÷ 除数
なお、日経平均株価はその名の通り、日本経済新聞社が算出・公表しています。みなし額面や除数の詳しい説明などは、同社は発表している「算出要領」をご参照ください。
日経平均株価を動かす「大物」たち
このように「平均株価」と言っても単純平均ではなく、株式市場の動向を示す指数としてより適正値になるような算出方法が採られています。ただ、それでも大物銘柄の影響をなくせるわけではありません。
日経平均株価を3万円と仮定すると、補正株価の合計は約83万3000円(3万円×除数27.769)ですが、補正株価が高いほど日経平均株価への影響度(=寄与度)が高くなります。したがって、どうしても株価が高い銘柄(値がさ株)の影響は大きくなります。
日経平均株価の算出上、それぞれの銘柄がどの程度のウェートを占めているかについても、先ほどの「日経平均プロフィル」に資料が掲載されています。それによると、2021年2月末現在のウェート上位は以下のような10銘柄です。
コード | 銘柄 | 業種 | セクター | ウェート |
9983 | ファーストリテイリング | 小売業 | 消費 | 13.05% |
9984 | ソフトバンクグループ | 通信 | 技術 | 7.38% |
8035 | 東京エレクトロン | 電気機器 | 技術 | 5.41% |
6954 | ファナック | 電気機器 | 技術 | 3.27% |
6367 | ダイキン工業 | 機械 | 資本財・その他 | 2.58% |
2413 | エムスリー | サービス | 消費 | 2.51% |
9433 | KDDI | 通信 | 技術 | 2.45% |
6857 | アドバンテスト | 電気機器 | 技術 | 2.18% |
4063 | 信越化学工業 | 化学 | 素材 | 2.16% |
6098 | リクルートホールディングス | サービス | 消費 | 1.97% |
1位から3位までのわずか3社で、ウェートが25%を超えていることがわかります。つまり、日経平均株価の4分の1は、この3銘柄で構成されているということであり、これらの株価が大きく動けば、それだけ日経平均株価も動くことになります。
・ファーストリテイリング<9983>
今では誰もが知っている「ユニクロ」は1984年、広島に1号店が開店しました。運営するファーストリテイリング<9983>は1997年に東証2部に上場したのち、1999年に1部に指定替えとなり、事業拡大のスピードが加速します。
事業全体の店舗数は2000年に400店を突破し、日経平均株価に選定された2005年には1,200店、2009年には2,000店を超えます。近年でも成長の勢いは衰えておらず、2016年8月期末の3,160店に対し、2020年8月期末には3,630店を展開しています。
海外展開にも積極的で、2001年にロンドンで「ユニクロ」の海外1号店をオープンしたのち、中国や東南アジアにも展開しました。「ユニクロ」の海外店舗数は2020年8月期末時点で1,439店舗。
そんなファーストリテイリングの株価はコロナ感染拡大以降の上昇が激しく、2019年末には51,000円台を推移していましたが、2020年3月に40,000円まで下落した後は大きく伸びて、日経平均株価が3万円を突破した2021年2月には10万円を超えました。
なお、みなし額面は50円のため、現在株価がそのまま日経平均株価の算出に採用されます。
・ソフトバンクグループ<9984>
ソフトバンクグループ<9984>の現在株価は10,000円前後ですが、みなし額面が25/3円(3分の25円=約8.33333円)ですので、日経平均株価の算出に採用される補正株価はおよそ6倍となります。
傘下には携帯電話事業のソフトバンク<9434>やヤフーやLINE、ZOZOのほかファンド事業会社も抱え、もはや投資会社です。
同社の歴史は1970年代の翻訳機の開発から始まりましたが、80年代にはすでに事業投資を進めており、システム開発や出版など守備範囲は多岐にわたります。東証1部上場となった1998年のわずか2年後には時価総額ランキングでトヨタ自動車に次ぐ2位となり、圧倒的な存在感を見せつけます。
近年では10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドを運営するなど、一体どんな事業を展開している会社なのか、ひと言ではとても言い表せません。
株価は、2017年から2020年2月まで4,000~5,000円台で推移していましたが、コロナ禍での経済回復期待によって急上昇し、2021年2月に1万円を突破。国内企業の中ではAI投資に最も力を入れており、その成果も期待されています。
・東京エレクトロン<8035>
BtoB企業であるため認知度はファーストリテイリング、ソフトバンクグループに劣りますが、先端分野では欠かせない日本を代表する企業です。
東京エレクトロン<8035>は、半導体製造装置や半導体表面のホコリ・不純物を除去する装置を生産しており、半導体製造装置の世界シェアは10%を誇ります。1960年代に半導体製造装置の商社としてスタートし、70・80年代にかけて各種装置の国産化を進め、90年代以降は世界的なメーカーに成長しました。
東証2部上場からの1部昇格は80年代に達成し、日経平均株価には2000年に採用されました(みなし額面は50円なので補正なし)。ここ3年の株価は2万円前後を推移していましたが、2020年3月以降に急上昇を遂げ、2021年2月には46,000円を突破しました。
半導体シェアはアジア各国に追い抜かれましたが、製造装置では日本・アメリカのシェアが依然高く、今後も成長が期待される分野です。
日経平均株価はこれからどうなる?
日経平均株価を牽引する3社は小売・投資・半導体の各分野で日本をリードする企業です。海外にも進出しており、世界企業とも言えます。
株価の値動きを見ると、3社ともコロナ禍以前は平坦な動きでしたが、2020年3月のコロナショックで急落して以降は上昇し続けました。日経平均株価の3万円突破は、こうした値動きを反映したものとも考えられるでしょう。
今後、日経平均株価はどうなるのか。3万円を回復し、4万円を目指すのか? これら3社の値動きにも要注意です。