2大人気企業・ソニーとホンダはどこが違う? その株価と人気の行方を追う
株の銘柄選びに「なんとなく」は禁物です。そうとわかっていても「たぶん良いと思う」「きっと悪くない」と判断してしまうのは、「人気企業」という目に見えないラベルを、黄門様の印籠のごとく感じているからかもしれません。
しかし、企業として人気なら株価も上がるのでしょうか? 人気企業と株価の実態を調べてみました。
就職したい企業ランキング
ひとくちに「人気企業」と言っても、その「人気」の実態はさまざまです。そこで今回は、大学生へのアンケートをもとに発表されている「就職したい企業ランキング」に着目します。
就職情報サイトの「マイナビ」では、1978年から毎年、全国の大学3年生と大学院1年生を対象にした調査を行っています(参考:https://saponet.mynavi.jp/)。若者たちが自分の将来を託そうと思う企業ですから、ここにランクインするのは間違いなく「人気企業」と言えるでしょう。
最新の人気上位10社の顔ぶれ
まずは、2018年4月に発表された最新のランキングを見てましょう。これは、2019年3月に大学卒業予定の学生を対象に行われた調査がもとになっています(以下、本記事では対象学生の卒業年ではなく、ランキングの調査・発表年で表示します)。
文系総合ランキング
1位:全日本空輸(ANA)<ANAホールディングス・9202>(前年1位)
2位:日本航空(JAL)<9201>(前年3位)
3位:東京海上日動火災保険<東京海上ホールディングス・8766>(前年5位)
4位:JTBグループ(前年2位)
5位:オリエンタルランド<4661>(前年12位)
6位:エイチ・アイ・エス(H.I.S.)<9603>(前年7位)
7位:ソニー<6758>(前年38位)
8位:損害保険ジャパン日本興亜<SOMPOホールディングス・8630>(前年9位)
9位:伊藤忠商事<8001>(前年10位)
10位:資生堂<4911>(前年11位)
理系総合ランキング
1位:ソニー<6758>(前年1位)
2位:味の素<2802>(前年2位)
3位:明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)<明治ホールディングス・2269>(前年4位)
4位:カゴメ<2811>(前年8位)
5位:サントリーグループ(前年5位)
6位:森永乳業<2264>(前年21位)
7位:NTTデータ<9613>(前年11位)
8位:資生堂<4911>(前年3位)
9位:トヨタ自動車<7203>(前年6位)
10位:アサヒビール<アサヒグループホールディングス・2502>(前年9位)
文系で航空会社が1−2フィニッシュを決めているところも大いに気になりますが、同じくらい目を引くのが、2年連続で理系トップのソニー<6758>ではないでしょうか。文系でも、昨年の38位から7位へと大幅ジャンプアップしています。
人気と株価の関係——ソニーの場合
たしかにソニーと言えば、「人気企業」の代名詞のような存在のひとつ。過去の同ランキング(理系総合)を振り返ってみると、ソニーの順位は次のように推移していました。
- 2002年:1位
- 2003年:1位
- 2004年:2位
- 2005年:4位
- 2006年:8位
- 2007年:20位
- 2008年:3位
- 2009年:1位
- 2010年:5位
- 2011年:2位
- 2012年:4位
- 2013年:11位
- 2014年:11位
- 2015年:36位
- 2016年:10位
- 2017年:1位
- 2018年:1位
さすがのソニーといえどもトップ10圏内にとどまれなかった年が4回あり、その人気は決して盤石でないことがわかります。
株価が下がれども人気は下がらず
では、この間のソニーの株価がどうだったのか、ランキングの推移とあわせて見てみましょう。
2000年から、株価ははっきりと右肩下がりです。2002年の前半は「底からちょっと回復しようとしていた」と言えなくもありませんが、学生が就職したい企業ランキングの首位を取れる状況とは、とても思えません。株価はこの年の後半から再び下落しますが、順位は翌年も1位のまま。
実は、この頃に調査対象となった学生さんは、初代プレイステーションが発売された年に中学生だった、ドンピシャな世代。ブランド力が株価や業績を上回った……のかもしれません。
冬の時代を乗り越えての復活
その後は、株価の下落を追いかけるようにして人気ランキングの順位も下がっていき、2007年にはトップ10圏外(20位)に陥落。2009年にいったん首位を奪還するものの株価は下げていき、2013年から3年連続でトップ10に入れなかった「ソニー、冬の時代」がやってきます。
株価では、2012年11月30日に801円の最安値をつけ、順位のほうは、2015年のランキングで36位まで落ちています。その頃には株価は上昇に転じているのですが、人気はなかなか回復せず、2017年になって一気に1位へと返り咲きました。
人気と株価の関係——ホンダの場合
就職したい企業ランキングから、もう1社ご紹介したいと思います。ソニーが1位だった2002年のランキング(理系総合)で3位につけていた本田技研工業(ホンダ)<7267>です。こちらも、日本を代表する「人気企業」に名を連ねそうな気がするのですが……。
- 2002年:3位
- 2003年:3位
- 2004年:5位
- 2005年:6位
- 2006年:5位
- 2007年:9位
- 2008年:10位
- 2009年:11位
- 2010年:14位
- 2011年:10位
- 2012年:16位
- 2013年:29位
- 2014年:19位
- 2015年:15位
- 2016年:26位
- 2017年:16位
- 2018年:33位
2006年までは毎年いい順位にいたのですが、2009年にトップ10から外れて以降は、一度だけ復帰したものの、その後は戻ってこられていません。
人気復活には株価が足りない?
では、この間のホンダの株価を見てみます。
ソニーのようにどんどん下落していったわけでもなく、1,500〜4,500円の間を小刻みに行ったり来たりしていることがわかります。
それに反して、人気ランキングの順位は順調に下がってしまいました。ここ数年はすっかりトップ10から姿を消し、株価は少しずつ上がっている気配は感じられるものの、失われた人気を回復させるほどには至っていないようです。
かつての輝きは、いま
このように見てみると、人気企業だから株価が伸びるというよりも、むしろ、株価の上げ下げから少し遅れて順位が変動している、と言えないこともありません。
もちろん、学生は株価だけを見て企業を選んでいるわけではないでしょうし、学生に人気だからと言って、「いい銘柄」とイコールでないことは言うまでもありません。
しかし、もはや何年前の情報か定かでない「人気企業」の固定観念で銘柄を判断してしまったり、「かつて憧れた企業の消えかけた栄光」に追いすがったりしていては、無用なリスクになりかねません。イマドキの人気ランキングを知っておけば、手痛い損失を防いでくれることもある……かも?