11月の株価はどうなる? 勝ち月に強い銘柄とアメリカ大統領選挙で上がる株

岡田禎子
2024年11月1日 12時00分

《11月は七五三、12月はクリスマス1月はお正月……と、月によって誰もが思い浮かべる共通のイメージがあるように、実は、株式投資にも「◎月といえば▲▲▲株」といったお決まりの銘柄があります。では、11月に恒例の上昇しやすい銘柄とは?【今月の株価はどうなる?2024】》

11月に上昇しやすい銘柄は?

11月は月末に向かって株価が上昇しやすい月です。

上旬から中旬にかけては3月期決算企業の中間決算発表が本格化するため、なかなか動きにくい地合いです。しかし、中旬から下旬にかけては年末の配当取りに向けた動きや年末商戦への期待の高まり、配当支払い効果などで、株価は上昇しやすくなります。

そんな11月相場で株価が上昇しやすいのは、どのような銘柄でしょうか?

過去10年で、11月の勝率が高かった銘柄を調べてみました。9勝1敗という素晴らしく好成績だった日経平均株価よりもさらに上をいく銘柄の顔ぶれを見ると、機械、電気機器のグローバル企業が並び、さらに建設、食料品などが続きます。

11月のアノマリーで上がる株

11月に強い銘柄として広く知られているのが、ミネベアミツミ<6479>です。過去10年は10勝無敗。前月比の騰落率は2020年が+16.01%、2021年が+4.35%、2022年が+1.77%、2023年は20.76%で、いずれも好成績をマークしています。

この株価上昇のポイントとしては、成長性の高さと中間決算の決算発表とがあげられます。

ミネベアミツミは、極小ベアリングで世界シェア6割、モーターやアナログ半導体も手がけるグローバル企業です。精密機械加工技術やモーター、センサー技術において世界トップレベルの技術力を持ち、自動車や航空宇宙、医療機器、家電など多岐に渡る産業に製品を供給しています。

安定的な収益に加えて、2017年のミツミ電機との経営統合など戦略的なM&Aにより、11期連続で過去最高売上高を更新するなど高成長を維持しています。

同社は11月の初旬に決算発表を行いますが、過去、中間決算で上方修正を出すことが多く、好業績が素直に株価上昇につながっていると言えるでしょう。

残念ながら前期(2024年3月期)の中間決算は下方修正となったものの、日立パワーデバイスの買収というサプライズもあって、決算発表後はやはり大きく株価上昇となったのも記憶に新しいところです。

今年8月には今期(2025年3月期)の業績予想について、営業利益を1000億円から1030億円(前年同期比+40.1%)へ上方修正しました。高い市場コンセンサスに届かなかったことで株価は失望売りとなりましたが、それもまた期待の裏返しと言えます。

足元では、自動車の電装化などが追い風となって、10月以降は大手証券などのアナリストが目標株価を上方修正しています。

アメリカ大統領選で株価はどうなる?

4年に一度の大イベント、アメリカ大統領選挙が11月5日(現地時間)に行われます。

アメリカ史上初の女性大統領を目指すハリス氏と、史上2人目となる返り咲きを狙うトランプ氏。その行方は金融・株式市場にも大きな影響を及ぼすため、世界中の投資家が固唾を呑んで見守っています。

選挙戦終盤となっても支持率は両者拮抗しており、どちらが勝利するのかは全く不透明な状況です。ただ、過去2回の大統領選では、選挙当日から年末までは共和党・民主党どちらが勝っても株価は大きくプラスとなりました。

例えば、大統領選から年末までのS&P500種株価指数は、共和党のトランプ氏が勝利した2016年は4.6%、民主党のバイデン氏が勝利した2020年は11.5%の上昇となっており、いずれも絶好の投資チャンスであったことがわかります。

業種別では、金融株とエネルギー株の上昇がS&Pを大きく上回る上昇率でした。これらの業種は両党の政策の違いが鮮明で、選挙結果が大きな影響を与えるセクターであったため、投資家は選挙前の投資を手控えたからだと考えられます。

今回も、ハリス氏は「銀行規制強化」「EV、再エネ、水素などの政策支援」、トランプ氏は「金融規制の緩和撤退」「国内での石油・ガスの増産&クリーンエネルギーの政策支援の後退」と政策の違いは明らかです。

日経平均株価も、2016年が11.3%、2020年が17.8%の上昇となっています。

ただ2016年は、当日にトランプ氏優勢の報が入ると、日経平均株価は1000円を超える下落となりました。翌日には大きく値を戻し、その後は年末高へと続いたのですが、トランプショックとして記憶に残っている人も多いはず。

今回も大接戦が予想されるため選挙から数日間は混乱する可能性が大で、注意が必要です。

アメリカ大統領選で上がる株は?

ハリス氏 or トランプ氏のどちらが勝利しても上昇が期待できる日本株として、住宅関連銘柄が挙げられます。

選挙戦ではハリス氏が、初めて住宅を購入する人を対象に最大2万5000ドルの支給を行う方針を打ち出したほか、トランプ氏も住宅購入支援の検討を示唆しています。FRBによる継続的な利下げ観測もあり、住宅関連銘柄には追い風となると見られているからです。

アメリカに進出している住宅メーカーでは、売上高でアメリカ事業の比率が4割を超す住友林業<1911>や、積水ハウス<1928>、大和ハウス<1925>、外壁材メーカーのニチハ<7943>などが挙げられます。

世界的セールイベントで上がる株は?

11月は、ブラックフライデーとサイバーマンデーという世界的なセールイベントにも注目です。

ブラックフライデーは、毎年11月の第4木曜日(感謝祭の翌日)に行われる大規模なセールイベント。アメリカを中心に始まったイベントですが、今では世界的に広く認知されています。

この日を皮切りに、小売業者は大幅な割引や特別プロモーション、お得なキャンペーンを行い、消費者にとっても、投資家にとっても、待ちに待った年末商戦スタートとなります。

感謝祭の次の月曜日はサイバーマンデーです。

実売店を見てまわって欲しいものを狙い定めてネットで買う、または、買い逃したものをネットで手にいれる、という消費者の購買行動を狙って、オンラインショップが一斉に大セールを敢行。小売業者の売上が年間を通じて最も多い日のひとつとなっています。

これらイベントは年末商戦を占うバロメータでもあり、人気商品が出てくれば個別株にも影響を与えます。

全米小売協会(NRF)は、今年11月から12月の年末商戦の売上高が9795億〜9890億ドル、前年比で最大3.5%増になると予想。その一方で、伸び率は6年ぶりの低水準になる、と予測しています。家計は良好ながら価値を見出せるものだけ買う、といった節約志向となりそうです。

こうした予測を超えて、投資家の期待に応えるようなセールスとなるのかどうか。まずは、それぞれの盛り上がりをチェックしておきたいところです。

そして日本でも、ブラックフライデーをうたってクリスマス前の大型商戦が行われます。

関連銘柄としては、早々にブラックフライデー還元祭を始めたウエルシア<3141>やイオン<8267>、楽天グループ<4755>、エービーシー・マート<2670>、ビックカメラ<3048>などでしょうか。

11月の日経平均株価はどう動く?

個別株に投資するには、相場全体の流れもしっかり掴んでおきましょう。過去のチャートを確認すると、11月の日経平均株価は月末に向けて右肩上がりに上昇しやすい傾向が見て取れます。

これは、月の前半から中旬にかけては3月期決算企業の中間決算発表が本格化するため動きにくいものの、感謝祭以降は日米の年末商戦への期待や中間配当支払いなどにより需給が好転するためです。

今年は6日にアメリカ大統領選挙の投開票が、さらに6日から7日にかけてはFOMCが開催されます。

選挙は大接戦が予想され、数日は相場が不安定になるかもしれません。FOMCでは、FRBが継続的な利下げを行うのかが注目。市場では0.25%の利下げがコンセンサスとなっていますが、結果次第では為替、株式市場に大きく影響を与える可能性があります。

日本の年末商戦に期待

年間でも有数の〝勝ち月〟である11月相場の傾向と、11月に株価が上昇しやすい銘柄をご紹介しました。

もちろん、「恒例」だからといって今年も必ず上がるとは限りません。また、今年はアメリカ大統領選というリスクイベントがありますが、そうした不透明な環境下でも好パフォーマンスを出す銘柄はあります。

感謝祭を過ぎれば、いよいよ「クリスマス」「年末年始」。心踊る季節の到来です。日本では33年ぶりの賃上げ率5%台を受けて、消費の拡大も予想されています。年末高に向けた弾みとなるか……? 大いに期待したいところです。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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