夜間でも株取引ができるPTS 大きなメリットと注意すべき落とし穴

山下耕太郎 2020/10/01

《株の売買は日中にしかできないと思っていませんか?実は、夜間でも取引できる方法があります。それが取引所を介さない「PTS(私設取引システム)」です。証券口座を持っていれば誰でも取引できます》

夜でも株を買う方法

東京証券取引所では9:00~11:30、12:30~15:00までの計5時間しか取引できません。取引時間が限られていると何かと不自由ですよね。「日中、忙しくて取引できない」「保有株が夕方に決算を発表したけど、明日の株価はどうなるのだろう」といったニーズに対応できません。

朝9時前や午後3時以降でも取引できる「PTS」をご存じでしょうか? 2011年の東日本大震災のあと、多くの証券会社が撤退していましたが、株式市場が活況になるにつれPTSを再開する証券会社が増えています。

PTSとは

PTS(Proprietary Trading System)とは証券会社が運営する「私設取引システム」のことです。この仕組みを使うと、東京証券取引所(東証)などの証券取引所を通さずに、リアルタイムで株式を売買することができます。ただし、注文方法は値段を指定して注文する「指値注文」のみとなります。

いま使えるPTSは2つ

現在、日本で運営されているPTSには、ジャパンネクストPTSチャイエックスPTSの2つがあります。

ジャパンネクストPTSは、SBIジャパンネクスト証券が2007年に開始した日本初のPTS。夜間も取引できるのはジャパンネクストPTSだけです。また、2019年8月からは信用取引も利用できるようになりました。現在、SBI証券・楽天証券・松井証券の3社で利用できます(2020年9月現在)。

一方のチャイエックスPTSは、世界のPTS最大手の欧州チャイエックス社が2010年に開始したPTS。個人投資家が取引できるのは楽天証券のみです(2020年9月現在)。

いずれの PTSでも、証券会社に口座があれば特別な手続きなしで取引ができます。東証で買った株を PTSで売ることもできますし、PTSで買った株を東証で売ることもできます。

また、マネックス証券とauカブコム証券では、SOR注文でPTSでも約定機会を提供しています。SOR注文とは、株式取引において東京証券取引所とジャパンネクストPTSを自動で比較し、有利な条件での約定が見込まれる執行先を判定して発注する注文方法です。

PTSのメリットとデメリット

では、PTSを活用するメリットを見ていきましょう。

東証よりも取引時間が長い

PTSの最大のメリットは、東証よりも取引時間が長いことです。とくにジャパンネクストPTSでは、東証での取引が終了した後の夜間取引ナイト・セッション)が大きな強みです。

企業の決算発表会などのニュースは東証の取引時間が終わる15時以降に発表されることが多いのですが、東証ではそれを受けて売買することはできません。しかしPTSを利用すれば、当日中に取引が可能です。

各市場の取引時間は、以下の通りです。

東証の取引時間
  • 前場=9:00~11:30
  • 後場=12:30~15:00 
【ジャパンネクストPTS の取引時間】
  • デイタイムセッション(昼間取引)=8:20~16:00
  • ナイトタイムセッション(夜間取引)=16:30~23:59
【チャイエックスPTSの取引時間】
  • 8:20~16:00

ただし、証券会社によって以下のように取引時間が異なるので注意してください。

※マネックス証券とauカブコム証券はSOR注文で対応

東証よりも有利な価格で約定できる

PTSでは東証と異なる呼び値が設定されており、投資家にとって有利な価格での売買機会を提供しています。たとえば株価3,000円以下の場合、東証の呼び値は1円刻みですが、ジャパンネクストPTSでは0.1円単位で取引できるのです。

またSOR注文により、東証とPTSの取引時間が重なる時間帯では、東証よりも有利な値段で約定できる可能性があります。

信用取引ができる

2019年8月末、PTSでの信用取引が解禁になりました。ただし、日本証券業協会の規則により取引時間が9:00~11:30、12:30~15:00 となっています。ジャパンネクストPTSの夜間取引(17:00~23:59)など、PTS信用取引が取引できない時間もあるので注意が必要です。

PTSでの信用取引について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

(参考記事)PTSでの信用取引が解禁 メリットは? 株式市場と株価への影響は?

デメリットは流動性リスク

PTSのデメリットについて考えてみましょう。

東証よりも有利な値段で約定する可能性のあるPTSですが、なかには流動性が低い銘柄もあります。取引したい銘柄が取引できない、もしくは現在の価格から離れた価格でしか約定できないという「流動性リスク」があるのです。

PTSの今後はどうなる?

コロナ禍を受けて、東証に集中している株式取引のさらなる分散が進んでいます。

PTSの売買が市場全体に占める比率は、2020年4月に8%と過去最高を記録しました。新型コロナウイルスの拡大による相場急落をチャンスと見た個人投資家の参入が増えたことや、2019年に解禁された信用取引の利用拡大が後押しとなっているのです。

また、東証とPTSを比べより有利な価格で売買できる「SOR注文」を利用している個人投資家も増えています。市場に厚みがでれば機関投資家やHFT(高頻度取引)業者もPTS市場を重視し、流動性の拡大につながっていく

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[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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