夜間でも株取引ができるPTS 上手な活用法と注意すべき落とし穴

株の売買は日中にしかできないと思っていませんか? 実は、夜間でも取引のできる方法があります。それが取引所を介さない「PTS」という仕組みです。証券口座を持っていれば誰でも活用でき、2019年は注目を集めそうです。

夜でも株を買う方法

東京証券取引所では9時~15時までしか株を取引できません(11時30分〜12時30分は昼休憩)。しかし、取引時間が限られていると何かと不自由ですよね。「日中、仕事が忙しくて取引できない」「保有株が夕方に決算を発表したが、株価は明日どうなるのだろう」といったニーズに対応できません。

夜間取引ができる 「PTS」をご存じでしょうか。東日本大震災の後、証券会社の多くが撤退していましたが、最近少しずつ戻ってきています。そこで改めて、 PTSの仕組みとメリット・デメリットを解説したいと思います。

PTSとは

PTS(Proprietary Trading System)とは証券会社が運営する「私設取引システム」のことです。この仕組みを使うと、東京証券取引所(東証)などの証券取引所を通さずに、リアルタイムで株式を売買することができます。ただし、注文方法は値段を指定して注文する「指値注文」のみとなります。

いま使えるPTSは2つ

現在、日本で運営されているPTSには、ジャパンネクストPTSチャイエックスPTSの2つがあります。

ジャパンネクストPTS(JNX)は、SBIジャパンネクスト証券が2007年に開始した、日本で初めてのPTSです。国内外の大手証券会社を中心に20社以上の証券会社が参加していて、東京証券取引所に次ぐ国内第2位の市場規模となっています。

個人投資家が取引できるのはSBI証券、楽天証券、松井証券の3社です(2019年1月現在)。

一方のチャイエックスPTS(Chi-X)は、世界のPTS最大手の欧州チャイエックス社が2010年に開始したPTSで、個人投資家が取引できるのは楽天証券のみとなっています(2019年1月現在)。

  SBI証券 楽天証券 松井証券
ジャパンネクストPTS 8:20 ~ 16:00
17:00 ~ 23:59
8:20 ~ 16:00 8:20 ~ 15:30
17:30 ~ 23:59
チャイエックスPTS × 8:00 ~ 16:00  ×

いずれのPTSでも、取引きするには各証券会社に口座があれば特別な手続きは不要です。また、東証で買った株をPTSで売ることができますし、PTSで買った株を東証で売ることもできます。

※楽天証券は、2018年度中にジャパンネクストPTSの夜間取引の取り扱いを開始する予定。

PTSのメリット

では、PTSを活用するメリットを見ていきましょう。

東証よりも取引時間が長い

まず何と言っても、東証を経由した一般的な売買よりも取引時間が長いことがPTSのメリットです。特に、東証での取引が終了した後の夜間取引ができる点が大きな強みです。

東証の取引時間
  • 前場=9:00~11:30
  • 後場=12:30~15:00 
PTSの取引時間(SBI証券の場合)
  • デイタイム・セッション(日中取引) =8:20~16:00
  • ナイトタイム・セッション(夜間取引)=17:00~23:59

企業の決算発表や合併などのニュースは、東証の取引時間が終わる15時以降に発表されることが多く、それを受けて即座に売買することは東証ではできません。しかし、PTSなら当日中に取引ができます。

東証よりも有利な値段で約定できる

PTSでは売買する際の価格の刻み幅(呼値)が最少1000分の1となり、東証での取引に比べてより細かい値段で取引できます。また「SOR注文」により、東証とPTSの取引時間が重なる時間帯では、東証よりも有利な値段で約定できる可能性があります。

・SOR注文とは?

SOR(スマート・オーダー・ルーティング)注文」とは、東証やPTSなど複数の市場から最も有利な価格で売買できる市場を判定して、自動的に注文を執行する制度です。

つまり、SOR注文にしておけば、自動的に安い値段で買えたり高い値段で売れたりするので、同じ売買でも、より多くの利益を得ることができるのです。

PTSのデメリット

次に、PTSのデメリットについて考えてみましょう。

東証よりも有利な値段で取引できるPTSですが、なかには流動性が低い銘柄もあります。取引したい銘柄が取引できない、もしくは、現在の価格から離れた価格でしか約定できない、という流動性リスクがあるのです。

その理由は、PTSの取引シェアが低く、市場参加者が少ないからです

現在の国内の株式売買におけるPTSのシェアは5%程度で、東証の90%に遠く及びません。アメリカでは30以上のPTSがあり、世界最大の取引量を誇るニューヨーク証券取引所でさえ現物株の取引シェアは21%程度にとどまります。

流動性の低さは、思わぬ損失を被る決定的なリスクになることもあります。PTSを利用する際には、この点をしっかりと理解したうえで取引することが必要です。

2019年はPTSが再ブレイク?

PTSは、取引機会が多い点が大きなメリットですが、一方で、流動性リスクという弱点もあります。

日本のPTSが少ないのは、2011年の東日本大震災以降、大手ネット証券が相次いで撤退したからです。しかし、2018年に楽天証券と松井証券がPTS取引を再開し、マネックス証券も2019年には参加予定です。さらに7月以降、PTSでの信用取引が解禁になることも決定しています。

市場参加者が増えれば流動性の向上が見込まれます。2019年は、PTSに再び追い風が吹く年になるかもしれません。

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2019/01/15
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[筆者]山下 耕太郎
山下 耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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