円安パンチが日本株を襲撃! あのトヨタも下がる中、プロが注目した買収劇の行方

窪田 剛
2022年5月2日 11時30分

Andrii Zastrozhnov/Adobe Stock

《日々相場と向き合うプロトレーダーは今どんな銘柄に注目しているのか? オンライン株式スクール「株の学校ドットコム」講師の窪田剛さんが、3つのランキングから4月相場を振り返ります》

月相場を振り返って

連休中にこんにちは。4月はとにかく円安が進行しましたね。どうなってしまうのだニッポン!と、まあ、それは最後のまとめでお話ししましょう。

4月はもうひとつ「東証再編」という大きなイベントがありました。でも、あまりにもあっさり通過したので、なかには実感がない人が多いかもしれません。それにともない、今回からこのコラムでもマザーズ指数の代わりに東証グロース指数を採用して載せていきます。

(参考)きょう東証再編! 「変わるもの・変わらないもの」「なくなるもの・なくならないもの」を要チェック

それでは、今月もしっかり振り返っていきましょう。

指数 3月終値 4月終値 騰落率
日経平均株価 27,821円 26,847円 −3.5%
TOPIX 1,946ポイント 1,900ポイント −2.4%
東証グロース指数 879ポイント (NEW)

4月相場で上がった株・下がった株

そんな2022年4月の株式相場を売買代金と値上がり率・値下がり率のランキングで振り返ってみたいと思います(太字はピックアップ銘柄)。

・2022年4月の売買代金トップ20

順位 証券コード 銘柄 売買代金
1 6920 レーザーテック 2.00兆円
2 9984 ソフトバンクグループ 1.68兆円
3 9101 日本郵船 1.60兆円
4 8035 東京エレクトロン 1.21兆円
5 7203 トヨタ自動車 1.15兆円
6 6758 ソニーグループ 8870億円
7 9983 ファーストリテイリング 7966億円
8 9107 川崎汽船 7738億円
9 7974 任天堂 6971億円
10 6861 キーエンス 6231億円
11 9104 商船三井 6117億円
12 8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 5830億円
13 6594 日本電産 4638億円
14 9501 東京電力ホールディングス 4614億円
15 9432 日本電信電話 4351億円
16 8316 三井住友フィナンシャルグループ 4216億円
17 4502 武田薬品工業 4167億円
18 6098 リクルートホールディングス 4131億円
19 1605 INPEX 4078億円
20 8058 三菱商事 4030億円

・2022年4月の値上がり率トップ20

順位 証券コード 銘柄 値上がり率
1 7066 ピアズ 144.30%
2 2178 トライステージ 67.80%
3 2776 新都ホールディングス 58.70%
4 3479 ティーケーピー 47.50%
5 2159 フルスピード 45.10%
6 4937 Waqoo 43.60%
7 7063 Birdman 43.00%
8 3810 サイバーステップ 42.90%
9 6016 ジャパンエンジンコーポレーション 42.60%
10 4073 ジィ・シィ企画 40.70%
11 6740 ジャパンディスプレイ 39.50%
12 9090 丸和運輸機関 35.40%
13 3664 モブキャストホールディングス 33.80%
14 4880 セルソース 30.50%
15 5387 チヨダウーテ 28.20%
16 8107 キムラタン 27.70%
17 9086 日立物流 27.00%
18 9439 エム・エイチ・グループ 26.90%
19 2379 ディップ 26.70%
20 6175 ネットマーケティング 26.50%

・2022年4月の値下がり率トップ20

順位 証券コード 銘柄 値下がり率
1 3808 オウケイウェイヴ −71.7%
2 9252 ラストワンマイル −50.0%
3 9176 佐渡汽船 −45.0%
4 7049 識学 −40.9%
5 4268 エッジテクノロジー −38.3%
6 3133 海帆 −37.6%
7 3856 Abalance −37.6%
8 6578 エヌリンクス −37.4%
9 4270 BeeX −37.0%
10 1711 SDSホールディングス −36.4%
11 3647 ジー・スリーホールディングス −35.9%
12 4393 バンク・オブ・イノベーション −35.8%
13 4593 ヘリオス −35.8%
14 5341 アサヒ衛陶 −35.7%
15 6579 ログリー −35.4%
16 7351 グッドパッチ −35.1%
17 9250 GRCS −33.9%
18 3922 PR TIMES −33.8%
19 4017 クリーマ −33.6%
20 6629 テクノホライゾン −33.3%

4月相場でプロが気になった銘柄

このランキングの中から、私・窪田が気になった銘柄をピックアップしてみます。

・売買代金ランキング

  • 第5位:トヨタ自動車<7203>……1.15兆円

円安が進むと利益が嵩上げされる(1円の円安で対ドルで400億円増、対ユーロでは70億円増といわれている)ことで有名なトヨタですが、基本的に上場企業の多くは円安になると利益が増える→日経平均が上がる、といわれています。

ですが、財務省の貿易統計によると日本はもう9か月連続で赤字です。つまり、円安になればなるほど国が貧しくなるということ。

トヨタの利益が上がるのは「車が売れる」というのが前提ですが、お膝元の日本ではガソリンも上がるし車の原材料も上がるし、給与は下がるし、車なんか売れなくなるよねぇ……という考えもあり、これだけ円安になったにもかかわらず、株価は上がりませんでした。むしろ年初から下がっています。

ここでも円安パンチが効いています。

  • 第19位:INPEX<1605>……4078億円

ロシアとウクライナの争いが続いています。そして原油価格も一時期の高騰は落ち着いたとはいえ、まだまだ高水準で推移しています。

商社をはじめエネルギー関連企業にとっては舵取りの難しい時期ですが、扱っている商品が人気(=値段が高い)というのはビジネスにとっていいこと。株価も4月に高値を更新しています。今後も要チェックの銘柄です。

・値上がりランキング

  • 第17位:日立物流<9086>……+27%(6,720円→8,540円)

4月21日(木)に日立製作所<6501>が同社の売却を進めているという報道があり、月末28日の引け後にアメリカの投資会社KKRに1株あたり8,913円で売却する、という発表が正式にありました。

報道前の株価(21日終値):6,760円
(22日はストップ高)
報道後の寄付(25日始値):7,900円
発表前の終値(28日終値):8,540円
売却価格        :8,913円

ギリギリ発表後に買ってもまだ間に合った、という株価になりました。買った方おめでとうございます。

とはいえ、こういう買収時の株価で勝負するのは、なかなか難しいと思っています。安く決まることもあるので、同じようなことが今後あっても安易に手を出さないようにしましょう。

それにしても、今回の売却総額は約8,000億円ほどだと思うのですが、KKRからすれば、この円安で2割引で買えることになるのですね。為替だけで約1,600億円も浮いた計算。ここでも円安パンチ!!

それはさておき、この会社は何年後かに違う社名でIPOすることになるのかもしれません。そのときが楽しみです(親会社の日立製作所は買収元のファンドを10%保有することになるので、さらなる利益も見込める)。

・値下がりランキング

  • 第1位:オウケイウェイヴ<3808>……−71.7%(389円→110円)

みなさま、ポンジスキームをご存じでしょうか。太古の昔からある詐欺の手法でして、有名なところでいえば、ナスダック元会長のマドフさんが2兆円ほどの被害額(180億ドル)を出した、という事件がありました。

人間の心理をつく詐欺手法でして(配当もらえるとか、有名人が広告塔になるとか、友人に勧められるから安心だとか、たくさんの要因があります)、詳しくはウィキペディアなどをご覧ください。たくさんの有名な事件が載っています

今回、オウケイウェブも会社の規模からしたら大きすぎるこのポンジスキームの詐欺に遭ったようです。詳しくは会社の発表をどうぞ。

月に◎%配当とか、元本保証とか、美味しく見える話には必ず裏があるものです。詐欺には気をつけましょう、というのは当然のことなのですが、よくわからないことをやっている企業の株を買うのも避けるようにしましょう。

とにかく円安! で、株価はどうなるか

円安!円安!円安!! 4月はとにかく円安が進みました。ドル円は以下のように推移しました。

2月末:115円
3月末:122円
4月末:130円(129.75円)

この原稿を書いているのは4月30日ですが、5月中頃から海外メーカーやブランドが一気に値上げをすると発表しています。ジュエリーや時計などのブランド品、ガソリンなどはわかりますが、それだけでなく、石油製品、食品、パソコン、カメラ、日用品まで、どんどん値上げが発表されています。

ぱっと見では10~25%ほどの値上げが多く、アメリカ在住の友人は、日本のアマゾンで日用品を買って、アメリカまで送料を払って送っているそうです。

このスピードでの円安がいつまでも続くわけではないでしょうが、金利差が拡大し続ける限り円安は進むと考えておきましょう。

では、そうなったときに、どこに資金が流れ込むのか。日本はまだ鎖国状態(観光目的の旅行客は4月30日時点で入国不可のまま)ですが、ここまで円が安かったら、旅行や買い物、不動産爆買いなど、海外マネーが一気に入ってくるかもしれませんね。そうなったら株価はどうなるか。

今のうちから考えを整理して、準備しておきましょう!
よい連休を!!

(株の学校ドットコム講師・窪田 剛

[執筆者]窪田 剛
窪田 剛
[くぼた・つよし]トレーダー、投資家。オンライン株式スクール「株の学校ドットコム」講師。数日から数週間保有するスイングトレードをメインに手がける。トレーダーとして日々相場と向き合うかたわら、エンジェル投資家としてベンチャー企業に出資したり、社会貢献活動にも力を入れる。スキーとサウナ、温泉とゲームが好き。著書に『株の学校』『株の学校 超入門』(いずれも高橋書店)がある。
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