初心者必読! たったふたつだけ、ローソク足の簡単な見方<実践編>

石川紀子
2016年3月17日 13時07分

「基礎編」では、ローソク足の基本的な見方について学びました。しかしながら、それだけではまだ実践で使えません。ローソク足は、すべての出来事が織り込まれて、これからの株価の方向を占うことが出来る素晴らしいツール。今回は、実際の株式投資への活用法を学びましょう。

組み合わせが重要。ただし、「絶対」はない。

<基礎編>で学んだように、ローソク足は陽線や陰線、十字線など1本のローソク足から相場の動きを読みとることが出来ます。さらに、2本のローソク足、3本のローソク足の組み合わせを見ることによって、より詳しい読み方をすることが出来るのもローソク足の大きな特長です。

複数のローソク足を組み合わせた例では、つつみ線、はらみ線などがあり、それぞれ陰線と陽線の組み合わせで上昇や下落の転換期と判断します(下図参照)。

また、3本以上のローソク足を組み合わせた「明けの明星」や「三山」「三兵」などのサインもあります。

こうした数多くの形(組み合わせ)を理解することで、相場の様々な局面を読み取ることができます。(これらを「酒田罫線」といい、江戸時代から語り継がれるローソク足の形状を指します)

【つつみ線】

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上昇局面で左側のように陽線をつつみ込むように陰線が発生した場合、特に天井圏にてこのようなローソク足の組み合わせになると転換の兆し(つまり下落の兆候)と考える人が増えます。

右側はその反対となり、下落局面の底値圏にて陰線をつつみ込むような陽線が発生した場合、底打ちとなり上昇に転ずるのではないか?と思う人が多くなる形状です。

【はらみ線】

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お母さんのお腹の中に赤ちゃんがいることをイメージしたためはらみ線という名前になっています。左側は大陰線の中に陽線が含まれている状態。

下落局面にてこのような形になると売る側の力が弱まっており、買い側(そのため陽線になる)の力が強まってきているということです。そのため、ここが底となり反発する兆しになるかもしれないと考えます。

右側はその反対。上昇局面にて大陽線が現れ、それに含まれた形で陰線ができた場合、天井となり反落する可能性があると見るわけです。

こういった組み合わせにより、多くの見方が出来ることがローソク足の醍醐味ではあるものの、万能ではありません。

実際の株式市場(相場)は教科書通りに動くばかりとは限りません。

日々の取引が蓄積された参加者の思いや事情・保有状況などが混在したチャートから、的確にサインを読み取るには経験としっかりとした勉強が必要になります。

また、「ダマシ」と言ってサインが出たところでセオリーと反対の動きをすることも多々あります。チャートを読み解く為には、どうしても知識のみならず一定の経験、そして相手の気持ちを考えることが必要になってくるのです。

では、初心者にとってローソク足を利用した投資は難しいのでしょうか。そんなことはありません。初心者が最初に覚えるべきローソク足の見方はたったふたつだけ。これを知ることでチャートの見方がぐっと身近になります。

1.相場の「温度」を見る

株価の動きには「上がっている」「下がっている」「揉み合っている(横ばい)」の3つしかありません。株価は細かい上下を繰り返しながらも全体としての大きな動きがあり、それが「上昇」「下降」「揉み合い」の3つです。

この株価の大きな流れを「トレンド」と言います。株価が上がっているときは「上昇トレンド」、株価が下がっているときは「下降トレンド」、株価が揉み合っているときは「揉み合い」です。株式投資をする上で、トレンドを見極めることは非常に重要です。

まずはローソク足全体を少し離れたところから見てみましょう。陽線の赤(または白)が目立つ暖かい、明るい色味であれば、株価は上昇しているはずです。反対に陰線の青(または黒)が目立つ冷たい、暗い色味であれば株価は下がっているでしょう。

揉み合いのときは明るいとも暗いとも言えない、強いて言えばローソクの実体部分が小さく、上ヒゲ、下ヒゲの目立つ雑然としたチャートになっているのではないでしょうか。

トレンドは継続する

株価の動きの基本的な考え方の一つに「トレンドは継続する」ということがあります。つまり、「上がっている株価は上がり続ける」「下がっている株価は下がり続ける」というものです。上がっている株価が下がるには何かの「きっかけ」があるのです。

「きっかけ」とは、例えば「業績が下方修正された」というようなニュースの場合もありますし、上がり過ぎたから下がるという株価自体の動きによるものもあります。

いずれにせよ、株価が上がっている明るいチャートは、「きっかけ」があるまで上がり続ける、逆に株価が下がっている暗いチャートは「きっかけ」があるまで下がり続けるというのが株価の動きの基本的な考え方の一つなのです。

株価が上がっているところで上昇トレンドにのって「買う」ことを「順張り」と言います。株価が下がっているところで、下がりすぎたから上昇に転じるだろうと判断して「買う」ことを「逆張り」と言います。

うまくいけば大きな利益を取ることも出来るのですが、そのまま下落トレンドが継続して下げ続けるリスクも当然あります。

その場合には大きな損失を抱えてしまうことになりますので注意が必要です。繰り返しになりますが、初心者の方は基本的な手法として「トレンドにのる」「順張り」を最初のステップとしては実践してみることが良いかもしれません。

2.「きっかけ」を読み取る

トレンドは継続する、そうは言っても株価が永遠に上がり続けることも下がり続けることもありません。

株価の動きが反転する「きっかけ」を見つけることで利益につながる取引が増えると思いませんか? 投資家の気持ちから業績まで全てが織り込まれているものがローソク足であり、チャートです。

その「きっかけ」もローソク足を分析することで見つけることが出来たら素敵ですね。早速みていきましょう。

最初に少し触れましたが、ローソク足分析には一本のローソクからのサイン、複数のローソク足を組み合わせたサインなど、様々な読み取り方があるのですが、初心者が覚えるべき「きっかけ」となるローソク足は3つだけです。

①下ヒゲの長いローソク足

陽線と陰線の場合がありますが、株価が下落しているところ(安値圏)でこのローソク足が出た場合は、ここから上昇する確率が高くなります。寄付きから一旦は大きく下げたものの、引けにかけては大きく買い戻された状態がこのローソク足です。

これが下降から上昇に転じる「きっかけ」です。買いを入れる一つのタイミングとしてチェックしてみましょう。

②上ヒゲの長いローソク足

株価が上昇しているところ(高値圏)でこのローソク足が出たら注意です。ここから株価が下がる可能性が高くなります。一旦は上値を追ったものの利益確定売りに押し戻された状態です。

もう十分の上昇したという見方が広がっており、上昇から下降に転じる「きっかけ」となります。ここは売りを入れる一つのタイミングとなります。

③十字線

文字通り十字のものと、上ヒゲが伸びたもの、下ヒゲが伸びたものがあります。これは転換点となる「きっかけ」です。

取引時間中は株価が大きく動いたものの、始値と終値が同値あるいは、ほぼ同値で始値と終値の差が非常に小さい、即ちどちらに動いていいものか迷っている状態です。

このローソク足単独では上がるとも下がるとも言えないものの、このローソク足が出現したら転換点、何かが変わる可能性があるサインとなります。次の動きに注視し、備えましょう。

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3.限られたポイントを徹底的に見ること

初心者が覚えるべきローソク足の基本は、このたったふたつだけです。チャート分析には多岐多様でそれぞれの手法について本が何冊も書けるほどの内容があります。

もちろん、長く続くチャートの分析手法を学ぶことは決して無駄ではありません。しかし、全てをマスターするには知識の集積と経験が必要になります(そしてそれが投資で勝ち続けるために全て必要かというとそうではないと思います)。

まずは素直にローソク足に触れてみてください。たったふたつの分析手法をマスターしただけで見えてくるものがたくさんあります。難しく考えず、日々チャートに触れることで徐々に経験を積むこともできますし、自分なりの判断も生まれてくるはずです。自分にあった投資手法・分析方法を見つけて、育てていただければ幸いです。

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[執筆者]石川紀子
石川紀子
[いしかわ・のりこ]日本大学芸術学部文芸学科卒。ファイナンシャル・プランニング、株式投資などを独学で学ぶ。2000年より株式情報サイトにて、株式投資関連の記事を執筆。初心者向けを中心に株式投資講座、市況概況、個別銘柄解説、IPOなどについて書く。単に「儲かる・損する」という見方ではなく、ファイナンシャル・プランニング面から見た投資の位置付けなどをテーマとしている。認定テクニカルアナリスト(CFTe)
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