5月の相場格言「セルインメイ」が日経平均にも当てはまるのか検証してみた
相場の世界には実に多くのアノマリー(ジンクスのようなもの)がありますが、世界的にも有名な「Sell in May(セルインメイ)」を過去のダウ平均株価で検証してみたところ、10勝2敗という悪くない成績であることが判明しました(記事はこちら:株は「5月に売れ」って本当? 過去12年のセルインメイを検証してみた)。
でも、やっぱり気になるのは日経平均株価です。果たして、イギリス生まれのこのアノマリーは日本の相場にも当てはまるのでしょうか?
「セルインメイ」のおさらい
「Sell in May」は単に「5月は売り」というアノマリーではなく、まだ続きがありました。
Sell in May and go away, don’t come back until St Leger day.
(5月に売れ。その後は出て行き、セントレジャー・デー〈9月第2土曜日〉まで戻って来るな)
つまり、「5月のうちに持っている株を売って、夏の間は相場から離れていたほうがいい」ということです。なぜなら、欧米では夏に長いバカンスをとる人が多いため、夏場(6〜9月)の相場は参加者が少なく、活発な取引が行われないからです。
「夏の相場は軟調(だから注意せよ)」——それが、このアノマリーが真に意味するところなのです。
日経平均 vs. セルインメイ
しかし。日本人の夏休みと言えば、長くてもお盆に1週間程度の休みを取るくらいのものです。とても「バカンス」なんて呼べたものではありません。
じゃあ、やっぱり「セルインメイ」は日本では通用しないのでしょうか?
ダウ平均株価で検証したときと同様に、「9月第2土曜日の次の月曜日(祝日の場合は火曜日)に買い → 翌年5月の最終日に売る」というアノマリーどおりの行動を取ったらどうなっていたのか、過去12年間の成績を見てみましょう。
・2005年9月12日に買い → 2006年5月31日に売る
2005年9月12日の始値:12,841.02円
2006年5月31日の終値:15,467.33円
↓
+2,626.31円
・2006年9月11日に買い → 2007年5月31日に売る
2006年9月11日の始値:16,053.13円
2007年5月31日の終値:17,875.75円
↓
+1,822.62円
・2007年9月18日に買い → 2008年5月30日に売る
2007年9月18日の始値:16,037.49円
2008年5月30日の終値:14,338.54円
↓
−1,698.95円
・2008年9月16日に買い → 2009年5月29日に売る
2008年9月16日の始値:12,028.45円
2009年5月29日の終値:9,522.50円
↓
−2,505.95円
・2009年9月14日に買い → 2010年5月28日に売る
2009年9月14日の始値:10,388.32円
2010年5月28日の終値:9,768.70円
↓
−619.62円
・2010年9月13日に買い → 2011年5月31日に売る
2010年9月13日の始値:9,325.64円
2011年5月31日の終値:9,693.73円
↓
+368.09円
・2011年9月12日に買い → 2012年5月31日に売る
2011年9月12日の始値:8,578.71円
2012年5月31日の終値:8,542.73円
↓
−35.98円
・2012年9月18日に買い → 2013年5月31日に売る
2012年9月18日の始値:9,155.49円
2013年5月31日の終値:13,774.54円
↓
+4,619.05円
・2013年9月17日に買い → 2014年5月30日に売る
2013年9月17日の始値:14,456.99円
2014年5月30日の終値:14,632.38円
↓
+175.39円
・2014年9月16日に買い → 2015年5月29日に売る
2014年9月16日の始値:15,896.06円
2015年5月29日の終値:20,563.15円
↓
+4,667.09円
・2015年9月14日に買い → 2016年5月31日に売る
2015年9月14日の始値:18,341.01円
2016年5月31日の終値:17,234.98円
↓
−1,106.03円
・2016年9月12日に買い → 2017年5月31日に売る
2016年9月12日の始値:16,748.36円
2017年5月31日の終値:19,650.57円
↓
+2,902.21円
ジンクスに頼らない投資判断を
結果は「7勝5敗」。なんとも微妙な結果になりました。
そもそもバカンスが前提にある欧米のアノマリーなので、日本にそのまま通用するはずがないのですが、「5月は売り」という発言は日本でも多く見かけます。検証方法によっては、これとは違う結果になる場合もあるでしょうが、どんなアノマリーでも、それだけに頼った判断はしないように。
また、近年ますます外国人投資家の存在が大きくなっています。もし今後、夏の相場がいまひとつだなーと思うことがあれば、バカンスが要因かもしれません。
ところで、このアノマリーが広く知られているということは、多くの人が「5月は売り」だと思っているわけです(真の意味を理解しているかどうかは別として)。ということは、実はその前(4月)に売ったほうが儲けられるのでは?という気もしてきますが……その検証は、また今度。