半年で株価800%! 「新興株投資」の魅力と押さえておきたい注意点

岡田禎子
2020年11月4日 8時00分

《新興株に高い関心が集まっています。未曾有の危機をきっかけにした成長期待の高い銘柄が多く、その期待感からテンバガー(10倍株)も生まれています。ダイナミックな値動きが魅力の新興株投資ですが、投資する際には起こりうるリスクをよく押さえておくことが大切です》

危機下で買われる新興株

世界中を恐怖に巻き込んだ2020年春のコロナショックから半年以上が過ぎました。主力株などが冴えない中、将来の成長性に期待して、新興株が関心を集める場面が増えています。

次の図は、3月下旬から9月下旬の新興株の株価上昇率ランキングです。ご覧のとおり、上昇率はすべて300%超え。さらに、ネットショップの開設を支援するBASE<4477>、コロナ治療薬の開発期待で急騰したテラ<2191>など、スター銘柄も誕生しました。

順位 証券コード 銘柄 6か月の上昇率
1 4477 BASE 869.16%
2 2191 テラ 742.59%
3 3998 すららネット 680.49%
4 3542 ベガコーポレーション 540.38%
5 6579 ログリー 502.12%
6 2150 ケアネット 439.39%
7 4381 ビープラッツ 428.89%
8 7610 テイツー 400.00%
9 7090 リグア 385.14%
10 8256 プロルート丸光 383.08%

(2020年9月末時点)

株式相場全体の動きを見ても、日経平均株価やTOPIXと比べて、新興市場の東証マザーズ指数が大きく上昇したことがわかります。

新興株の高パフォーマンスの秘密

新興株は、業績よりもテーマや将来への成長期待から株が買われるため、大きく化ける可能性を秘めていることが特徴です。

もうひとつ、値動きが軽い点も特徴として挙げられます。新興株は時価総額が小さく、発行済み株式数も多くありません。そのため流動性が低く、株価は上下に大きく動きやすくなります。そのため、タイミングを上手く捉えれば、短期間で大きな利益を手にすることができ、うま味が大きいといえます。

コロナ禍で新興市場が日経平均株価を大きく上回るパフォーマンスを出したのは、未曾有のこの危機をきっかけに成長期待が高まったEコマースやクラウド関連、バイオ・医療関連などの比率が高いからです。

また、これら新興株は、アメリカや中国の影響を東証1部の大型株ほど受けず、国内要因で十分に成長を期待できるという利点もあります。

コロナ禍で大いに買われた新興株

ここで、とくに高い株価上昇率を記録した銘柄を紹介しましょう。

・BASE<4477>

個人や事業者向けのネットショッピング「BASE」の運営をしているBASE<4477>。休業や営業時間の短縮を余儀なくされた店舗等によるショップの開設が急増。7月には累計110万ショップを突破。8月には2020年12月期業績を上方修正し、株価は上場来高値を更新。圧倒的な勝ち組株となりました。

・テラ<2191>

がん免疫療法の研究開発と事業化を行うテラ<2191>。2020年4月に新型コロナウイルス治療薬の開発を始めると表明した時点の株価は167円でしたが、6月には2,175円をつけました。しかし、9月に治療薬開発の疑念が報道されると急降下。会社側が報道を否定すると再び急騰するなど、足元では値動きの粗い展開となっています。

・すららネット<3998>

デジタル学習教材「すらら」の企画開発・販売を行うすららネット<3998>。コロナ禍でオンライン学習や在宅学習需要が拡大し、同社教材の利用者数が急増したことで株価は強い上昇基調となりました。6月の株式分割実施や、7月末発表の中間決算で各利益が黒字に転換、2020年12月期の業績予想も上方修正したことで、株価はさらに大きく飛躍しました。

ダイナミックな値動きを支えるもの

個人投資家にとって新興株の最大の魅力は、株価のスピード感とダイナミックな値動きでしょう。新興株は発行株数が少なく、流動性が低いために、一旦株価が動き出すと速く、連続ストップ高、ストップ安をしてくる銘柄もザラにあります。

このような銘柄には、個人投資家だけでなく機関投資家や証券会社のディーラーも参加してくることが多いため、さらに株価のスピード感が増します。

信用取引の駆け引きで暴落も

また、新興市場は個人投資家が6割を占め、大半の人は信用取引を使います(ただし、新興市場では貸借銘柄が限られる)。何らかの材料が出て株価が上昇する期待値が高まると、「信用買い」が一気に増えます。

  • 「信用買い」が増える→株価が上がる→「信用売り」が増える→「売り・買い」の厚みが増す

ここで、まだまだ上がると思う人はさらに「信用買い」を増やし、「もう高過ぎだろう」と思う人は「信用売り」を入れます。

こうして買い方と売り方の思惑が交錯しながら株価は吊り上がっていき、最後にはどちらかが耐えられなくなって、一気に崩れます。株価が上がり過ぎた場合は、売り方の買い戻しによって踏み上げが起こり、下がり過ぎれば、買い方の投げ売りで暴落……となるのです。

10月中旬、コロナショック以降、上がり続けたマザーズ指数も一気に下げる展開が見られました。

(参考記事)少ない元手で急激に資産を増やせる「信用取引」の魅力と注意点

新興株ならではのリスクに要注意

このように、短期的に見ると、投資家の思惑によって激しい展開が繰り広げられているのが新興株です。安易な気持ちで参戦してしまうと大やけどをするリスクはあるものの、それを承知した上で挑戦したならば、この値動きのスピード感やダイナミックさが醍醐味に感じられるはずです。

ただし、「新興株は流動性が低く、株価が乱高下しやすい」ということは、当然、高値掴みをしてしまい、買値の半分以下に暴落するなどのリスクもあります。

業績と株価は必ずしも連動していません。新興株は、さまざまな思惑や期待感先行で買われているため、増益であっても、その成長性に減速感が見られると急落することもあるのです。

そもそも、新興株は業績や財務が不安定なことも多いのです。企業の規模が小さく、単一かそれに近い業態であるため、企業業績の変動が激しい傾向にあります。業界の動向に左右されやすく、思わぬ業績悪化や突然の下方修正に見舞われたり、赤字決算になったりすることも。最悪の場合、倒産もあります。

さらに、配当収入はあまり期待できません。新興企業は、企業の成長のために、利益を投資へ回す傾向があります。そのため、無配企業も多くあるのは留意したいところです。

「新興」こそ成長性の見極めを

株の経験が浅く自信がない場合は、このような短期勝負を挑むのではなく、長期投資にするか、東証1部の大型株など値動きの小さい銘柄に投資するのが賢明です。

中長期的で見た場合は、株価は何か材料で上がっては調整して……を繰り返しつつも、株価は最終的には業績に収斂しますので、「この株は将来の成長性が高い」と確信するならば、目先の株価の値動きに惑わされず、信じて持ち続けることで将来大きな利益を手にする可能性が高まります。

ただ、リターンが大きいということは、リスクも当然大きくなりますので、損切りのラインをきちんと決めておく、集中投資を行わず分散投資をする、PER100倍を超えるものは避ける、など自分なりのルールを決めておくことが大切です。

また、信用取引残高の動向や、決算前後の動きなども銘柄によってはクセがあるので、傾向をよく確認しましょう。

新興株投資で何より重要なのは、企業の成長性を見極めること。常に投資先を再評価し、確信がある銘柄は買い増ししたり、成長性に懸念が出た銘柄は売却したりするなど、時には機敏に動くことで成功の扉が開くでしょう。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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