相場操縦をざっくり解説 ネット取引が思いがけず犯罪につながる理由とは?

相場は、あなたの言うことを聞いてくれません。あなたが買った途端、一気に値を下げるなんてことは、ほとんどの投資家が経験したことのある悲劇でしょう。「買ったんだから、上がってくれないと困る」——そんな都合のいい願いを叶えてくれるのが「相場操縦」という手法です。

さんざん振り回されてきた相場を、思い通りにコントロール……なんと甘美な響きでしょうか。

ただし、相場操縦は違法行為です。「インサイダー取引」と同様、絶対にやってはいけません。ところが、何が違法なのかを理解していないために、そうとは知らずに「相場操縦まがい」のことをやっている可能性もあります。

なぜ相場を操ってはいけないのか

相場を人為的に操り、それがあたかも自然の需給生まれた値動きのように見せかけることで、利益を得ようとする行為、それが相場操縦です

株式市場においては、それぞれの銘柄の会社関係者と外部の一般投資家とでは、保有している会社情報に著しい格差があるとされています。

もちろん、会社関係者が持っている重要情報を露骨に使って株の売買をすれば、インサイダー取引として厳しく処罰されますが、やはり、その会社に勤めていたり、具体的な取引関係にあったりする立場でなければわからない社風や雰囲気といったものもあります。

何より大事な「流動性」と「公正性」

そこで一般投資家は、株価チャートを分析することで、市場にまだ織り込まれていない値動きの前兆を探し出そうとします。このようにして活発に取引が行われることで、「買いたいときに買える」「売りたいときに売れる」という株式市場の流動性が生まれるのです。

そんなところに相場を操る者(マニュピュレーター〈相場操縦者〉とも呼ばれます)が現れたら、その人為的な株価変動に巻き込まれた一般投資家が損失を被り、操縦者はその犠牲の下に「ズルい利益」を手にすることになります。

それによって公正な株価形成を妨げ、投資家に「予想のつかない株は怖い……」という認識を植え付け、株式投資を萎縮させ、ひいては、株式市場の流動性を阻害することにもつながります。相場操縦を厳しく規制することで、多くの投資家にとって公正な株式市場が確保されているのです。

相場操縦の手口

もし、ひとつの銘柄に数百億円、数千億円を投じることができれば、それだけで株価は動くでしょう。ですが、機関投資家ではない一般投資家には、通常そのような資力はありません。そこで、相場操縦では、他の投資家もおびき寄せることで、特定の銘柄に投資を集中させる仕掛けを行うのです。

他の投資家をおびき寄せるには、「この銘柄は買いだ!」と思わせるチャートを形成するよう操縦することになります。具体的には次のような手口があります。

【ひとりで行う相場操縦】
  • 仮装売買……自分が売りと買いの両当事者になること
  • 買い上がり……現在値よりも高値で買い注文を大量発注し、その間にある売り注文もすべて約定させて、株価を引き上げながら出来高も上昇させること
  • 終値関与……取引終了時刻の直前になって、買い上がりによって終値を引き上げること
  • 下値支え……現在値よりも安いところに、指し値で大量の買い注文を出すこと
  • 見せ玉……大量の注文を出しては、約定しそうになると取り消すこと
【グルで行う相場操縦】
  • 馴合売買……ある人の売り(買い)と同時に、仲間がそれの買い(売り)を行うこと

このうち、見せ玉や下値支え、買い上がりなどは実際の取引に基づく相場操縦なので、おびき寄せる目的があったのか、それとも健全な取引の一環なのか、前後の状況を総合的に考慮して違法行為かどうか判断されることになります。

相場操縦のペナルティ

健全な株式市場に欠かせない「流動性」と「公正性」を保つために違法とされていることから、相場操縦には、インサイダー取引よりも厳しいペナルティが科されます

刑事ペナルティ

10年以下の懲役刑か1000万円以下の罰金刑、または懲役と罰金の両方を科される場合もあります。さらに、「財産上の利益を得る」という目的が認められた場合には、この罰金刑の上限が3000万円に引き上がり、懲役刑と両方を科されます。(金融商品取引法197条1項5号、197条2項)

民事ペナルティ

相場操縦行為によって形成された株価によって、他の一般投資家に損失を与えることになります。そのため、損失を被った人への賠償責任が生じます。(金融商品取引法160条)

行政ペナルティ

証券取引等監視委員会からは課徴金の納付命令が出されます。金額は、具体的な手口によって計算方式が変わります。(金融商品取引法174条)

そんなつもりはなくても……

相場操縦は違法行為なので、お勧めしているわけでは当然ございません。しかしながら、ネット取引の進化によって、大量の株式を一度に、あるいは頻繁に売買できるようになったため、知らず知らずのうちに「相場操縦まがい」のことをやっているかもしれません

また、もしも知り合いの投資家から誘われていることが相場操縦の片棒を担ぐような行為であれば、しっかり断るようにしましょう。

証券会社や取締機関からの誤解を避けるためには、投資家の側も「相場操縦とは何か?」という知識を心得ておくべきです。たとえ心が揺れたとしても、最大では10年の懲役+3000万円の罰金という重いペナルティが待ち受けていることをお忘れなく。

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2018/04/02
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相場操縦をざっくり解説 ネット取引が思いがけず犯罪につながる理由とは?」の著者
長嶺 超輝
[ながみね・まさき]法律・裁判ライター。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。30万部超のベストセラー『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)のほか著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)——こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。
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