なぜ投資家は間違うのか 優柔不断で大きな代償を支払う前に考えるべきこと

朋川雅紀
2024年4月16日 8時00分

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なぜ投資家は間違うのか

なぜ個人投資家は、多くの場合、間違った投資行動を取ってしまうのでしょうか。今後起こるであろう「変化」への対応が適切になされていないことが、ひとつの大きな原因であると考えられます。これは主として、「心理的な要因」によるものです。

一般的に、プロと呼ばれる人たちも含めた投資家は、将来に対する予測を、まず「現状の分析」から始めます。しかしながら、個人投資家の立てた市場予測のほとんどは外れてしまいます。なぜなら、長期の期待を形成する過程において、たいていの場合、現在の状況を過大評価してしまうからです。

つまり、将来も現状がほぼそのまま継続する、と考えてしまうからなのです。

また個人投資家は、自分の「過去の判断」に重きを置き過ぎてしまう傾向があります。それは、自分の判断が正しいと確信を持っているからではありませんし、その判断が正しくなる可能性が高いと思っているからでもありません。ただ単純に、その判断を「過去にした」という事実があるだけです。

「過去の判断」を正当化しようとするあまり、新しい情報に接したとき、その情報に対する解釈や判断を歪めてしまうのです。

新しい情報というのは、しばしば、過去の意思決定の「修正」を促す重要な情報を含みます。その新しい情報に基づいて深く考えれば、過去の判断の誤りを修正する機会になる、ということです。

しかし実際には、多くの人は過去にとらわれて、なかなか新しい情報に気づきません。無意識で気づかないようにしているかもしれません。しかし、新しい情報に対して「防衛本能」が働いてしまうと、将来に対しても適切な判断ができなくなってしまいます。

優柔不断による大きな代償

投資家は、常に「変化」に対処することが求められます。そのため投資家がまずやらなければならないのは、将来に対する明確なビジョンを描くことです。

しかし、「市場」という不確実性にあふれた場を相手にするわけですから、これはとても大変な作業です。将来に対する見方は、専門家の間でも分かれることが多いですし、専門家でさえも大きな誤りをするくらいですから。

〈参考記事〉なぜ専門家の予測は当たらないのか。株で成功する人が知っている「期待値」の真実

人間というのは、本能的に「変化」を嫌う傾向があるようです。過去はすでに起きてしまっていますので、ある意味、「確実性のある世界」です。だから、過去にこだわるほうがずっと楽です。

一方、将来を考えることは「不確実性に満ちた世界」に対処することになるので、とても気が重くなります。したがって私たちは、「現在」を出来る限り引き延ばそうとする誘惑に駆られてしまいます。

こうして、変化への対応は積極的なものとは程遠く、受け身的なものになってしまいます。何かが起こる前に行動を起こそうとは考えずに、何かが起こってから行動を起こせばいい、と考えるようになります。

たったひとつの出来事でも、投資家の決断が促されることはあり得ます。しかし、それには決断が促されるような条件が整っていなければなりません。 優柔不断は、しばしば誤った判断よりも大きな代償を支払わせかねません。

情報を詳細に分析した上で一度行った判断を、しかも迅速に変えるのは、感情的に極めてハードルが高いです。そのため投資家、とりわけ個人投資家の多くは、自分の過去の判断を正当化するために、あらゆる手段を尽くします。誤りが判明した後も、言い訳を並べて素直に誤りを認めようとはしません。

そうやって情報に対して防衛的な姿勢を取ることで、自分の予測に反する情報に対して目を曇らせてしますのです。

現実は、予想より早く変化する

変化には、新しい発想と新しい対応が必要とされますが、通常は新しい発想を提示するより、周囲の変化に受け身に対応するほうがはるかに簡単です。

それでも変化に対応しようとしないのは、投資家自身の不安や自己防衛の反映です。したがって、誤りを認めることを恐れてしまうと、新しい情報への対処は大きな制約を受けてしまうことになります。

特に将来の予測においては、判断ミスがあり得ること、むしろ、ミスは不可避であることを認めなければなりません。そうでなければ、変化に対して常に後手に回ってしまいます。

人間は本能的に、過去の誤りを正当化しがちです。しかしながら、変化というものが「期待と現実のギャップ」である以上、このような姿勢では十分に立ち向かうことは出来ません。変化を、過去の判断に対する批判としてではなく、不可避なものとしてとらえる姿勢が大切ではないでしょうか。

変化を見落としてしまうと、大きな損失につながりかねません。早目に対処することで、多くの場合、損失を最小限に抑えることが可能です。

過去の誤りをいたずらに正当化するのはやめましょう。環境は、変わるときには変わるものです。無駄な抵抗をするよりも、過去の誤りを素直に認め、新たな対応を練るほうが賢明です。現実とは、予想よりも早く変化するものなのですから。

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[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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