なぜ専門家の予測は当たらないのか。株で成功する人が知っている「期待値」の真実

朋川雅紀
2024年4月4日 12時00分
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専門家の予測は当たらない

多くの金融機関が定期的に市場見通しを発表していますが、彼らは見通しをうまく当てられているのでしょうか?

はっきり言って、いわゆる「株のプロ」と言われる人たち──私もその末席を汚しておりますが──の予測は当たりません。と言うよりは、投資の専門家たち“でも”予測当たらない、という表現のほうが適切かもしれません。それだけ、相場予測というのは難しいものです。

もちろん、いつも当たらないというわけではありません。私自身の話をして恐縮ですが、私はある程度の確率を伴って、市場の方向性を見通すことはできる、という自負があります。しかし、残念ながら、百発百中というわけにはいきません。

さらに、株価の経路となると、かなりあやしくなります。ただ、私は長期投資家なので、方向性を正しく見出せれば、十分に高いリターンを実現できますので、それでいいのかなと思っています。

個人投資家のみなさんは、「プロなのにどうして当たらないのか?」と不思議に思うかもしれませんが、それは相場というものが「不確実性」に影響されるからです。

成功には「偶然」が付き物

例えば私は、昨年のアメリカ株について「10〜20%のレンジで株価が上昇する」という仮説(メイン・シナリオ)を立てていました(詳しくは、過去の記事を参照してください)。

株価はおおよそシナリオに基づいて動きましたが、もし仮に、ロシアが核兵器を使用したり、中国が台湾に武力行使をしていたら、そのシナリオ通りにいかなかったかもしれません。つまり、私のシナリオは“たまたま”当たっただけのことなのです。

大きな株の動き、たとえばリーマン・ショックといった大暴落を予想したとなると、その人は英雄になります。そして、その成功者はカリスマ視されることになります。

多くの投資家は、結果としてはっきり現れるものには必ず明確な原因がある、と考えます。「確率的に対処する」という考え方をあてはめようとは思いません。

したがって、たまたま相場予測を当てた人がいた場合、それを「偶然の産物」であるかもしれないとは考えずに、カリスマ視してしまいます。そして、そのカリスマにあやかって、いつか自分も相場予測ができるようになりたい、と願うのです。

成功を、明確な原因による必然的な結果だと捉えてしまうのです。しかし実際には、成功というのは、ある程度は確率的な現象と言えます。もちろん、成功者には成功の要因があったかもしれません。しかしながら、そこには必ず偶然の働きもあったはずです。

予測は「外れる」のが前提

多くの人が納得しやすい、つまりコンセンサス(=意見の一致)が得られやすい予測は、とりわけ外れやすいです。

どうしてこのようなことが起こるかと言えば、大勢の人が予測していたものと違うことが起きたとき、予測を外してしまった大勢が慌てふためいてパニックを起こすことでその動きが増幅され、ますます予測と違う結果が招き寄せられてしまうからです。

正確な予測をしようとするのではなく、むしろ自分の予測が外れることを常に想定しながら、リスクをコントロールして最悪の事態を避け、たまにやってくる大きなチャンスを逃がさないように心がけることが重要ではないでしょうか。

特定のものに決め打ちをするのではなく、数多くのアイデアを試し、その結果として数多くの失敗をし、その中からうまくいくものを大きく伸ばしていくのです。

特定の予測や特定の計画にこだわるのではなく、環境の変化に柔軟に対処します。リスクは恐れずに、数多くの小さな失敗とともに、いくつかの大きな成功を手にするのです。これは、不確実性と上手に付き合い、それをうまく活用するという姿勢です。

大きな損失を被って全財産を失えば、再チャレンジが困難になってしまいます。うまくいかないときに再起が不能になるほどの致命的な損失を被って、うまくいくかもしれない絶好の機会を永遠に失ってしまう……そうならないようにすることが重要です。

成功の秘訣は「期待値」

ランダムな出来事の積み重ねについて、1回ごとの結果を正確に予測することはできません。しかし、その発生確率を捉えることはできるはずです。

確率的に記述できる不確実性には確率的に対処しましょう、ということです。確率的に対処するというのは、「期待値」で物事を考えるということです。

期待値とは、起こりうるすべての結果に、その結果が起こる確率をかけて合計した平均値です。この期待値というものは、1回1回の結果には明確に現れず、数多く試していくことによって次第に浮かび上がってくるものです。

したがって、仮に期待するリターンがプラス(=期待値がプラス)のやり方を見つけたとしても、それが直ちに短期的な成功を保証するわけではありません。だから、まずは長期間、そのやり方を続けてみることが必要となってくるのです。

正しい見積もりのもとに判断を繰り返していけば、やがてその確率(期待値)が姿を現し、長期的には成功の可能性が高まっていきます。

希望を持つこと自体は悪いことではありませんし、それがなければ株に投資しようという気持ちも生まれてこないでしょう。しかしながら、それはあくまで希望であって、現実はその通りにならない可能性があることを知っておく必要があります。

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[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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