バブルも暴落も… 「群集心理」を理解すれば株式市場の裏側が見えてくる

朋川雅紀
2024年7月25日 12時00分

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投資における「群集心理」を理解する

バブルによる株価暴騰やその後の株価暴落は、「群集心理」の影響を受けて起こることもあるため、投資家にとって「群集心理」を理解することはとても有意義です。さらに、「群集心理」を利用する心構えがあれば、パフォーマンスの向上も期待できます。

通常、「群集」という言葉は、国籍、職業、性別、その他何らかの基準によってまとめられた個人の集団を意味すると言えるでしょう。

一方、投資、あるいは心理学の観点からは、「群集」という表現には全く異なった意味があります。特別に与えられた環境の下で、そして、そういう環境においてのみ、特定の人間の集合体が、それを構成する個々人の特性と際立って異なった性質を示す、ということです。

そこでは、特定の集団における全ての個人の感性と理性が同一の方向を向くことになり、意識的な個性は消えてしまいます。もちろん一時的ではありますが、きわめて明快な特性を持つ集合体としての心理状態が形成されることになるのです。

厄介な「群集」の特徴

群集の最大の特徴として、以下の点が挙げられます。

まず、それを構成する人々が誰であれ、群集は、いったん形成されると、それ自体が一つの人格を持つようになります。そして、群集を構成する一人ひとりが、同じ状況下でおそらく取っていたであろうものとは全く異なった思考や行動を選ぶようになります。

個人としては考えられないような行動も、群集の一員としてならば可能となります。個人としては決して浮かばないようなアイデアも、群集の一員になると思い浮かぶようにもなります。

その他にも、群集には次のような特徴があります。

まず、群集を構成する人々は、たくさんの人と一緒にいるというだけで、無限の力を得たような気分になります。しかも、群集の中の一人ひとりは名前を持たないという特徴を有し、したがって責任を問われないので、その行動を抑制するメカニズムが働かなくなります。

次に、群集の現れ方や今後の方向を決定するうえで、グループの中で群集を作るエネルギーがどのように伝播していくのかという点ですが、群集にあっては、あらゆる感情や行動はあっという間に伝播します。

そして、これは最も重要なことですが、群集においては判断能力の低下が起こります。これこそが、群集の一員としての個人と、群集を離れた一個人との最大の違いです。

伝播現象も、結局は判断能力の低下によってもたらされるのです。まるで催眠術にかかったかのように、ある種の能力が停止する一方で、他の能力が興奮状態になります。何かに取り憑かれたかのように、無謀なことでもやろうとします。

群集が持つこのような傾向は、催眠術にかかった人よりも厄介かもしれません。なぜなら、市場のセンチメントがある一方向に大きく傾いた場合、その流れに反して自分の意思を貫くことの出来るほどに強い精神力を持った人間は、非常に少ないからです。

バブルを生んだ群集の変化

このように群集のメンバーは、意識の世界を離れ、無意識の世界に飛び込んでしまいます。感情や思考は、周りからのささやきや伝播現象に誘導されて、一つの方向に向かいます。群集の一員としての個人は、群集を離れた時とは同一人ではありません。まるで制御が不能になったロボットのようです。

しかも、群集の一員というだけで、人間は野性の状態に近づいてしまいます。一人ひとりの人間は、文明人たる存在であっても、いったん群集になると、本能によってのみ行動する動物になり下がります。

つまり、野生の動物のように獰猛で、思慮は浅く、エネルギーがみなぎってきます。そのため市場からのメッセージに簡単にコントロールされ、明らかに自分の利益につながりそうもないようなことでも喜んで行ってしまいます。

群集が個人と違うのは、行動だけではありません。群集の一員になった人間は、まず思考と感情の両面で決定的な変化を遂げます。

これは、慎重な投資家を大胆な投資家に、バリュエーションを大事にしていた投資家をモーメンタムを重視する投資家に、長期投資家を短期トレーダーにしてしまうほどの大きな変化です。

たとえば、1990年代の後半に起こったインターネット・バブルは、インターネットは世の中を変える産業革命であるという集団的な解釈という形がなければ発生しなかったでしょう。

群集は個人よりも劣るのか?

それでは、「群集の思考能力は個人よりも劣る」という結論でいいのでしょうか。

再び、インターネット・バブルについて考えてみたいと思います。当時を振り返って、インターネットの登場によって世の中は大きく変わった、という考えに異論を唱える人はほとんどいないでしょう。その観点から言えば、群集はインターネットというビジネスに対して正しい解釈を下したと言えます。

一方、集団心理によって、当時多くの投資家は「インターネット株は10年くらいは上がり続ける」という極端な考えにさえ疑問を持たなくなっていました。これは明らかな判断力の欠如によるものです。

これらを踏まえて、「インターネット・バブルに乗らなくてよかった」、あるいは「バブルというものには乗るべきではない」という結論を出すことも出来ます。

もしくは、いずれは破裂するであろうバブルというものを理解し、降り時をわきまえる自信のある投資家であれば、むしろ「バブルには出来るだけ乗るべき」という意見もあると思います。

要は、投資家として、群集による集団心理というものを深く理解し、どのように市場と向き合うかは自分自身で決める必要がある、ということでしょう。

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[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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