初心者が知らない「株価が上がる」たったひとつの理由

岡田禎子 2020/06/22 9:10

株式投資はよくわからない?

「人生100年時代」という言葉が世間に躍る昨今、そろそろ株式投資を始めないとまずいかも……と漠然と思いながらも、二の足を踏んでいる方も多くいます。そして、その理由は「株式投資ってなんだかよくわからないから」であることが結構あります。

では、何が「よくわからない」のでしょうか? 売買の仕組みがわからない? チャートの読み方がわからない? 財務諸表の見方がわからない? あるいは、どの証券会社を選べばいいかわからない? さまざまな「わからない」が考えられますが、その最たるものは「どの株が上がるかわからない」でしょう。

たしかに、何が入っているのかわからないバケツに手を突っ込むのが怖いように、上がるかどうかもわからない株にお金を注ぎ込むことに恐怖を覚える人も多いでしょう。だからこそ、「株はギャンブルだ」「親に、株だけは絶対にやるなと言われている」という人もいるのだと思います。

でも実は、どの株が上がるかなんて誰にもわからないのです。

もしかすると、経験豊かなベテラン投資家は株価を未来を読めるとか、高度なコンピューターで何百億と運用している機関投資家には敵わない、というふうに思っているかもしれませんが、素人もプロもAIも、誰も「どの株が上がるかわからない」という同じ土俵で勝負をしているのが株式市場なのです。

なぜ株価は上がるのか?

そもそも、なぜ株価は上がるのでしょうか? それは「買いたい人が売りたい人より多いから」の一言に尽きます。非常にシンプルですが、これが真実です。株価が上がる理由は、これ以外にはあり得ません。

アイドルのコンサートチケットで考えてみましょう。人気のアイドルともなれば、一般販売は抽選制。それに外れた人は、インターネットの流通市場へ探しに行きます。そこでは、定価5,000円のチケットが10,000円で転売されています。2倍の値段にもかかわらず、次々と取引が成立していきます。

コンサート主催者が5,000円の価格をつけたチケットが、倍額の10,000円となり、それでも争奪戦となるのはなぜでしょう? それは「大人気のアイドルだから」です。

では、なぜそのアイドルは人気があるのでしょう? 「顔が可愛いから」「歌が素晴らしいから」「MCが面白いから」「握手会があるから」……などなど、人気の理由はファンの数ほど考えられます。でも、とにかく「人気だから」→「チケット枚数より買いたい人が多いから」→「チケットが高くなる」のです。

人気度が上がれば上がるほどチケット価格は上昇していきます。もしこれが引退コンサートのチケットなら、プレミアム化して、さらに価格が上がるでしょう。転売目的で買う人も参戦して過熱化し、激しい争奪戦はコンサート直前まで続きます。

ある日、買いたい人が増える理由

では、これを株に置き換えてみましょう。株は、期限のあるチケットと違って常に流通しています。したがって、株価が上がるということは、ある時点で、売りたい人の数よりも買いたい人の数が増えたということになります。「その株が欲しい」のは、実際には「いま、その株が欲しい」ということです。

それでは、なぜ買いたい人が増えるのでしょうか? たとえば、新しいスタイルのステーキチェーン店。立ち食いながら良質なお肉を手頃な値段で食べられるとあって、店の外に長い行列ができるほど繁盛しています。その様子を見た人は、「この会社はものすごく儲かっているぞ!」とピンと来ます。

企業は、利益の一部を配当金として株主に還元します。株を持っているだけでお金が入ってくるのですから、儲かっている会社の株は誰もが欲しがります。

しかし、株の数には限りがあります。同じようにピンと来た人が多いと、アイドルのコンサートチケットのような争奪戦が起きます。さらに、ニューヨークに出店するなどのニュースが流れると、誰もが「もっと儲かるに違いない!」と考えるようになって、その株に殺到。人気度は爆発し、株価は暴騰します。

ところで、このステーキチェーン店が実際に儲かっているかどうかは、ここでは問題ではありません。多くの人が「儲かるだろう」と考えるだけで、その会社の株は人気度が上がり、株価が上がります。

実は、儲かっているかどうかは関係ない

その株を買おうとしている人の中には、「配当金が増えるかも」「株主優待が充実するかも」と思って株を保有したい人もいれば、「今のうちに買っておけば、世界展開して大儲けした際に株価はもっと上がるはず」というふうに将来を見据えている人もいます。

その一方で、「この株を欲しがる人はまだまだ増える。いまここで買って、ある程度、株価が上がったところですぐに売却すれば儲けになる」という思惑から買いに入る人もいます。

このように、その株を買いたい人の理由は様々です。誰もが同じように「儲けた分け前(配当金)」をもらおうとしているのではなく、各々がいろいろな連想をめぐらし、人それぞれの思惑を膨らませています。そもそも会社が儲かっているとは考えていないことも往々にしてあります。

ステーキチェーン店にしても、「人気は一時的なものに過ぎない」「ニューヨーク進出は失敗するだろう」と考える人も当然います。さらに、もっと安いときに株を手に入れておいたから「そろそろ売り時」と考える人もいるでしょう。つまり、売りたい人の理由も様々ということです。

いずれにしても、そうやって売りに出た株に対して、圧倒的に買いたい人の数が多いために、たとえ実際には儲かっていなくても、株価はどんどんつり上がっていくのです。

買いたい・売りたい、思惑は人ぞれぞれ

ここでは「儲かっている(と多くの人が考える)会社」を例に挙げましたが、株の世界で人気度が上がる理由はそれだけではありません。

AI関連やバイオ関連といった旬なテーマの企業には多くの注目が集まるため、買いたい人が増えます。つまり、株価が上がっていくと考えられます。すると、さらに買いたい人が増えて、株価はますます上がっていきます。赤字のベンチャー企業の株価が上がるのは、こういう理由からです。

他にも、ずっと業績が悪く株価も下がりっぱなしだった企業に対して、「もうこれ以上、悪くなることはないだろう」と考えて買いに回る人が増え、再び人気と株価を取り戻すこともよくあります。テレビの生放送でコケた子が人気になるなど、何がきっかけで売れるかわからないアイドルと同じです。

さらに株の場合は、過去の株価の動きを分析した結果、「この先は上がる」というシグナルが出たから買う、という人もいます。儲かっているか、人気度が上がっているか、といったこととは関係なく、単純に株価の動きのみを見て、そう判断しているのです。

すべての人の思惑を知ることはできません。でも、なんにせよ、その株を買いたい人が売りたい人より多ければ株価は上がり、買いたい人が減って売りたい人が増えれば株価は下がる。株価が上がる理由は、かくもシンプルなのです。

利益確定を忘れずに

ピンと来た株をすかさずゲット。その後、思惑どおりに株価が大きく上がったとしても、実は、まだ儲かったことにはなりません。いま持っているのは、あくまで株式。それを売却してお金に換えるまでは、購入費用を支払った分だけ財布の中身はマイナスなのです(配当金などは除く)。

「株を買ったら、いつの間にかものすごく儲かっている」と自慢する人がいますが、株は売却してはじめて利益になります。売却せず保有したままでは、気づいたときには大損になっている可能性もあります。人気化する理由も様々なように、人気が薄れる理由も様々だからです。

人がその企業をどう思っているか。その思惑で、株価は上がったり下がったりします。言い換えると、株価チャートや財務諸表を読めなくても、「人の思惑」を読むことができれば、株はそんなに難しいものではありません。

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2020/06/22
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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)【株窓アワード2019大賞】 →この執筆者の記事一覧へ

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