なぜ株価の暴落がわかるのか? 一流の投資家がやっている「正しい期待」と「心の準備」

朋川雅紀
2022年3月11日 17時30分

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

マーケットでは何事も起こり得る

マーケットでは何かが起こる可能性が常にあり、何があっても不思議ではありません。この点については、新型コロナウイルスのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻によって株価が不規則に乱高下するマーケットを経験した投資家であれば、全くその通りであると同意してもらえると思います。

しかしながら、ここで問題なのは、マーケットのこの特性をちゃんと理解していればそれに合った行動を取れるはずなのに、多くの投資家の実際の行動はあまりにもこれとかけ離れたものになってしまうことです。事実、本当に投資家が「いつ何が起こってもおかしくはない」と信じていれば、失敗はかなり減るでしょうし、一貫して成功する投資家は増えると思われます。

ところで、「何事も起こり得る」とどうして言い切れるのでしょうか。この説明は比較的簡単と言えます。マーケットを構成している要素に注目し、それがどう機能しているかを見ればいいのです。

マーケットが何であれ、その最も根本的な構成要素とは、そこにいる投資家たちです。個々の投資家の力が合わさることで大きな力となって、買値を上げたり売値を下げたりして株価を動かしているわけです。したがって、大きな力がかかるほうならどこへも行ってもおかしくないのです。

値動きは投資家の思い次第

なぜ投資家は買いを行うのでしょうか。それは、将来のある時点で、さらに高い値段で売れると信じているからに他なりません。これと同じことは、売りを行っている投資家にも当てはまります。投資家が売りを行うのは、将来のある時点で、売ったときの値段よりも安い値段になると信じているからです。

これで、全ての値動きに「市場参加者が将来について信じているもの」が反映されていることがおわかりになったのではないでしょうか。より正確に言うと、全ての値動きは、何が高くて何が安いかについての個々の市場参加者の思いによって決まる、ということなのです。

市場動向の根底にある力学は非常に単純です。

どのマーケットにも、たった3つのタイプの市場参加者が存在しています。価格が安いと信じている投資家、価格が高いと信じている投資家、そして、マーケットを見ながら価格が安くなるか高くなるかの判断を待っている投資家です。

  • 価格が安いと信じている投資家
  • 価格が高いと信じている投資家
  • マーケットを見ながら価格が安くなるか高くなるかの判断を待っている投資家

価格が動いているか停滞しているかは2つの大きな力(価格が上昇すると信じている投資家と価格が下落すると信じている投資家)の間での均衡や不均衡に関連している、ということを知っているなら、いまマーケットで何が起きているかを理解することは比較的容易なはずです。

2つの力(グループ)が均衡していれば、価格は停滞します。なぜなら、一方がもう一方の力を吸収するからです。反対に、力関係が不均衡であれば、価格はより大きな力を持つ方向へと動いていくことになります。

マーケットの厳しい現実

こういう視点からマーケットを見てみると、将来に対する自分の思いの実現を望んでいるあらゆる投資家が、マーケットの不確定要素になっていることに気づきます。自分の取引が儲かるかどうかは世界のどこかにいる他の投資家にかかっている、ということです。

もっと言うと、何が高値で何が安値かというあなたの思いを打ち砕くのは、たったひとりの他の投資家がそのきっかけになることもあり得る、ということです。

これがマーケットの厳しい現実です。しかし、一流の投資家であれば、このことを冷静に受け止めることができます。そして、取引をする前に、一貫してリスクを特定しています。だからこそ、取引が機能していないとマーケットが教えてくれるときに方針転換ができるのです。そして、自分の思惑通りにマーケットが動いていけば、利を伸ばすことができます。

私たちが知らないこと

私たちには知っていることがたくさんあるかもしれませんが、知らないこともたくさんあります。投資家の行動に関しても、全ての市場参加者の心を読み取ることはできませんから、彼らは何がしたいのかはわかりません。

テクニカル分析によって、集団としての行動の方向性が推察できるときはありますが、いつも完璧にわかるわけではありません。例えば、ある銘柄について、ある大手機関投資家が淡々と売りの機会をうかがっていて、彼らの独自の判断で大きな売りを仕掛け、その動きに追随する他の投資家が現れたことで株価の動きが急変しても、何の不思議はありません。

多くの投資家は、自分が見たり聞いたり感じたりするものしか信じようとしません。そして、事前にリスクを明確にすることをせず、必要で適切な売りも実行できません。それはおそらく、そうすることの必要性に気づいていないからだと思われます。必要ないと感じてしまうのは、今後の株価の動きが自分の考えているようになると思い込んでしまうせいでしょう。

リスクを前もって特定しないのは、多くの投資家が犯しやすくて、最も高くつく過ちです。一流の投資家は、この過ちを排除することができます。彼らは予期せぬ未知の事態にいつも備えているのです。

マーケットへの正しい期待

一流の投資家は、何事も起こり得るということを十分に理解し、不確定要素の存在を認めています。そのおかげで、取引結果に過度の期待をすることはありません。

期待が高ければ高いほど、期待通りの結果にならなかった場合の精神的かつ金銭的な苦痛は計り知れません。自分はマーケットから提供されている情報の一部しか認識できていないという謙虚な姿勢を持つことで、精神的かつ金銭的苦痛から解放されるのです。

未知の不確定要素は常に存在しています。一流の投資家は、そうした未知の不確定要素を考慮して、心の準備をしています。

「株価に影響を及ぼす可能性のある隠れた不確定要素が常に存在する」と信じていれば、全ての取引の結果が想定から外れることもある、ということを理解できるはずです。期待は裏切られることがあるという「心の準備」があれば、ひょっとして自分は間違っているのではないかと考えることができます。

マーケットでは何事も起こり得る

ポジションを持つ前にはできるだけ多くの情報を入手して、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析を入念に行う投資家ですら、一旦ポジションを持ってしまうと、自分の意思決定を正当化する材料ばかりを探すようになり、普通なら気がつくような悪材料にも目が行かなくなります。

心の準備ができているということは、どういう市場環境でなら自分の強みを発揮して取引を優位に進められるかがわかっていると同時に、ある特定の取引はうまくいかない可能性があることを完全に受け入れられているということです。

マーケットでは「何事も起こり得る」ということをしっかり受け止め、いつも自分に言い聞かせていれば、大きなストレスに悩まされるリスクは大幅に減少します。私自身は、取引を実行する前に必ず複数のリスク・シナリオを用意し、そうなった場合の対応策を事前に決めています。

[この執筆者の記事]
[執筆者]朋川雅紀
[ともかわ・まさき]個人投資家・株式投資研究家。大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立する。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。かぶまどアワード2021スマニュー賞
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