株価はいつか必ず下落する。いまこそ知っておきたい、株価下落との向き合い方

朋川雅紀
2024年9月26日 17時00分
Isaac Newton under an Apple Tree, Holding an Apple, Contemplating His Theory, Reflecting on Physics, Science, and Genius.

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株は下がるもの

一般的に、多くの個人投資家は、株を買う前はいろいろ悩んでも、いったんポジションを保有すると、上がることばかり考え(祈り?)がちです。特に、しばらく上昇が続いたりすると、下がることへの意識は薄れてしまいます。

そのため、株が下がると動揺してしまいます。「株は下がるものである」という意識が低すぎると言えます。株価が下がったときのことを想像して心の準備をしておくようなことはなく、そのときにどのようなアクションを取ればいいかも考えていません。

株価の動きを理解する2つの法則

株価の動きを説明するために、物理の2つの法則を引用することがあります。それは、「重力の法則」と「慣性の法則」です。

・重力の法則

上がった株は下がります。どんなに素晴らしい業績を出し続けたとしても、上がった株は必ず下がります。それは、投資の目的が利益を上げることにあるからです。買った株をどこかで売らなければ利益にはなりません。

高いところに上げられた物体がいつかは下に落ちるように、上昇した株価は、様々な要因によって下落に転じることがあるのです。

・慣性の法則

一度上昇トレンドに入った株価は、しばらくの間、そのトレンドを継続しやすい、という現象です。これは、多くの投資家が過去の株価の動きを参考にして投資判断を行うため、一度上昇トレンドになると、さらに多くの投資家が買い注文を出すことで、上昇が加速する可能性があるからです。

下落についても同様のことが言えます。一度下降トレンドに入った株価は、しばらくの間、そのトレンドを継続し、下げ続けるということです。

急激に上昇するほど下落も大きい

株価の上昇には、何らかの理由があります。例えば、プラスの材料が出て市場から注目されるようになると買われやすくなり、株価は上昇していきます。株価が上昇すると、それを知った投資家たちが集まってきて、さらに買われていきます。

これが続くと、そのうちに実力(収益力)が過大評価されて、行き過ぎた株価がつくようになります。

その状態で人気が落ちて株価が一度下落し始めると、なかなか止まらなくなります。上昇の流れに乗って株を買った投資家たちが途端に不安になり、売りが売りを呼ぶ状態になるため、急激に株価が下落していきます。そのため、急激に株価が上昇すればするほど、下落も大きくなるのです。

株式市場は定期的に下落する

ここで、アメリカ株式市場を例にして、株価の動き(下落の特徴)を説明したいと思います。

かなりおおざっぱですが、アメリカ市場については、直近の高値から見て、3~6か月ごとに5~10%の調整、3~4年ごとに20%の暴落、そして近年は、おおよそ10年ごとに50%前後の大暴落が起こる傾向にあります。

では、このような株価の下落に対して、どのような姿勢で臨めばいいのでしょうか。株価の下落に対して、どのような姿勢でそれに対応するかを事前に決めておく必要があります。

いくつかの対応策が考えられますが、その中には「何もしない」という考え方もあります。歴史を振り返れば、株価のリカバリー(下落前の株価に戻る)は確実に起こっていますので、下手に売りを行って、売ったところよりも高いところで買い戻すことになれば、元も子もありません。それを避けるために、何もしないと決めることもアリだと思います。

株価下落への有効な対応策

では、私の対応策を簡単にしたいと思います。今回は長期投資に絞ってお話しします。

まず、3~6か月ごとに起こる5~10%の調整については、特に何もしません。

3~4年ごとに起こる20%の暴落については、株式市場が底打ちして2年近く経過した頃から、銘柄の入れ替えを徐々に進め、株価の下落に対する耐性のあるディフェンシブ銘柄(βの低い銘柄)を増やしていきます。そして、想定どおり暴落が起きれば、一気に攻撃的なポートフォリオにシフトします。

そして、2000年のインターネット・バブル崩壊、2008年のリーマン・ショック、2020年の新型コロナウイルスによるパンデミックのような、おおよそ10年に一度あると考えられる50%程度の大暴落については、前回の大暴落が起こってから7~8年程度経過した頃から、市場を揺るがす可能性があるイベントがないかを注意深く観察しつつ、その可能性が見えてきたら、株を減らして、現金や債券の比率を引き上げます。株価が絶好調であったとしても、上昇相場が8年も続いたら、少しずつ株の比率を下げていきます。

「株価が下落した後に売る」ということだけは避けなければなりません。下落した後は、むしろ買い向かわなければなりません。

そうは言っても、株価が下落する前にそれを察知して売り始めるということは、多くの人にとってかなりハードルが高いでしょう。

そこで私からの提案は、株のようなリスク資産の比率を常に一定に保つ、という方法です。そうすると、株価が下がれば買わなければなりませんし、上がれば売らなければなりません。シンプルですが、とても有効な方法だと思います。

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[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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