ファストリ、モノタロウ、レノバも… 安値更新は果たして「買い」のサインなのか?

佐々木達也
2022年1月19日 17時30分

安値更新について考える

アメリカ市場のS&P500、ダウ平均株価などが過去最高値圏で推移するなか、日本株の出遅れが目立つ結果となった2021年相場。しかし、そうした中でも、株価の勢いのある銘柄はさらに買われて、上場来高値を更新するなど強い株価推移が続いています。

たとえば、EV(電気自動車)関連。自動車部品大手のデンソー<6920>や車載のリチウムイオン電池向け銅箔などの日本電解<5759>、パワー半導体などの富士電機<6504>といった銘柄などが、年末時点で上場来高値を更新しました。

また、経済や産業のデジタル化も加速し、データセンターやクラウドへの投資もさらに進んだことから、東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>といった半導体関連の主力銘柄も、昨年末に上場来高値を更新しています。

年始から安値更新の銘柄も…

これらハイテク株を筆頭に様々な銘柄が高値を更新する一方で、コロナ禍による打撃などから業績が戻りきらない銘柄も多数あります。こうした銘柄は下落トレンドにより、安値更新が続いています。

安値更新(あるいは高値更新)には「上場来」「昨年来」「年初来」の3つがあります。

「上場来」は、その銘柄が株式市場に上場して以来の安値(高値)です。「昨年来」は1〜3月に使われ、前年の1月1日から直近までの期間が対象となります。4月以降は、「昨年来」に変わって「年初来」が使われます。「年初来」はその年の1月1日から直近までの期間が対象です。

2022年の大発会(1月4日)を終えた時点で、ヤフーファイナンスで安値更新銘柄を確認したところ、早くも約50銘柄が該当していました。つまり、年の始めの取引から昨年来安値を更新したわけです。

その中には、東証マザーズの銘柄が多数ありました。マザーズ市場は昨年末にかけてIPO(株式新規公開)が相次いだこともあり、換金売りによる需給悪化でマザーズ指数も軟調に推移しています。その影響で新興小型成長株の多くが安値圏に沈んでいるのです。

安値更新の意外な銘柄たち

・ファーストリテイリング<9983>

大型株で代表的な安値更新銘柄はファーストリテイリング<9983>です。2021年3月の11万円超えの高値から下落トレンドが続いており、新年4日の大発会でも昨年来安値を更新しました。

背景には、2021月に発表された日銀のETFの買い入れ方針の変更が影響しています。それまで日銀は、ETFによる日本株の買い入れに際して日経平均型とTOPIX型の両方を採用していましたが、これをTOPIX型に一本化しました。

日経平均株価は採用銘柄の株価を合計し、序数と呼ばれる調整数値で割り算して算出されます。そのため、額面の大きいファーストリテイリングの株価の上下が日経平均に与える影響(寄与度)が大きく、テクニカルな理由からも買われていましたが、こうした反動が株価に表れていると言えます。

また、2020年のコロナ禍では巣ごもりなどからヒートテックや部屋着などの需要が伸びた反面、毎月発表される既存店の売上高は前年割れの傾向が続いていることも嫌気されています。直近では、オミクロン株の感染が拡大していることも背景になっていると思われます。

・MonotaRO<3064>

業績好調な成長株でも下落トレンドが長く続くケースかあります。間接資材や工具などネット販売するモノタロウMonotaRO<3064>)もそのひとつ。昨年2月の高値3,470円から直近でも昨年来安値圏に沈んでいます。

モノタロウは2010年以降、業務用資材のネット通販の広がりを追い風に、前年比で売上高は平均2割の成長を続けてきました。しかしながら、半導体の供給不足や原材料費の高騰に対する懸念、前年の株価の急伸の反動などから、足元では下落トレンドが続いています。

長期の月足チャートで見てみると、これまでずっと右肩上がりの上昇が続いていたため売り場がなかったことも、株価の調整局面の背景となっています。

・レノバ<9519>

再生エネルギー関連でここ数年、大相場となっていたレノバ<9519>も年末以降、昨年来安値の更新が続いています。

レノバは太陽光やバイオマス、風力などの各種再生エネルギー事業を手がけています。昨年12月24日、応募していた秋田県由利本荘沖の洋上風力開発プロジェクトに選定されなかったと発表し、その後もストップ安が続きました。

このプロジェクトは経済産業省、国土交通省が主導して推進し、レノバも洋上風力発電への参画が期待され、株価は昨年初の4,000円処から9月には6,000円を上回っていたこともあり、失望売りが殺到しました。

・陸運株

コロナで打撃を受け、その後の感染一服でも業績が元に戻らない業種も、株価が安値圏で推移しています。その代表が、鉄道やバスなどの陸運業です。テレワークの普及による定期券の利用減や出張などの移動減少で、徐々に人流が戻る中においても鉄道各社の業績は厳しい局面が続いています。

直近では小田急電鉄<9007>などの私鉄大手、JR西日本(西日本旅客鉄道<9021>)、JR東海(東海旅客鉄道<9022>)などのJR各社も昨年来の安値圏で推移しています。

鉄道などの業種は構造的に固定費の負担が大きいため、通勤・出張といったビジネス利用の減少による業績への打撃が大きくなっています。各社とも特急料金など一部料金の値上げや減便・ダイヤ改正による合理化策を打ち出していますが、コロナ以前への本格的な回復には時間がかかりそうです。

安値更新銘柄は「買い」なのか?

ところで、このような安値更新銘柄は、果たして「買い」なのでしょうか? 「安く買って、高く売る」が投資の基本であるとするなら、最も安くなったところ(=安値更新)は、まさに千載一遇のチャンス!とも思えそうです。

特に「逆張り」のスタンスをとる投資家であれば、昨年来安値や上場来安値の銘柄を見ると、つい触手が動いてしまう場面もありそうですが、株式相場にはこんな格言があります──「山高ければ谷深し」。

安値更新がいつ終わるかはわからない

下落トレンドが続いている間は「戻り売り」の圧力も強まるため、株価が底を打つまでには時間がかかる場合もあります。このようなケースでは信用取引による買い方の残高が積み上がっているケースもあり、「見切り売り」によるもう一段安も想定すべきでしょう。

安値を更新している銘柄は、さらに安値更新が続く可能性が結構ある、ということです。業績が悪化しているようなケースでは、株価の下落でPERが低下して見かけ上は割安になっていても、業績の下方修正によって結局は割高になってしまう……という場合もよくあるので注意が必要です。

売りが一巡して、買い方・売り方ともに徐々に決済されていく「日柄整理」が進み、業績にも改善の兆しが見えた際には、いよいよ「底入れ」のタイミングとなります。ただし、具体的にどこが「底」なのかは誰にもわからず、株価が上向きになって初めて知ることができます。

もし安値更新銘柄を手がけるなら、逆張りで資金を一気に投入するようなことはせず、資金を分割して買い下がって行き、じっくりと反転を待つ、という姿勢がいいでしょう。その場合でも、いつまで待っても反転しない可能性があることは、念頭に置いておくべきです。

安値更新銘柄から相場の行方を知る

新興株か大型株か、成長株か割安株か、といった物色のトレンドは、季節性や金利、景気の動向などで大きく変わります。安値更新・高値更新のランキングを眺めていると、市場参加者の物色の方向性を、なんとなくですが掴むことができます。たまにはチェックして、日々の投資に役立ててください。

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[執筆者]佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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