株主優待だけで銘柄を選ぶと「逆張り」になるかもしれない。その隠れたリスクとは

石津大希 2020/11/18

株主優待は家計にうれしいものが多く、それを目当てに株式投資をしている人もたくさんいます。なかには、業績や財務内容、株価さえもまったく見ずに銘柄選びをする人も。でも実は、株主優待が魅力的な銘柄は、特有のリスクを抱えていることがあるそうです》

株主優待で銘柄選びはアリ?ナシ?

個人投資家にとって、年に1〜2回受け取れる株主優待は楽しみのひとつ。

  • レストランでの割引
  • 買い物のキャッシュバック
  • 自社商品の詰め合わせギフト
  • 通販で使えるポイント

など、お得感をイメージしやすいものが多いため、株主優待の内容を基準に銘柄を選ぶ人もいるのではないだろうか。実際に株主優待としてその会社の商品が送られてきたり、割引が使えたりすると、嬉しいものである。

その半面、「株主優待がいいと思って買ったけど、株価はなかなか上がらないな……」と感じたことがある人も少なくないのではなだいろうか。そこには、優待人気がもたらす「あるリスク」が隠れている。

株価が過大評価される「ミスプライシング・リスク」とは

優待銘柄を買う上で気をつけたいことのひとつが「ミスプライシング・リスク」だ。

これは、簡単にいうと「株主優待が人気なために、実力を超えたレベルにまで株価が上がってしまうリスク」。株式投資における判断基準のひとつとなるPER(株価収益率)などのバリュエーション指標が、優待の人気ゆえに高めに歪んでしまうということだ。

もちろん、株主優待が人気な銘柄がすべてそうだということではないが、なかには、業績が軟調で普通に考えれば高い評価は得られないはずが、株主優待の人気によって高めのバリュエーションがついているようにみえる銘柄もある。

ここで、株主優待が人気の2銘柄を取り上げてみよう。

・日本ハム<2282>

  • 株主優待……自社グループ商品など
  • PER……約20倍(2020年10月中旬時点/市場予想ベース)
  • 近年の動向……競争激化や原材料・宅配料金の高騰、人手不足、水産品の相場下落といった外部環境の悪化に加え、海外事業の軟調によって減収減益の傾向が強い

・ダイドーグループホールディングス<2590>

  • 株主優待……グループ商品の詰め合わせ(6,000円相当/継続保有期間:半年以上)、記念品(継続保有期間:5年以上)
  • PER…… 約80倍(2020年10月中旬時点/市場予想ベース)
  • 近年の動向……国内飲料事業の販売数量の減少により、減収の傾向が強い

2つの銘柄は食料品や飲料を手掛けていることから知名度が高く、株主優待の内容も人気を集めやすそうだ。その結果、業績が軟調な銘柄にしては高めなPERがついている。この数字は、ほかの食料品セクター銘柄のPERと比べても高めだ。この点で、「ミスプライシング」されているといえる。

株価の動きを見てみると、短・中期的に見れば新型コロナウイルスに対する過度な警戒感が後退し、相場全体が上昇する中でしっかりとした動きの印象も受ける。

しかし、より長期的な視点で見てみると、軟調な業績に対する警戒感が強まり出した頃(日本ハムは2017年6月、ダイドーは2018年5月)から、株価は長い下落局面にあるようにもみえる。

厳しい事業環境や個別のネガティブな材料、それらを背景とした軟調な業績といった経済活動状況を考えると、この長期的下落トレンドに違和感はない。したがって、いくら優待目当てとはいえ、このような銘柄に長期投資するとなると、逆張りのような不安感がつきまとうのではないだろうか。

高PERの根拠は「将来性」か「優待人気」か

株式投資におけるバリュエーションとは、企業の価値に対して株価が妥当かどうかを評価することだが、そこではよく「◎年分の利益を織り込んでいる」といった表現がされる。これは、「今後も利益が成長する見込みだが、それを現在の株価がどれだけ〝先取り〟しているのか?」といった見方だ。

現在の高いPER(つまり、割高な株価)は、実際の利益成長によって正当化できることがある。言い換えると、この見方をすることで、現時点でどれほどの利益の伸びが期待されているのか、を推し量ることもできるわけだ。これにより、どんなに高PERであってもさらなる買いが入ることもある。

だが、株主優待の人気だけで過剰に買われている銘柄の場合、高いバリュエーションのベース(根拠)は「利益の伸びの可能性」ではなく、単に「優待が人気でたくさん買われているから」だ。

バリュエーションが高めだと、よい銘柄に見えてしまうことがある。優待銘柄は知名度が高いことが多いため、その点も、よく見えてしまう理由のひとつかもしれない。しかし、バリュエーションが高めだからといって、必ずしも市場が業績を高評価しているわけではないのである。

根拠のある高評価なのか、それとも、ミスプライシングによって高評価に見えているだけなのか。それを見分けるには、業績や財務内容を把握し、株価に対する評価を持つことが重要になるだろう。

優待銘柄のリスクを知って、自分に合った銘柄選択を!

もちろん、株主優待の手厚さを軸に銘柄を探してみるのは個人の自由だ。なじみ深い銘柄が多いので、選ぶのも楽しいだろう。たとえ株価が下落して損を出してしまっても、「株主優待がもらえたから満足だ」とある程度ポジティブに考えられることも、立派なメンタルコントロールといえる。

ただし、株主優待は突然廃止や改悪されることもあるので、その点には注意を払っておきたい。また、いくら株主優待がもらえても、それを超える含み損になっていないかどうかは気にしておいたほうがいい。

そして、「株主優待はあくまで株主還元。やはり長期的な株価上昇を狙いたい」と考えるのであれば、総合的な視点で銘柄を評価し、自分自身で選べるようになる必要がある。株式投資でいちばん得たいものは何なのか、それを理解することが第一歩になるだろう。

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[執筆者]石津大希
石津大希
[いしづ・だいき]外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。旧名義:星野涼太
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