次の波はいつ来るの? 急騰狙いの投資がうまくいかない理由

石津大希
2020年11月9日 8時00分

《株式投資は本来、とても堅実な資産運用です。でも、なかには、とても投資とは呼べないようなやり方をしてしまっている人もいます。ひょっとしてあなたも、株価が急騰することを期待して持ち続けている株はありませんか? それは投資ではなく、ギャンブルです》

次の急騰を待つために株を買う?

株式投資のスタイルは人それぞれだ。保有する期間や銘柄のタイプ、リスクの度合いなど、あらゆる要素を考えながら、いろいろな投資が実践されている。しかし、なかには「いま一度、自分のスタイルを見直したほうがいいのでは?」と感じさせる手法をとっている人もいる。

2020年9月、携帯電話向け情報配信を手掛けるアイフリークモバイル<3845>が、ミャンマーの新興通信会社であるギャラクシア・ネット・カンパニーと業務提携を結ぶと発表した。これにより、ミャンマー国内での事業展開が可能になるという。

この発表がされて以降、複数の個人投資家から以下のような相談があった。

  • アイフリークはまた急騰しますか?
  • この銘柄は仕手株の傾向が強いようなので今から買い持とうと思うのですが、どう思いますか?
  • 長い目で持っておこうと思うのですが、次に株価が上がるのはいつぐらいで、株価の目安はいくらだと思いますか?

アイフリークモバイルを調べてみると、どうやら短期トレーダーが好む銘柄のようで、1~2年に1回ほどの間隔で株価が倍以上にも跳ね上がり、またすぐにしぼむという乱高下相場を見せている。

「長期投機」は投資にあらず

相談を寄せた人たちは、「そろそろ急騰局面が来るような気がするので、今から買い持つ」という方法をイメージしているようだった。運用方法は人それぞれなので、「株式を長く持って、いずれ来るであろうビッグウェーブ(急騰)を待つ」ことも、ひとつの選択肢としてあってもいいのかもしれない。

だが私が気になったのは、彼らがそれを「長期投資」だと認識していた点だ。

キャピタルゲイン(株価の値上がり益)を狙う長期投資は、一般的に「企業が利益を積み上げる実績、または積み上げられそうという期待を背景とした、堅実な株価上昇」を狙う手法だ。投資に対する中身や理屈の伴った、地に足の着いたやり方といえる。

一方で、「株式を長く持っておいて急騰を待つ」というやり方には、「利益に関する実績や期待」「株価の長期的な上昇」といった要素が薄い。それでは地に足の着いた運用とはいえず、マネーゲームが起こす大相場を目的とした運頼みな手法だ。

「株式を長く持てば長期投資だ」と考えている人もいるかもしれないが、中身や堅実さという重要な特徴が抜けている点を踏まえれば、これは投資とはいえないだろう。いわば、「市場の気まぐれ」を待つギャンブルにすぎない。

ここでは、そのような手法を「長期投機」と呼ぶことにする。

長期投機のデメリット

長期投機は、冒頭に述べた「自分のスタイルを見直したほうがいいのではないか?」と感じざるを得ない方法のひとつだ。それはなぜか。長期投機のデメリットを挙げてみよう。

(1)ビッグウェーブがいつ来るのか、誰にもわからない

アイフリークモバイルのように1~2年のスパンで急騰と急落を繰り返す銘柄は確かにある。だが、それはあくまで「過去」の動きである。

株価は「未来」に対する見方の変化で動くものだ。材料が少なくなれば波が起こる頻度も減るだろうし、場合によっては市場に飽きられ、もう二度とビッグウェーブは来ないかもしれない。そうなれば、保有している時間に対するパフォーマンスは圧倒的に悪くなるだろう。

さらに、急騰のみに期待して業績や利益に目を向けていなければ、ただ株価が下がって損失となる可能性も大いにある。

(2)ウェーブの終わりが見えず、売り時を見失いがち

たとえ運よくビッグウェーブが来たとしても、マネーゲーム的な状況の中では「この銘柄の株価はいくらが妥当なのか?」というバリュエーションの観点がほとんど意味をなさないので、売り時を見極めるのが難しい。

本来、急騰狙いであったとしても「ここまで上がったら売る」といった出口戦略はあらかじめ持っておくべきだが、待ちに待ったウェーブだけに欲で冷静さを失い、終わりが来たことに気付かず、売り時を見失って、結局、満足な利益を得られずに終わってしまう……といったことにもなりかねない。

(3)いつまでも運頼みで、安定した運用ができない

上り時もわからず、売り時も値上がり幅もわからない、というように「わからないことだらけ」となれば、結果的に、運や可能性だけに頼った安定感のない運用が続いてしまう。夢があるといえば聞こえはいいが、長い目で見たパフォーマンスはやはり悪くなる可能性が高いだろう。

もちろん、「株で一発当てたい!」という夢を抱いて長期投機をするのは個人の自由だ。だが、将来に向けた資産形成や、株式投資で安定した利益を得たいというのであれば、ビッグウェーブを追いかけるのはほどほどにしておいたほうがいいのではないだろうか。

株の基礎を学ぶことの重要性

これらのデメリットはひとえに、投資に対する中身や堅実さの欠如から来るものともいえる。だが実は、長期投機のほかにも、デメリットの多いギャンブル的な手法をとってしまっている人は少なくない。しかも多くの場合、自分のやっていることがギャンブルだという事実に気づいていない。

もし、真剣に取り組んでいるつもりなのにうまく利益が伸びないのであれば、いま一度スタイルを見直し、自分が本来目指す方向へ軌道修正を図ることを考えてみたほうがいいかもしれない。

長期投資にせよ短期トレードにせよ、まずは基礎を学び、身につけることが何よりも重要だ。それを着実に実践していくことで、基礎的な手法の利点を活かしながらも自分に合ったスタイルを見つけることができるだろう。

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[執筆者]石津大希
石津大希
[いしづ・だいき]外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。
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