「どれを買うか」より大切な「いつ買うか」 相場の先を読むマクロイベントとは
「いつ買うか?」は銘柄よりも重要
株式投資をするにあたり、だれでも最初は、どの銘柄を、いつ買うか、どのくらいの金額にするか、投資期間はどうしようか、積み立てにしようか……など様々なことを考えるでしょう。
どれも大事なことですが、投資に限らずどんな行動を起こすにしても、最も大切なのは「どんなタイミングで行うか」「いつやるか」ではないでしょうか?
何事も「善は急げ」とはよく聞きますが、投資に限っては「今でしょ!」というわけではありません。タイミングを間違うと、その後の投資効率が全く期待した通りにならないことがよくあるのです。
銘柄探しも大切に感じますが、銘柄は数多く存在し、一つに決めるのも大変です。投資信託のような株式(銘柄)をパック化したものであれば、投資しやすいし、買いやすいのかもしれません。
しかし、証券会社の営業マンに言われるまま購入したことで、高値をつかんでしまったケースもよく聞く話です。また、買ったとたんに悪い経済ニュースが出てしまった、企業の業績悪化ニュースが出て株価が下がってしまった、なんてこともあります。
買うタイミングが悪かったと片づけてしまえばそれまでですが、本当にそうでしょうか? ひょっとすると、従前から知られたスケジュールに沿ってイベント(出来事)が到来し、その結果や内容が原因で下がったのかもしれません。
〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは
株式投資におけるイベントには、経済全体に関する発表や、その銘柄に関するニュース、あるいは会社の重要事項発表などがあります。
どんな投資行動をするにしても重要かつ共通な事は、「いつ買うか?」、「どういうタイミングで買うか?」で、どこの証券会社で買うか、どのくらいの数量(金額)を買うのかよりも大切な決め事であることがわかります。
誰もが知っているタイムテーブルを知る
「どういうタイミングで買うか?」を決定するのに必要なことは、今なにが起こっているのか、これから何が予定されているかを確認することです。
マーケット参加者の多くが知っているイベントを知らずに投資行動を行うのは、雨が降ると天気予報で知らされているのに、それを見ないで、傘を持たずに出かけるのと同様です。事前に知っておけば、リスクを最小化することができます。
プロとされる投資家・トレーダーは、当たり前のように、こうしたスケジュールなり予測なりを事前に確認しています。小学生でも毎日、登校前に教科書を揃えるために時間割を確認するのと一緒です。
〈参考記事〉プロの株式トレーダーは四季折々の相場をどう過ごしているのか
投資に関わるイベントやスケジュールが整理されているものを、相場カレンダーとかタイムテーブルと呼んでいます。これは、証券会社のサービスや株式情報サイト等でも提供されていることが多いので、事前に探しておきましょう。
タイムテーブルは、期間としては、年間、月間、週間ごとに整理されています。なかには、3か月に1度のイベントや、長いものでは夏季オリンピックのように4年ごとといったものもあります。相場を知るという点では、週間及び月間が重要と考えておいてよいでしょう。
内容としては、地域ごと(国内、海外)に経済に関わるマクロイベント、個別の企業に関わるミクロイベント、そして、株式市場特有のイベントがあります。
必ず押さえておきたいマクロイベント
多くの投資家は個別企業に目が向いているためミクロイベントに集中しがちですが、まずは、相場を大きく鳥瞰するつもりでマクロイベントを確認しておきたいところです。
・国内経済の動向を見通すための経済指標
まずは、経済指標の数値の発表。3か月に1度発表されるもの、毎月発表されるものなどがあります。重要度が高いのは、3か月ごと(四半期ごと)に発表されるGDP(国内総生産)や日銀の短観(全国企業短期経済観測調査)です。
短観は日本の経済が良いのか悪いのかを見るもので、3か月ごとに経済の実績(実態)、将来の景気に対する企業へのアンケート結果として集計されています。いわば、経済の通信簿にあたります。GDPは2、5、8、11月に速報が、日銀短観は4、7、10、12月に発表されます。
〈参考記事〉日銀短観は本当に株価に影響するのか? 最も重要な経済指標の影響力を知る
毎月のものとしては、月末に発表される鉱工業生産指数や機械受注統計、工作機械受注などがあります。いずれも企業の活動状況、特に製造業の設備投資動向を見るものです。企業が「もの」を新しく生産するには、まずは機械装置や設備の導入が先になるため、景気の先行指標としてその受注状況を見るのです。
その他にも小売売上高や自動車販売、粗鋼生産など数多くの指標がありますが、相場の行方を知るための「先行性」という意味では、さほど重要ではありません。
・日本を知るためにチェックしておきたい海外経済
昨今は、国内の経済指標よりも海外の経済指標のほうが重要視されるようになっています。
国内の株価動向を知るためなのに、なぜ? と思うかもしれませんが、現在の日本経済の良し悪しは欧米諸国、中国などの経済に依存している面が大きくなっているからです。
特にアメリカの経済指標に対しては敏感で、発表のタイミングが日本時間の夜中となることもしばしばなため、寝ている間に大きなイベント数値が発表されて、翌日の日本市場に大きな影響を与えることもあります。
アメリカにも、上記の日本の経済指標と同じような発表が数多くありますが、少なくともチェックしておきたいのは、四半期ごとのGDPと、月次で発表される雇用統計(特に非農業部門雇用者数)です。これらの発表を受けて、先行きの金融政策見通しが変化する可能性が高いからです。
・全世界の投資家が注目する最大のマクロイベント
経済指標以外のマクロイベントとしては、日本では日銀政策決定会合、アメリカではFOMC(連邦公開市場委員会)が、株式市場が敏感になる金利見通しを決定する重要な会合となります。
FOMCは約6週間ごとに年8回開催され、全世界の投資家が最も注目する最大のマクロイベントといっても過言ではありません。
〈参考記事〉アメリカが利下げすると日経平均は? FRBの金融政策が日本の株価に与える影響とは
他にも、日米の国政選挙やアメリカ大統領の演説、さらに各国中央銀行総裁のスピーチ、G7(先進7か国)やG20(G7+EU・ロシア・新興11か国)などの首脳会議(サミット)と財務大臣・中央銀行総裁会議なども、世界経済の大きな流れを把握するためにチェックしておきたいマクロイベントです。
イベントが影響を及ぼす順番とは?
ここで注意したいことが2点あります。
マクロイベントが及ぼす影響は、まず最初に短期金利と為替が反応し、その動向を受けて株式市場(株価指数先物)が動き、その指数に対して影響度の高い個別銘柄が動く……という順番があります。見た目にはほぼ同時に動いているように見えますが、こうした流れ(順番)を知っておくことは大切です。
もうひとつは、経済指標の内容については、専門家ではない個人投資家が詳しい分析をする必要はありません。それよりも、市場(マーケット関係者)が事前に予想していた内容と比べて良かったのか悪かったのか、それを報じるニュースを見ればよいのです。
マクロイベントのなかには不定期なものも多くありますが、タイムテーブルを確認すれば知ることができます。いきなり大きなニュースが飛び込んできて大慌て!とならないように、事前にチェックする習慣を持っておくといいでしょう。