海運株、半導体、新生銀… 2021年の株式市場をにぎわせた銘柄たち

かぶまど編集部
2021年12月28日 12時30分

Mannequin and board with written figure 2021 on color background

《コロナ禍に入って2年目となった2021年。株式市場ではバブル後の最高値を更新する場面もありましたが、具体的にどんな銘柄が注目を集めていたのでしょうか。かぶまど執筆陣が、2021年相場で気になった銘柄を振り返ります》

2021年に上がった株・下がった株

・海運株

選・岡田禎子

2021年相場で最も気になったのは、何と言っても海運株です。そのパフォーマンスは圧倒的でした。毎朝のラジオのマーケットニュースで「業種別の上昇率トップは海運」とアナウンサーが言うのを、どれほど聴いたことか。

海運株とは、日本郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>などの銘柄群。先導株である日本郵船は、年初から9月には株価が4倍以上となりました。

この海運株の大躍進の背景には、コロナワクチンの普及による景気回復への期待から、マーケットではグロース株(成長株)から景気敏感株への資金シフトが起きていたこと、世界的な海上輸送賃金の上昇による業績拡大期待があったことが挙げられます。

特に、7月に商船三井が予想配当を150円から550円に引き上げ、続く8月には日本郵船が同じく予想配当を200円から700円へと500円も引き上げて配当利回り10%を超える大幅増配を行ったことは、多くの投資家をハッ!と振り向かせる驚きのポジティブサプライズとなりました。

さらに「バルチック海運指数」も2008年9月以来の高値水準となったことで、大手3社から中堅どころまで海運株が広く買われる“大海運祭り”となりました。

その後は利益確定売りで軟調な展開となりましたが、12月に入るとオミクロン株の影響でモノ消費が続くとの見方やマーケットのボラティリティが上がったことで、高配当株である海運株が再び注目される展開になっています。

最後の最後まで、2021年の主役の座を明け渡さない海運株に翻弄されっぱなしの一年でした。

・レーザーテック<6920>

選・佐々木達也

言わずと知れた、半導体の回路作成に用いるフォトマスク、原版のマスクブランクスの欠陥検査の世界大手です。最先端のEUV露光などでもその技術力の高さが評価され、好業績が続いています。

8月には、成長鈍化を指摘する声やアメリカのハイテク株安などで押し目となる場面もありました。しかし一年を通してみると右肩上がりの綺麗なチャートとなっており、デジタルや半導体への先行きの期待が反映された形となっています。

・エムスリー<2413>

選・鳳ナオミ

2021年を通して、日経平均採用銘柄の中で最も下落した銘柄のひとつ。年初来からのパフォーマンスはマイナス40%を超える下落です。

ところが、医療従事者向け情報サイトで製薬会社の情報提供支援をする同社の業績は好調、アナリストからも年間を通じて「買い」の続いた銘柄でした。

これは、株式需給を理解しない証券アナリスト分析の限界を象徴する典型例といえましょう。株価が下がっているのに買い(BUY)としながらも、目標株価はどんどん下方に修正する始末で、投資家にとっては「なぜ下がる?」が年中続くようなケースです。

別に同社が悪いわけではありませんが、225採用銘柄(同社は2019年10月採用)の投資にあたっては注意すべきケーススタディです。

2022年への警鐘、そして期待

・新生銀行<8303>

選・鳳ナオミ

各社の決算期が近づくまだ肌寒い3月、SBIホールディングス<8473>によるTOBが発表されたことで株価が急騰、その後、敵対的TOBに発展して株価は乱高下しました(12月上旬にTOB成立、子会社化へ)。

このTOBを過去のTOBと同様に見ている投資家が多いかもしれませんが、その意味合いは異なります。地銀のひとつ、とりわけ上位の新生銀行へのTOBは、地方銀行経営陣への警鐘です。

地銀株は、周知の通り、業界平均PBR0.3倍程度と通常ではあり得ない水準に放置されています。もちろん、低収益力や負の未処理資産の存在も指摘されるところですが、それでも、地銀各行の再編が劇薬を伴ったものとなる象徴事例として、このTOBが市場に記憶されるかもしれません。

地銀株の将来を占う出来事と言えるでしょう。

・FRONTEO <2158>

選・岡田禎子

2021年、特に印象に残った銘柄といえば、マザーズのFRONTEO<2158>。AIソリューションな事業などを展開する会社です。もともと、「知っている人は知っている」という熱烈なファンの多い銘柄で、私もずっと見守ってきましたが、ついにマザーズの人気銘柄と化した感があります。

「AI」「DX」という旬のテーマ性や、2021年3月期で経常利益が黒転・復配したこと、AI関連サービスの売上増による利益率の向上で業績が拡大していること、また、相次ぐIR発表などで投資家の心を捉え株価は、年初から11月には8倍以上となりました。

11月15日に発表した2022年3月期の業績・配当予想の上方修正をきっかけに連日のストップ高となり、11月26日には5,300円の上場来高値をつけましたが、11月29日から東証が信用規制をかけたことで12月2日には上場来高値の半値以下となるなど、激しい動きを演じたのも記憶に新しいところです。

・日本電解<5759>

選・佐々木達也

車載用のリチウムイオン電池の負極材の材料となる銅箔で高シェアの同社は、2021年6月25日、東証マザーズに新規上場を果たしました。

5G向けの高周波回路基板でも特性が生かされることから、「脱炭素」「5G」というテーマ性に富んでいます。株価も、初値こそ公開価格と同値の1,900円でしたが、そこから順調に上昇し、11月には5,480円と2倍以上に値上がりしました。

12月のIPOラッシュでマザーズ市場の銘柄が総崩れとなる中でも日足チャートは崩れておらず、投資家の関心の強さがうかがえます。

「GAFA」はどうなる?

GAFA」という呼び方も今年が最後かもしれません。Fことフェイスブック<FB>は1028日、メタ・プラットフォームズMVRS>へと社名変更を発表しました。これをきっかけに、「人々(アバター)が自由に交流可能な仮想空間」とされるメタバースの話題が世界中を駆け巡りました。

実は、暗号資産ホルダーとして有名な決済大手のスクエア<SQ>も、事業内容変更を反映して社名をブロックに変更しています(ティッカーは変更なし)。同じく暗号資産ホルダーであり、世界の時価総額上位になったテスラTSLA>なども、いずれ名称変更するかもしれませんね。

あのアップル<AAPL>が名称を変えるとは想定しづらいですが、これからの時代を象徴する名称に変更する会社が今後増えるかもしれません。

鳳ナオミ

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[執筆者]かぶまど編集部
かぶまど編集部
無防備なまま株式市場に参加して大切なお金をなくしてしまう人をひとりでも減らしたい──そんな思いから、未来の株価や相場を予測するのではなく、過去の事例やデータといった「普遍的な事実」に焦点を当てた記事を発信します。同時に、株初心者の方や、これから株を本気で始めようとしている方にもわかりやすい解説を心がけています。
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