いまが狙い時の高配当株 買っていい銘柄・いけない銘柄を見分けるには
高配当株をいま狙うべき理由
新たな変異株・オミクロン株の出現や、米FOMC(連邦準備制度理事会)によるテーパリング(量的緩和縮小)の加速などによって、2022年に入ってからもボラティリティの高い相場が続いています。
このような相場環境で好まれるのが高配当株です。なぜなら、相場が大きく崩れた場合でも配当狙いの投資家による買いが一定量は入ってくるため、下値が堅いからです。
また、現在のように経済的不透明感の広がる中では、株を保有しているだけで定期的に入ってくる配当という収入は、個人投資家にとって心の安定にもつながるのではないでしょうか。
このように高配当株は、定期的なインカムゲインだけでなく、ボラタイルな相場(=ボラティリティの高い相場)にも強い、という別の魅力をも併せ持っています。
ただし、肝要なのは「優良な」高配当株を選ぶこと。ただ単に配当利回りが高いという理由だけで銘柄を選んでしまうと、大ヤケドを負ってしまうことにもなりかねません。
高配当株とは?
高配当株とは、配当利回りの高い銘柄を指します。一般的には、配当利回りが4%以上の銘柄が高配当株と呼ばれます。
配当利回りの計算式は次の通りです。
1株あたりの年間配当金÷現在株価×100=配当利回り(%)
配当収入を得るために投資をするなら、もちろん利回りが高い銘柄が良いわけですが、利回りが高すぎる銘柄もまた問題アリで、リスクの高い場合も多くあるため銘柄選びには注意が必要です。
配当利回りの計算式をもう一度よく見てみましょう。
1株あたりの年間配当金÷現在株価×100=配当利回り(%)
つまり、前半の割り算で分母になる「現在株価」が低いほど、配当利回りは高くなります。このため、業績の悪化などで株価が低迷している銘柄ほど、見た目の配当利回りは高くなってしまうのです。
そのような銘柄は、将来的に減配や無配に転落する可能性があり、また、さらなる株価の値下がりによって損失を被るリスクも高くなります。
高配当株を狙う場合は、ただ配当利回りだけではなく、業績などその他も確認して、優良な銘柄を選別することが重要なのです。
良い高配当株を選ぶ3つのポイント
良い高配当株を選ぶには、次の3つのポイントに気をつける必要があります。
- 業績が良い
- 配当性向が高すぎない
- 自己資本比率が低すぎない
・業績が良い
高配当株を選ぶ際に最も重要なのは「業績」です。なぜなら、企業の配当の原資となるのは、企業が稼いだ利益だからです。さらに、その利益のもとになるのは売上高です。したがって、利益や売上高が伸びている、もしくは業績のブレの小さい銘柄を選ぶことで、安定した配当を得ることができます。
一方、業績面で不安がある銘柄の場合は、将来の減配や株価の下落リスクが高まります。
・配当性向が高すぎない
高配当株では「配当を維持する力」もチェックする必要があります。いくら優良企業でも、景気の影響や将来の成長投資のために一時的に利益が減少することもあるからです。
配当性向は、利益のうちどれくらいを配当に回せるかを示す指標です。
1株あたり配当金÷1株あたり利益×100=配当性向(%)
高すぎる配当性向は、減配リスクも高いということを意味します。反対に、配当性向が高すぎなければ、配当を維持し、今後も増やす余力があるということ。30〜50%程度が目安とされています。
・自己資本比率が低すぎない
自己資本比率(総資産に対する自己資本の割合)が高ければ、つまり借金が少なければ、多少利益が減少しても配当を維持する「余裕」があるということになります。
キャッシュリッチであれば(=(現金・有価証券から借金を差し引いたネットキャッシュが豊富な企業であれば)、さらなる安心感につながるでしょう
高配当株は「大型」を選ぼう
このように、高配当株に投資する際は業績や財務を分析することが重要なのですが、財務分析となると株初心者にはハードルが高いものです。また、現在のようなボラティリティの高い相場で個別銘柄を選ぶとなると、そのハードルはさらに上がります。
そこで、ひとつの方法として「大型の高配当株から選ぶ」という考え方があります。規模が大きい(=時価総額が大きい)企業は、外部環境の変化にも強く、良好なファンダメンタルズと硬固なビジネスモデルを有するため、株主に安定的に配当を生み出すことができます。
また、大型の高配当株は配当利回りが高い分、株価は割安だと投資家の目に映ります。さらに、現在のようなインフレの上昇懸念や金利先高感のある中では、機関投資家の資金も成長株から割安な大型株にシフトします。その結果、株価の値上がりも期待できる、というわけです。
大型株は流動性があり売買高も高いので、相場が急変した際でも対処しやすい(売却しやすい)点もメリットといえるでしょう。
ここでいう「大型株」の目安は、時価総額3000億円以上です。以下は、時価総額3000億円以上で配当利回りが4%を超える銘柄の一覧です(2021年12月27日現在/筆者作成)。人気の有名企業がずらりと並んでいることがわかります。
・日本郵船<9101>
予想配当利回り10%超えと、大型株の配当利回りトップを走る日本郵船<9101>。
2021年の日本株を代表する海運株の先導銘柄ですが、とくに投資家に注目されたのが、8月の大幅増配発表でした。そのポジティブサプライズは他の海運株にも広がり、「海運祭」と呼ばれるほどの大相場となりました。
その後、株価は低迷しましたが、12月に入るとマーケットのボラティリティの高まりとともに、高配当とその人気力で再び投資家の資金が流入しました。
ただ、海運株は景気に左右されやすく、経済が低迷すると業績は大きく下降します。高配当が今後も維持されるかどうかは、今後の運賃動向などにも注視しつつ、業績を見極める必要があります。
高配当株の最大のリスクは「減配」
高配当株の最大のリスクは、減配(の発表)です。高い配当利回りに魅力を感じて投資したのに、まさかの減配発表。その後、株価も低迷したまま打つ手なしの塩漬け株となり、ただ涙を吞むばかり……という銘柄を抱えている方もいらっしゃるかもしれませんね。
たとえば、かつて高配当株の代表格だった日産自動車<7201>の減配から無配への転落や、近年では2020年7月に配当半減を発表したキヤノン<7751>、2021年2月の日本たばこ産業<2914>の上場来初となる減配発表などが挙げられます。
いずれの銘柄も、高い配当利回りが投資家に人気で株価の下支えとなっていただけに、減配発表後は株価の大幅下落や低迷を招いてしまいました。
たとえ大型株といえども、減配ショックによる株価下落からは逃れられません。ただ、こうした減配は業績悪化が招いた結果であり、やはり、業績にはきちんと目を光らせておく必要があるということがわかります。
・キヤノン<7751>
2020年7月、中間決算発表と同時に33年ぶりの減配を発表したキヤノン<7751>。
コロナ禍で主力のオフィス機器やデジタルカメラが大打撃を受け、前年同期比で営業利益は81.9%の減益、四半期決算でも初の赤字となるなど、業績が大きく落ち込む結果となりました。それを受けて、中間期配当金を80円から40円へ半分に減らす方針としたのです。
「不況に強い」と言われるキヤノンの思わぬ減益。しかも、かねて御手洗会長兼CEOが「減配しない」と強調していたにもかかわらず、33年ぶりの減配となったことを受けて、翌日の株価は13%の大幅安となり、「キヤノンショック」と呼ばれる事態となりました。
高配当株は成長率が低い。だから…
今後も配当を維持できる可能性が高い企業を選ぶこと、それが高配当株投資において最も重要な点です。業績の良い企業は配当を維持できる可能性が高いだけでなく、低い企業と比べて増配の可能性も高くなります。
加えて、高配当株は低利回り株よりも株価の成長率は劣るといわれています。そうした点からも、ボラティリティの高い相場で大型の高配当株が選好されるなか、より業績の良い銘柄を選ぶことが後悔しない銘柄選びとなるでしょう。