個人投資家が知っておきたい「製品の一生」とポートフォリオの関係

朋川雅紀
2022年11月16日 17時00分

sonyachny/Adobe Stock

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「プロダクト・ライフ・サイクル」とは

私は、株式投資に「プロダクト・ライフ・サイクル」の考え方を取り入れて、自身のポートフォリオを管理しています。

「プロダクト・ライフ・サイクル」とは、商品が市場に投入されてから姿を消すまでの流れを示したものです。それを生き物の一生に例えて考えることから、「ライフ・サイクル」という表現が使われています。

ライフ・サイクルの4段階

通常のライフ・サイクルは、「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という4つの段階をたどります。

(1)導入期

市場に製品が投入された段階では、プロダクトに対する認知度や浸透度は低く、顧客が少ないことから、この段階では売上が小さく、市場規模は非常に小さいと言えます。研究開発費などがかかるので、利益が出ないか、出てもごくわずかです。

このステージにいる企業に投資することは、とてもリスクが高いと言えます。ただその一方で、「大化け」する可能性も秘めています。そのため実際に投資する場合は、投資額は控えめにしておいたほうがいいでしょう。

(2)成長期

この段階では、市場が拡大し、製品やサービスに対する需要は大きくなります。ただ、まだ参入している企業数は限られているため、競争はあまり激しくありません。したがって、マージン(利幅)は非常に高くなります。

企業は設備投資を積極的に行い、売上は飛躍的に拡大します。顧客層も拡大し、高所得者層やマニア層から大衆者層へシフトします。そのため、売上も利益も急拡大する時期に当たります。

成長株投資においては、このステージにいる企業が主な投資先となります。高いリターンが期待できるだけでなく、「導入期」よりもリスクがかなり低下します。ただ、バリュエーションの水準をチェックして、株価に高い成長が織り込まれているかどうかを判断する必要があります。

また、成長後期になると、需要が一巡し、売上の加速度的な成長はもはや見られなくなります。製品が広く受け入れられてくるため、競合製品も増加します。成長率は依然として市場を大きく上回っるものの、成長率の鈍化はバリュエーションの縮小をもたらします。こうなると、いったん売却したほうが賢明でしょう。

(3)成熟期

市場の成長が鈍化し、売上、利益とも頭打ちになる時期が成熟期です。通常、売上の伸びは経済全体(名目GDP)の成長率まで低下してきます。売上の伸びが鈍化してくることから、収益力はコストに依存してきます。

このステージにある企業に投資する場合は、バリュエーションのみならず、景気サイクル(投資のタイミング)を考慮して判断することが重要になってきます。

(4)衰退期

需要の変化や代替品の台頭によって、売上も利益も減少する時期です。マージンは悪化し続け、利益は縮小し、赤字になる企業も出てきます。また、企業によっては、撤退時期を判断することも重要になってきます。

基本的には、このステージにある企業は投資対象にはなりません。しかし、バリュー投資の立場に立つならば、過度に悲観的なバリュエーションになったときには投資する場合があります。

プロダクト・ライフ・サイクルの限界

プロダクト・ライフ・サイクルの考え方を用いて、製品が市場に投入されてから衰退するまでのプロセスを導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つに区分することで、市場成熟度を容易に理解することができるようになります。

ただ、「プロダクト・ライフ・サイクルはすべての製品に同じように当てはまるわけではない」という点は注意すべきです。

すべての製品が必ずしも区分された通りのプロセスをたどるとは限りません。導入直後から爆発的に普及する製品もあれば、将来有望な市場とみられていた市場でも、成熟する前に衰退してしまう場合もあります。需要の掘り起こしで成熟期から成長期に逆戻りすることもあるかもしれません。

このことからもわかる通り、将来を予測することが大変難しい時代であることを理解しなければなりません。

プロダクト・ライフ・サイクルごとの資金配分

では、プロダクト・ライフ・サイクルを使って、資金配分をどのように考えるべきでしょうか。

・導入期

将来の大化け銘柄の候補になりますが、消えてなくなるリスクも考えなければなりません。投資家自身のリスク許容度や市場環境にもよりますが、ポートフォリオの10~20%以内に抑える必要があるでしょう。

・成長期

投資の中心となります。そこで、ポートフォリオの40~60%を占めることを目指します。分散も重要ですが、「コレ!」と思った企業にはある程度の資金を傾けてもいいかもしれません。

・成熟期

安定しているため、ポートフォリオ全体のクッションとして活躍してくれます。若年層の投資家であれば10%程度でも問題ないかもしれません。その一方で、保有資産が目標に達したら、ポートフォリオ全体の50~60%程度まで増やすなどしてもいいでしょう。

・衰退期

原則として投資対象にはなりませんが、バリュー重視で、一時的に保有する方法もあり得ます。

「プロダクト・ライフ・サイクル」は、製品の売上と利益の変遷を説明できることから、投資戦略の立案に役立ちます。ポートフォリオを組む際には、ぜひこうした視点も取り入れてみてください。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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