空売りできない銘柄もある? 信用取引の仕組みを知る

かぶまど編集部
2016年2月25日 16時14分

「私が買った株はすぐに下がる。きっと神様が見ていて意地悪しているのね」。もしかしたらあなたも、そんなふうに思ったことがあるかもしれません。この対処方法(下げを利益にする)といえば、信用取引口座による「空売り」です。ただし、証券取引所に上場しているすべての銘柄が対象ではないということをご存じでしょうか?

信用取引には2つの種類がある

信用取引には、「制度信用取引」と「一般信用取引」があり、取引をする場合には、どちらかを選択する必要があります。それぞれ特徴があり、利用用途も変わってきます。

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空売り可:「制度信用銘柄」と「貸借銘柄」

証券取引所が選定し、対象を決めるのが「制度信用銘柄」です。

この「制度信用銘柄」は、返済期限が6か月間と決められています。つまり、6か月間を超えて保有することはできないということです。

この制度信用銘柄の中からさらに厳選された銘柄を「貸借銘柄」といいます。「貸借銘柄」こそが、今回のメインテーマである「空売りできる銘柄」となります。

上場銘柄の約6割が「貸借銘柄」

証券取引所が規定する「制度信用銘柄」のなかで「貸借銘柄」をさらに選別します。これは日本証券取引所のウェブサイトで誰でも確認できます。
https://www.jpx.co.jp/listing/others/margin/index.html
※毎月5日頃に更新される

2016年1月8日時点で日本に上場している銘柄(ETFなど含む)は3,778。そのうち、「貸借銘柄」は2,278(約60%)でした。

つまり、日本の上場銘柄の約6割が、空売りできる(=下げでも利益を出せる)銘柄ということになります。

非貸借銘柄は売り圧力が少ない

反対に考えると、空売りできな銘柄「非貸借銘柄」は売り圧力が少ないという見方もできます。仮にあなたがデイトレーダーであった場合、上昇局面にある銘柄が「貸借銘柄であるかどうか?」という点は、ひとつの分析指標になる場合があります。

貸借銘柄の選定基準とは?

日本証券取引所において以下の条件をクリアしなければ「貸借銘柄」として採用されません。つまり、証券取引所の“お墨付き”ということです。一部を抜粋して紹介します。
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詳細が気になる方は日本証券取引所のウェブサイトでも確認してください。
https://www.jpx.co.jp/equities/trading/margin/standard/

上記条件を満たすまでには6か月間の実績が必要なため、新規上場銘柄などはすぐに対象になることは少ないようです。

ただし、「早期選定」という制度があり、2015年11月に上場した「日本郵政」「かんぽ生命保険」「ゆうちょ銀行」などは上場から23日後の2015年11月27日に「貸借銘柄」に選定されました。

空売り禁止もある:「一般信用取引」とは?

証券取引所が選定した銘柄を取引する「制度信用取引」と違って、証券会社と個人投資家との間に結ばれる契約が「一般信用取引」です。

契約内容や対象銘柄なども各証券会社によって異なります。空売りについても、一般信用取引では「空売り禁止」という会社もあります。

つまり「制度信用」は証券取引所が確定させるため各証券会社共通となりますが、「一般信用」は証券会社によって差異がありますので、その内容をしっかりと見極める必要があります。

簡単な比較図

「制度信用」と「一般信用」の代表的な項目を比較します。「一般信用」は各証券会社によって異なりますので、あくまで目安としてご覧ください。

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※「一般信用」は証券会社によって異なるため、上記は2016年1月8日時点のSBI証券の金利などを記載しています。詳細は各証券会社のウェブサイトなどでご確認ください。

制度信用と一般信用の使い分け

・制度信用取引:6か月以内の売買を想定した取引で「貸借銘柄」に含まれる銘柄であれば、金利が安い制度信用を活用

・一般信用取引:「貸借銘柄」に含まれない銘柄を空売りしたい場合や、新規上場銘柄をすぐに信用取引したい場合

信用取引の「買い」とは?

今回は信用取引の「空売り」をメインに説明しましたが、信用取引の「買い」という選択肢もあります。これは、少ない資金を効率的に取引したい投資家向けの制度です。

「信用の買い」では、信用取引口座に入金する金額の約3.3倍の取引が可能となります。

具体的には、30万円を入金すると、約100万円分の売買ができるようになります。手元に資金がないけれども、どうしても購入したい銘柄がある場合は、この制度を活用してみるのも、ひとつの手かもしれません。

しかしながら、当然、思惑とは反対に下がることもありますので、しっかりと資金管理を行ったうえでの活用をお願いいたします。

選択肢をもつということ

信用取引という武器を手に入れたからといって、「ぜひ空売りをすべき」と言いたいわけではありません。相場は「上がる」か「下がる」か、2つの可能性を常に持っています。そうであれば、両方の選択肢をもつことは、投資家としてやるべき最低限の準備だと思います。

空売りができる「貸借銘柄」は、上場銘柄の約60%。それに対して、信用口座の開設率はたったの5.5%。下げる相場で空売りができる人と銘柄は限られています。

「人の行く裏に道あり 花の山」——こんな相場格言もあります。しっかり準備して、下落さえも利益に変える投資家への道も検討してみてはいかがでしょうか?


信用取引をマスターすれば、「上昇」だけでなく「下落」でも利益にできるようになります。しかしながら重要なのは、「上昇」するのか「下落」するのかを判断できるようになること。100%当たる予測などありません。だからこそ、動く銘柄の条件を理解しておくことが欠かせないのです。

[執筆者]かぶまど編集部
かぶまど編集部
無防備なまま株式市場に参加して大切なお金をなくしてしまう人をひとりでも減らしたい──そんな思いから、未来の株価や相場を予測するのではなく、過去の事例やデータといった「普遍的な事実」に焦点を当てた記事を発信します。同時に、株初心者の方や、これから株を本気で始めようとしている方にもわかりやすい解説を心がけています。
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