株価に影響を与える「材料」にはどんなものがあるのか?
株式投資をしていると「材料」という言葉によく出くわします。「好調な業績が好材料になり株価好調」「新商品の不振が悪材料で株価低迷」など、「材料」は株価に影響を与える要因を表す際に使われます。どんなことが「材料」となるのでしょうか? 意外と知らない「材料」のいろはを解説します。
株価を動かす「材料」は多種多様
株価の動きにはたくさんの要因があり、しかも複雑に関係しています。何が上昇(あるいは下落)に影響を与えたのか、一概には言えないケースも多々あります。
そうは言っても、どんなことが株価に影響する材料となり得るのか、その傾向を知っておくことは重要です。いくつかのポイントを押さえておけば、投資判断の強い味方になってくれるはずです。
大きく「大」「小」に分けられる
株の材料は、大きく2つの種類に分けられます。
- 個別銘柄の株価を動かす小さい材料
- 市場全体に影響する大きな材料
ここで言う「小さい」「大きい」は、株価に与える影響の度合いを表すわけではなく、影響を及ぼす範囲の大きさを表します。銘柄に直接影響する小さな材料については、初心者の方にもイメージしやすいかもしれません。
一方の大きな材料は、日本や世界経済全体の動きで、上場しているほとんどの銘柄の株価に影響するような要因です。政策金利や為替相場、中央銀行の金融政策、物価、経済成長、貿易、政治、人口動態、失業率、税金、法律……など多岐にわたり、より複雑に株価に影響します。
今回はまず「個別銘柄の株価を動かす小さい材料」について詳しく見ていきます。
個別銘柄の株価を動かす小さい材料
ただし、個別銘柄の株価を動かすということは、ありとあらゆる種々雑多なことまでも材料となる可能性があります。それらを列挙することは不可能なので、数多くの材料のうち、ほとんどの銘柄に関係する重要な項目について解説します。
・決算や業績
企業業績はとても重要な材料で、決算発表は注目される一大イベントです。以下に挙げる材料も、結局のところ、業績に影響を与えかねないからこそ材料となる、と言うこともできます。
【参考記事】決算発表で上がった銘柄・下がった銘柄
・製品やサービスの売れ行き
言うまでもなく、製品・サービスの売れ行きは企業の業績に影響します。ということは当然、株価を動かす大きな要因となることがあります。任天堂<7974>は「ポケモンGO」と「ニンテンドースイッチ」の大ヒットによって株価が一気に上がりました。
それほどメジャー製品でなくても、ダンボール最大手のレンゴー<3941>はネット通販活況による梱包用ダンボールの需要増、車載コネクタの本多通信工業<6826>は車載カメラへの需要が追い風で、株価を押し上げる好材料となっています(いずれも業績も伸びています)。
・業界統計
製品への需要や売れ行き、生産量を業界全体で見たものが業界統計です。
鉱工業生産指数(経済産業省)、機械受注統計(内閣府)、全国百貨店売上高(日本百貨店協会)、自動車販売台数、メディア別広告費など数多くありますが、気になっている銘柄に関わる統計だけでも見ておくと、株価の動きを理解する手がかりとなるでしょう。
・大手企業の動向
統計は全体を見た数字だったのに対して、大手企業の動向も材料です。アップルやソニー<6758>など、いくら規模が大きいとはいえ、なぜ一企業の業績が大きく報道されるのか、疑問に思ったことはないでしょうか。
その理由は、巨大企業は裾野が広く、製品の売れ行きや業績が多くの関連企業に影響するからです。たとえばアップル社のiPhoneは、日本だけでも村田製作所<6981>、アルプス電気<6770>、ファナック<6954>、京セラ<6971>、TDK<6762>など多くの企業の部品で作られています。
iPhoneの売れ行きが好調なら関連銘柄にとって好材料となりますが、アンドロイドや格安スマホがシェアを伸ばせば、これらの企業には悪材料となるわけです。
・株主還元
株主還元とは企業が儲けたお金を株主に配分する施策のことで、自社株買いや配当金がこれに当たります。これらが増えると株主の取り分が増えるため好材料となります。特に自社株買いは、経営者自身が現在の株価を割安だと考えていると言えることから、強いアピールになります。
また、配当金を例年より減らした場合(減配)、通常は、厳しい経営状況がその背景にあるため悪材料とされますが、もしも減配の理由がさらなる成長投資のためであり、そこに投資家が期待感を持つことができれば、一転、好材料になるケースもあります。
【参考記事】急増する「自社株買い」 個人投資家のとるべき戦略を3つのポイントから解説
・競合他社の動き
盤石な商売をしていた企業でも、強力なライバルの参入で投資家が不安になることもあります。
「アマゾン・エフェクト」という言葉をご存じでしょうか。アマゾンの参入によって顧客が奪われて経営が厳しくなることを指す言葉で、アメリカには書店や百貨店などで構成される「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものもあるほどです。
日本でも、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、丸善CHIホールディングス<3159>、ブックオフコーポレーション<3313>などの株価は、ここ数年不振です。
・事故・事件・不祥事
何らかの事故や災害に見舞われたり、役員や従業員の不祥事、インサイダー取引などが発覚したりすることも株価の材料になります。
2017年2月16日、事務用品販売のアスクル<2678>の中核工場で火災が起こりました。設備修復、在庫の損失、営業の滞りによる売上機会の逸失などで、業績への影響が避けられないのは確実と見られ、翌日に株価は8%下がりました。
また、一見業績にはそれほど直接影響しないと思われるような従業員個人のトラブルなども、報道によって企業イメージを損なったことで、売り上げ(業績)を左右すると投資家が判断すれば、悪材料となる可能性があります。
【参考記事】企業の不祥事で株価はどうなる? ぴあとベネッセを比べてみた
個別銘柄の材料を見分けるポイント
ここまで見てきたように、個別銘柄の材料を考えるときには、その出来事自体が「好」か「悪」かではなく、「市場の大多数の投資家が、その材料をどう考えているか?」がポイントになります。
たとえば最も重要な業績。ここでは前年に比べた実績の数字よりも、むしろ市場予想に比べてどの位置に着地したかがポイントとなります。前年に比べて純利益が10%も増加しても、それがすでに株価に織り込まれていれば、値動きは冷静なものになるでしょう。
しかし、もし10%増と思われていた純利益が実際には5%増に留まっていれば、失望されて悪材料になることもあります。反対に、市場予想が5%増だったのに対して実績が10%増であれば、好材料となって大きく株価を動かすかもしれません。
商品の売れ行きも、あるいはリコール費用といったネガティブな要素であっても、実際の数字が発表されるときには、ある程度の予想が株価に織り込まれています。したがって、市場参加者にとってサプライズがあれば材料となりますが、想定どおりなら材料にならないこともあるのです。
材料と株価の簡単じゃない関係
現在の業績が良いから今後も株価は上がっていく……とは必ずしも言えません。株価が上がるのは、あくまでも株価に好影響がある(または、ありそうだと投資家が判断する)材料が現れたときです。
ただし、それらも材料のひとつでしかなく、受け取った投資家の認識によっては、まったく違う判断をされることもあります。その結果、「定石」だと思っていたものと違う値動きを見せることもあるので、十分にご注意ください。
だとすると、結局のところ〝後づけ〟でしかないようにも思えますし、たしかにそういった側面があるのも事実です。それでも「この銘柄の材料は何か?」「どういう材料ならプラスになるのか?」を意識することは、株価というものを理解し、今後の値動きをイメージする助けとなるはずです。