スタートしたアクティブETF インデックス型とは何が違う? どんな種類がある?
ETF(上場投資信託)を用いた資産運用が広がる中で、今年9月に東京証券取引所に新規上場したアクティブ運用型の「アクティブETF」が話題になっています。個人投資家にも広がってきたETFはインデックス型が主流でしたが、こうした潮流にも変化が出てきています。
インデックス運用とアクティブ運用
株式の資産運用には、主に「インデックス(パッシブ)運用」と「アクティブ運用」という2つのアプローチがあります。
インデックス運用とは、目安となる指数(インデックス)をベンチマークとし、その指数に連動するように運用する手法のことです。例えば、東京証券取引所の市場全体の値動きを表す日経平均株価やTOPIXに連動するように株式を組み入れてポートフォリオを構築します。
インデックス運用では、対象とする指数とのパフォーマンスの差が限りなくゼロになるように注力するものの、具体的な銘柄の選定や売買のタイミングなどは基本的に行われません。
インデックス運用は、安定性や手数料の低さが特徴です。さまざまな指数に連動するように組成された投資信託や上場投資信託(ETF)といった商品が存在し、個別の銘柄のパフォーマンスに左右されることなく、市場全体の動きに比例して投資成果が得られます。
一方、アクティブ運用は、投資家が独自の銘柄選定や売買タイミングによってポートフォリオを組み立てる手法です。アクティブ運用の特徴は、パフォーマンスの一層の向上を目指すことです。投資家が市場の変動や情報を分析し、銘柄の選択や売買のタイミングを積極的に行います。
アクティブ運用のメリットは、市場の変動によるリスクを適切にコントロールし、より高いリターンを狙うことができる点です。アクティブ運用の投資信託の場合、ファンドマネージャーが厳選した銘柄に投資して、インデックス運用を上回るパフォーマンスを目指します。
ただ、銘柄の調査や売買回数などが増えるため、運用コストはアクティブ運用のほうが高めになる傾向があります。
アクティブ運用型ETFがやって来た
近年、運用コストの競争が加速したことに加え、運用実績がベンチマークとなる指数を下回るアクティブファンド(投資信託)が多いことや、ETFを使ったインデックス投資が流行したことで、インデックス運用が拡大していました。
ところが、ここにきて、海外を中心にアクティブ運用を見直す動きが出ています。
世界のETF市場は、バンガードやブラックロックといった大手運用会社が運用するインデックス型ETFで占められていました。しかし最近、JP・モルガンチェースやディメンショナル・ファンド・アドバイザーズなど新規参入のプレイヤーは、アクティブ運用型ETFを武器に投資家の資金を獲得しています。
JPモルガンの資産運用部門ETFソリューションのグローバル責任者は、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に、「今後5年間でETFの総資産は15兆ドルに倍増し、アクティブ運用がETF市場の10~20%を占めるようになる」とコメントしています。
この流れは日本にもやってきています。それまで東証に上場するETFは、何らかの指数に連動するインデックス運用型に限られていました。しかし、今年9月にアクティブ運用型ETFの上場が解禁され、指数に縛られることのないアクティブETFも自由に上場できるようになりました。
11月27日現在、東証に上場しているアクティブ運用型ETFは7本です。
ユニークだが市場テーマに沿ったアクティブETF
独立系運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントは、特徴的な名前のETFを3本上場させています。いずれも現在の市場のテーマに沿った設計です。
・PBR1倍割れ解消推進ETF<2080>
PBR1倍割れ解消推進ETF<2080>は、現在東証が企業に対して、資本コストや株価を維持した経営の実現に向けた改善方針や計画を策定して取り組むよう要請している、いわゆる「東証の市場改革」に沿った商品設計です。PBRとは株価純資産倍率のことで、PBR1倍は企業の解散価値と言われます。
昨今は割安な企業株価を放置していると、投資ファンドや他社による敵対的買収リスクに晒される時代となりつつあります。それでも7月末時点で、東証プライム市場に上場する銘柄の45%、東証スタンダード市場の59%が、解散価値であるPBR1倍を下回っています。
このETFには、鉄鋼や地銀、輸送用機器、化学などバリュー系の業種を中心に約460銘柄が組み入れられています。
・政策保有解消推進ETF<2081>
政策保有解消推進ETF<2081>は、株式の持ち合いによる非効率な企業の資本政策を減らすため、原則として、過大な政策保有株式(=持ち合い)を長期間放置している企業に投資することで、株主として提言するエンゲージメント活動を行うETFです。
主に政策保有株式が連結純資産の一定割合以上を占める企業に幅広く投資します。政策保有株式は金融庁や議決権行使助言会社から厳しい目が向けられており、政策保有株式を圧縮して売却した企業は、成長投資や株主還元に資金を振り向けることも多くなっています。
組み入れ銘柄はトヨタ自動車<7203>などの大型株や銀行、保険、陸運、倉庫など、様々な業種の約234銘柄に投資しています。
・投資家経営者一心同体ETF<2082>
投資家経営者一心同体ETF<2082>はその名の通り、「オーナー企業」のような経営陣が自社株を一定割合以上保有する企業に投資を行うETFです。経営陣と投資家の間では経営の時間軸やインセンティブの問題などもあり、企業経営の重要な課題の一つとなっています。
アメリカでは、企業の最高経営責任者(CEO) の報酬のうち69%が長期のインセンティブで構成されています。これに対して日本のCEOの長期のインセンティブの割合は26%に過ぎず、経営の目線が短期に偏りがちな問題が指摘されています。
こうした状況を踏まえ、経営に対して中長期のインセンティブが機能する企業に投資することにより、リターンを得ることを目的としています。オーナー企業でなくても経営陣が自社株を一定以上保有していれば投資対象とします。
具体的には、ニデック(旧・日本電産)<6594>やファーストリテイリング<9983>、パソナグループ<2168>、ディー・エヌ・エー<2432>など代表的なオーナー企業を中心に約194銘柄を選定しています。
成長株と高配当株、そして米国債のアクティブETF
野村アセットマネジメントは、成長株と高配当株に投資するアクティブETFを運用しています。NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信<2083>とNEXT FUNDS 日本高配当株アクティブ上場投信<2084>の2本です。
成長株アクティブETFは、半導体製造装置のディスコ<6146>や東京エレクトロン<8035>、医療サイトのエムスリー<2413>といった成長株に加えて、伊藤忠商事<8001>、日立製作所<6501>などの大型割安株もバランスよく組み入れられています。
高配当株アクティブETFには、銀行、建設、化学などのバリュー系の高配当株を組み入れており、ポートフォリオの予想配当利回りは約4%となっています。
三菱UFJ国際投信も、同じく配当利回り狙いのMAXIS高配当日本株アクティブ上場投信<2085>を運用しています。
日興アセットマネジメントが運用するアクティブETFは、他とはやや毛色が異なります。名称は、上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)<2093>。満期までの残存期間が2年以下の米国債を主な運用対象としています。
為替リスクはあるものの株式と比べて価格の変動リスクや信用リスクの少ない高金利の米国債で、まとまった資金を運用したい投資家をターゲットとしています。
選択肢の幅を広げてみよう
ETFは、通常の(非上場の)投資信託と違って、個別株式と同じように取引所で価格が形成されるため、売買がしやすい利点があります。信託報酬などの保有期間に応じてかかるコストも低めです。
日本でのアクティブETFはまさに始まったばかりですが、こうした動きは今後とも広がっていく可能性があります。これらアクティブETFは来年からスタートする新NISAにも対応していることから、個人投資家にとっては資産運用の選択肢がより広がることになり、今後の展開にも注目したいところです。
インデックス運用型との違いや、それぞれのメリット・デメリットを理解して、投資の幅を広げる取っかかりとしてみてはいかがでしょうか。