いま中小型株がアツい! 相場が冴えなくても急騰する銘柄が続々。このチャンスをつかむ3つのポイントとは

岡田禎子
2022年12月5日 17時00分

New Africa/Adobe Stock

いま、中小型株がアツい!

歴史的な円安やアメリカの金利、インフレによる景気後退懸念など外部環境が厳しい中、株式市場はリバウンドしては下落、再びリバウンドしては……の繰り返しで、いまひとつ相場の行方を信じきれない個人投資家も多いのではないでしょうか。

ところが、「そんなことは僕たちには関係ないさ」といわんばかりに、中小型株が集まる東証グロース市場では急騰する株が続出しています。

下落相場の終焉においては、次なる上昇相場を先取りする形で中小型株が先行して動くことがよく知られています。

米FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策も最終段階が見えつつある今日この頃、2年近く調整していた中小型株にも見直し買いが入り始めている? といった思惑もあって、いままさに中小型株が面白い市場となっているのです。

中小型株とは?

東京証券取引所には現在、約3,900社(銘柄)が上場しています。株式市場ではそれらの銘柄を、時価総額(株価*発行済み株式数)を尺度に「大型株」「中型株」「小型株」に分類します。

分類上の明確な定義はありませんが、一般的には時価総額3000億以上を大型株、1000~3000億円を中型株、1000億円未満を小型株と呼んでいます。

トヨタ自動車<7203>に代表されるような「大型株」は約400社で、全体のわずか10%に過ぎません。一方、中型株と小型株を合わせた「中小型株」は約3500社もあります。ところが、時価総額ベースで見てみると大型株が全体の7割以上を占めているのです。

一般的に日本株は、世界の景気変動や為替動向に大きく左右される傾向が強いといわれます。これは、日本株市場で大きな割合を占める大型株にグローバルで活躍する外需関連企業が多いことが背景にあります。

それに対して「中小型株」は小売やサービス、不動産などの内需関連企業が多いことや外国人の保有比率が低いことから海外の影響を受けにくいとされています。それが、現在のような外部環境が不安定な相場で、中小型株が投資家の目に非常に魅力的に映る要因のひとつです。

また、中小型株は機関投資家が入りにくいためにリサーチが十分に行われていません。そのため市場での評価不足によって株価が割安なものが多くあります。

さらに、大型株は時価総額が高く、それだけ企業価値が高いことから流動性も高く、株価の動きが緩慢なのに対して、中小型株は流動性が低く、値幅の大きな動きを見せます。値幅が大きいということは、それだけ大きな利益を生むチャンスがあるということです。

このように中小型株は、見る人が見れば「掘り出し物の宝庫」であり、金の卵を見つける能力と経験を身につければ、とてつもない利益を手に入れる可能性があるのです。

中小型株投資3つのポイント

中小型株投資の醍醐味を味わうには、大型株とは全く異なる中小型株独自の動きをよく理解した上で投資することがポイントとなります。

注目すべきポイントは3つあります。

  • 全体相場が下落局面でも上昇する銘柄が多い
  • 業績に敏感に反応する
  • 1つの材料でストップ高もありうる

日経平均株価が下がり続けるネガティブな相場であっても、中小型株の、特に新興市場の銘柄の中では連続ストップ高や新高値更新するものなど、大型株のパフォーマンスをらくらくと超えていくものが多くあります。

これは、大型株に比べて個別要因(アルファ)による株価変動が大きいため。したがって、その企業を深く知ることで外部環境に囚われずに投資戦略を立てることができます。

また、中小型株はアナリストのカバーや情報量も少ないために、市場の理解度が大型株ほど高くなく、見過ごされがちです。流動性も低いために業績の変化があると反応しやすく、特に上方修正などのサプライズでは急騰することがよくあります。

業績が上に変化しそうな銘柄は「いずれ人気化する確率が高い」と誰もが虎視眈々と狙っていますので、動き出せば早く、即座に便乗すれば大きな利益を手にできます。それには、日頃のリサーチが大きくモノを言うのです。

いま注目したい中小型株

現在の株式市場では、アメリカの金利上昇による高PERグロース銘柄の水準訂正もようやく落ち着き、次の段階として、景気後退による企業の業績悪化が懸念されています。このような状況下では、やはり外部環境に影響を受けにくい「内需型の中小型グロース株」が注目されやすくなります。

特にテーマ性を持ち、業績に不安がなく、拡大が見込める銘柄が選好されています。なかでも、リオープンやIT・DXの関連銘柄など強いテーマ性を持つ企業や、不況に耐性があるといわれるゲーム・エンタメ関連企業、独自の技術を持つニッチ企業などが優位となりそうです。

・ティーケーピー<3479>

貸会議室やレンタルオフィス「Regus」、アパホテルのフランチャイズなどを展開しており、リオープン(インバウンド)銘柄としても知られています。

コロナ禍では大苦戦しましたが、貸会議室や宿泊事業の需要回復で業績が改善しつつあるのです。8月発表の2023年2月期中間決算では、経常利益が16億5100万円の黒字化(前年は7億4600万円の赤字)を達成し、通期計画(15億円の黒字)をすでに上回りました。

株価は一時12%近くも上昇し、年初来高値を更新。日経平均株価がレンジ相場で動く中、株価は年初から比べて2倍以上になっています。

本当にあった「1つの材料でストップ高」

上にも書いたように、たった1つの材料でもストップ高となりうるのが、中小型株の醍醐味です。

なぜなら中小型株の場合、1つの商品の大ヒットや新製品の開発、新規受注の成功などで、業績が大きく変動します。大型株ではインパクトがないようなニュースでも、中小型株ならサプライズとして受け取られて株価が急騰することも多々あります。

普段は出来高のない銘柄が突然、大きな出来高を伴って上昇を始めるのです。規模の小さい会社でインパクトが大きい材料であるほど、株価は連続ストップ高となって、2倍3倍と駆け上がっていきます。しかも中小型株では、このような銘柄が入れ替わり立ち替わり出現します。

実際に動き出したらスピード感が勝負。企業への日頃の怠らない目配りと出来高増減のチェックが欠かせません。

・バンク・オブ・イノベーション<4393>

10月18日、5年ぶりとなるスマホ・PC向けの新作ゲーム「メメントモリ」の配信を開始すると発表。その事前登録者数が120万人を突破したことも伝えられました。

同社は、2022年9月期・第3四半期累計の営業損益実績は6.74億円の赤字で、通期予想は非開示としていました。しかし、この新作ゲームの貢献によって2023年9月期の業績は劇的に改善するだろうとの期待から、株価は大きく反応し、6連騰となります。

10月26日には、「開始6日で課金高(速報)が18億円」と発表。年間売上が20億程度の会社がわずか6日間でほぼ1年分を稼いでしまったわけですから、誰もが驚く大サプライズです。

加えて、前日まで2日連続のストップ高買い気配だったために値幅制限が通常の4倍に拡大していたことも相まって、この日(26日)の株価上昇率は45%! いつもは20万株程度だった出来高も500万株以上という大商いとなりました。

その後も勢いは加速し、11月1日には株価は16,300円まで上昇し、10月18日の終値3,035円から約5倍以上となりました。かつてのガンホー・オンライン・エンターテイメント<2137>のような夢あるゲーム祭りとなったのです。

中小型株投資のリスクと注意点

中小型株はリターンが大きい分、リスクも高くなります。流動性が低いために自由に売買できない流動性リスクや、倒産や上場廃止といった信用リスク、投機的な動きに影響されることによって株価が乱高下するリスクもあります。そのため、大型株以上にリスク管理を徹底して行う必要があります。

特に、これから年末にかけては節税目的の売り(タックスロスセリング)が出やすくなるので、注意が必要です。損益通算を目的として、含み損の株をロスカットする動きです。信用買い残の多いものや年初来安値に近い銘柄は、この対象となる懸念があります。

また12月はIPOが年を通じて最も多い月。短期資金はそちらに向かいやすくなりますので、業績チェックに加えて需給分析も怠らないようにしましょう。

個性豊かな銘柄群から自分の目で徹底的に確かめて投資する──実力次第では大きな利益を得ることができる中小型株投資は、ハマる人も多い手法です。いずれ来たる上昇相場の前哨戦としても、いまこそ中小型株に目を向けてみてはいかがでしょうか。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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