強気な株式市場で「いい割安株」を探すには業種別のPER・PBRに目を向けよう

山口 伸 2021/02/08

《いよいよ29,000円を超えてきた日経平均株価。これから「割安株バリュー株)」を探すには、ただPERやPBRの数字を見ていただけではわからないことがあります。一見、割安そうに見える銘柄が、実は割高かもしれないのです。そこで意識したいのが「業種別」の指標です》

強気な株式市場で割安株を探すには

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大が株式市場にも大打撃を与え、年初時点で24,000円台を推移していた日経平均株価は、3月下旬には16,000円台まで下落しました。しかし、その後は順調に回復し、11月以降はバブル後の高値を次々と更新しています。

コロナ禍で上昇する日経平均株価

昨年1月時点で、日経平均株価は25,000円超えが期待されていましたが、国内でも新型コロナウイルスの感染が広がり、3月には大幅下落。その後、経済活動の再開とともに株価は回復し、11月には30年ぶりに26,000円を超えました。そして新年を迎えてひと月、2月8日には29,000円台に乗りました。

このように株式市場が強気を見せる背景には、ワクチン摂取の普及が考えられます。アメリカでは年末から接種が始まったほか、国内でも2月下旬からの接種開始を目指しています。また、来期業績の増収増益を予測する企業も現れており、日経平均株価が30,000円を超える日も近いかもしれません。

今後も株価の好調が続く可能性があり、個人投資家としては、いまのうちに割安株を仕込んでおきたいところです。しかし、相場全体が上昇している中では、その判断も難しくなります。そこで考えたいのが、個別の銘柄で見るのではなく、業種で見るという視点です。

市場全体のPER・PBRを見ると

まずは、割安株の指標としてよく用いられるPERPBRについて確認しておきます。

PER株価収益率)は株価を企業の純利益で割ったもので、利益面から株価の割安度を測る指標です。一方のPBR株価純資産倍率)は株価を純資産で割った指標で、これが1.0未満の場合、理論的には会社が倒産した際に株主が得られる金額が株価よりも高いということになります。

PERでは、一般的に15.0が割安度の目安とされますが、それ以外にも、他社との比較によって割安か割高かを判断するために用いられることも多くあります。それに対してPBRの場合は、一般的に1.0が割安度を判断する目安となります。

ただ、これを東証1部全体で見てみると、コロナショックが起きた昨年3月でPER17.2・PBR1.5だったのが、今年1月にはPER30.8・PBR2.0になっているのです。株価の上昇に伴って、市場全体が「割高」になっているということが、ここからもよくわかります。

業種別で大きく異なるPER・PBR

PERやPBRを用いて個別銘柄の割安度を判断する際、市場全体と比較して考える方法があります。ただ、現在は市場全体の数値が目安を超えているため、必ずしも参考にはなりません。このような場合、業種別のPER・PBRを比較対象とすることで、より良い銘柄選びにつなげられます。

先ほどの東証1部全体のPER・PBRもそうですが、業種別のPER・PBRは、東京証券取引所が毎月第1営業日に前月末時点の数値を公表しています。

(参考)規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧|日本取引所グループ

東証には33の業種がありますが、その中から気になる業種をいくつか見てみたいと思います。

・25|情報・通信業

PERは2019年12月時点で15.1でしたが、2020年にテレワーク推進に伴う各種ツールの導入が進み、関連株が一斉に注目を浴びたことで、今年1月には34.4まで伸びています。

一方でPBRは、現在2.1と割安の目安とされる1.0を大きく超えていますが、2019年12月時点でも1.2でした。この高PBRの背景には、他業種よりも少ない資産で利益を生み出すことができるIT関連企業の特徴があるのではないでしょうか。

・8|医薬品

この業種もPER・PBRともに市場全体より高くなっています。ただ、2019年12月時点でもPER31.7・PBR2.3と比較的高く、新型コロナウイルスだけが要因ではないようです。高い指標を維持する背景には、近年バイオ関連が成長産業として捉えられていることが背景にあると考えられます。

・17|輸送用機器

PERは20.1と市場平均よりも低くなっています。ただ、2020年は国内の新車販売台数が11.5%も減少したにもかかわらず、2019年12月時点のPER12.6から大幅に伸ばしているのは意外に感じられます。自動車関連企業は国内経済を牽引する存在であるため、個別の業績よりも、市場全体の動きによって株価が上下するのではないでしょうか。

実際、2019年12月に7,700円台だったトヨタ自動車<7203>の株価は、2020年3月には6,100円台まで下落しましたが、年末に7,900円台にまで回復。日経平均株価と同じような動きをしています。

・10|ゴム製品

PERとPBRともに市場全体より低い水準ですが、自動車の販売台数減少に伴う業績悪化の影響を受けているようです。2019年1月まで株価2,100円以上を維持していた横浜ゴム<5101>は2020年12月時点で1,500円台を推移しており、回復の兆しは見えていません。

また、ゴム業界というのが全体として、医薬品業界のように人気がないことも、低PER・PBRの要因になっているのかもしれません。

・28|銀行業

市場全体より低い水準ですが、この点は業界特有の理由があります。国内市場の縮小や低金利政策が業界にとって向かい風となるほか、自己資本比率が10%以下と低い業界であるため、PBRが低水準に収まりやすい傾向にあります。他業種ではPBR1.0が割安の目安ですが、銀行株では0.4と言われています。

業種別の指標にも目を向けよう

気になる銘柄を見つけた際には、その銘柄が属している業種のPER・PBRと比較することで、銘柄選びにおける判断ミスを防ぐことができます。

たとえ市場全体よりは低くて割安なように見えても、業種別の数値よりも高い場合には、割高である可能性があるからです。また、一般的に言われているPER15.0、PBR1.0という目安も、業種によってはそのまま当てはめることができない場合もあります。

業種別の指標を見ることで、それまで見えていなかった部分が見えるようにもなります。さらに、月次の推移を追っていけば、その業種全体に対する注目度を把握することもできます。

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[執筆者]山口 伸
[やまぐち・しん]化学メーカー勤務の研究開発職。平日は研究に没頭するが、お金や資産運用にまつわる話が好きで、休日は資格を活かした副業と株式投資にいそしむ。趣味は街歩きと読書。
 
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