株式市場の「注目株」がひと目でわかる、たったひとつの方法(後編)

岡田禎子
2022年6月10日 18時00分

Stas Malyarevsky/Shutterstock

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出来高から「注目株」を探す

誰だって「みんながいま注目している銘柄」は気になるでしょう。それをひと目で知ることができるのが「出来高売買高)」です。その銘柄が取引された数を、売買された株数で示しています。「500株を1,000円で売買」という取引が成立した場合、その出来高は「500株」です。

出来高は日々増減を繰り返していますが、ある日突然、急に増えることがあります。これは「何らかの理由」で、その銘柄の取引が活発化したことを意味しています。投資家たちの注目が一斉にその銘柄に集まった、ということです。

こうした出来高の急増からは「投資家心理」を読み解くこともできます。

注目が集まってどんどん取引が成立するようになることで、より多くの人が集まってきて、もっと高い価格で売買されるようになり、それを見た人がさらに高値の取引をめがけて集まってくる……こうして、出来高急増とともに株価が押し上げられていくのです。

出来高は、株式市場における「注目度」と「投資家心理」を測ることのできる重要な指標であり、出来高の急増は、相場のエネルギーが高まって「いずれ株価が大きく動き出すシグナル」と言えます。

出来高が急増する2つの理由

出来高をうまく活用するには「出来高が急激に増えたとき」に注目する必要があります。

でも、そもそもなぜ出来高は急増するのでしょうか? それまでほとんど見向きもされていなかった銘柄が、いきなり株式市場で大きな注目を集め、活発に取引されるようになる背景には、投資家たちの注意を引く「何らかの理由」があるはずです。

その理由は、大きく次の2つが考えられます。

  • 大きな「材料」が出た
  • 「そろそろ株価が動き出すのでは?」とみんなが思った

大きな材料とは、たとえばサプライズの決算発表や、企業買収や業務提携などの大型の経営施策、自社株買いや配当金の増額、株主優待といった株主還元策などが挙げられます。ひとたびこれらの情報が流れると、それが大きな材料となって投資家たちの注目を一斉に集め、出来高が増加します。

また、長い間、株価が同じような価格帯にとどまっている銘柄では、多くの投資家が「そろそろ動くのでは?」と思うタイミングというものがあります。

たとえば、「決算が良さそう」「何かリリース(IR情報)が出そう」という推測が広がったとき、あるいは、テクニカル分析によって株価チャート上に何らかのサイン(トレンドの転換点など)が出たとき、または、過去の経験則という場合もあります。

こうした材料は、通常であれば大きな動きにつながらないことも多いです。しかし、長く株価が停滞しているような銘柄では、「これがきっかけで大きく動くのでは!」「今度こそ上がるのでは!」といった投資家たちの思いが膨らんで、出来高を大きく押し上げることがあるのです。

裏を返せば、出来高が急増した場面というのは、普段よりも多くの投資家が「そろそろでしょ」と思った瞬間だということにもなります。そういう目でチャートを見てみると、大きく飛び出した出来高の棒グラフから、そこに群がる投資家たちの雄叫びが聞こえてくるかもしれません。

話題の銘柄に見る、出来高と投資家の注目

出来高の急増は、何らかのきっかけで投資家たちがその銘柄に注目し始めたことを示しています。その原動力である「材料」とは何なのかを知れば、注目が短命で終わってしまうものなのか、それとも長く続いていくものなのかまで把握できるようになります。

2020年に実際に出来高が急増した銘柄の場合で見てみましょう。

・ブイキューブ<3681>

これは、ビデオ会議サービスを運営するブイキューブ<3681>の2020年の株価チャートです。8月から出来高が目立って増えていますよね。まさに、投資家の間で注目度が高まった証拠です。さらにその後、株価が大きく上昇している点も重要です。

では、この出来高急増+株価上昇の「材料」は何だったのでしょうか? この2020年8月は、ビデオ会議サービス「Zoom」を運営する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ<ZM>の決算発表を月末に控えていました。

そこで、「コロナ禍でビデオ会議が急増した恩恵で、ズームは好決算が出るだろう」→「それに釣られてブイキューブの株価も上がるのでは?」と連想した多くの投資家が、実際にブイキューブ株を買い進めたのです。その結果、このように出来高が急増しました。

実際にズーム社は、売上高が前年同期比で4.6倍という超のつく好決算を発表し、ブイキューブの株価も急騰したのです。その後も、8月以前の出来高と見比べると相対的に棒グラフが高くなっており、好決算という材料に端を発した注目が継続していることが見て取れます。

出来高急増⇒株価上昇、とは限らない

取引が増えて出来高が大きく伸びたということは、「その株が買われている」ということですから、当然、株価は上がっていくもの……と思ってしまうかもしれません。しかし残念ながら、必ずしもそうとは限らないのです。

株価を動かす「材料」には良いものと悪いものがあります。悪材料が出た場合には「ネガティブな注目」が集まって、その株を売りたい人が圧倒的に多くなるため、どんなに取引が活発に行われて出来高が急増しても株価はどんどん急落していく、ということもあります。

・ネットワンシステムズ<7518>

システム構築大手のネットワンシステムズ<7518>は人気テーマ「5G」の代表的な銘柄ですが、2020年1月、架空取引の疑いがあるという報道が出たことで、まさに「投げ売り」という表現がふさわしい状態となります。1月27日にはストップ安となり、前年来安値を更新しました。

閉店間際のデパ地下のお惣菜コーナーでは、「もってけ泥棒〜」とばかりの値引き合戦が始まります。すると、それを狙っていた人々が殺到して売り場は活況になりますが、あれと同じ現象です。このように、株価の底値で出来高がさらに増えることを「セリング・クライマックス」といいます。

ただ、上のチャートをよく見ていただくと、急落した後、1か月ほどで株価が反転していることがわかります。下がるところまで下がった株価が、底をついて上昇に転じていますよね。このとき、出来高もまた急増し、投げ売りのときと同じくらい高い棒グラフになっています。

これは一体どういうことか、ご説明しましょう。投げ売りされている銘柄に投資家が群がると、出来高が急増します。すると、株価チャートや出来高急増ランキングなどでそれを知った投資家が、「我も我も」とさらに殺到します。

デパ地下のお惣菜であれば、一度値下げされた後に値段が上がることはまずありません。でも株式の場合、投資家が押し寄せることでやがて需給のバランスが変わり、売りたい人よりも買いたい人のほうが多くなることで、株価は再び上昇を始めるのです。

このケースのように投げ売りによって株価が下がりすぎた場合、反動で上昇に転じる可能性が高まります。ただし、出来高急増は一時的に高まったネガティブな注目の結果にすぎませんので、ほとぼりが冷めれば出来高はまた元の水準に戻っていきます。

まずは「注目株」から始めよう

ひょっとすると、こんな疑問を抱いている人もいるかもしれません。「注目されている銘柄よりも、まだ誰も注目していないのほうが、安く買えて儲かりやすいのでは?」と。

特に株を始めたばかりの頃は、「なるべく安い株を!(損をしてもいいように)」という意識が強かったり、あるいは「みんなよりも先に“掘り出し物”を見つけたい!」という思いがあったりして、ほとんど知られていない銘柄を買ってしまう人もいるようです。

でも、ちょっと考えてみてください。ここで言う「注目株」とは出来高が大きな銘柄、つまり、取引が活発に行われている銘柄です。それに対して「ほとんど知られていない株」は出来高がとても小さく、つまり、取引自体ほとんど行われていないことを意味します。

どんなときも忘れてはならないのは、株式投資は相対取引だということ。売りたい人と買いたい人が出会って、両者の希望が合致してはじめて、取引は成立します。

注目株は売買が活発に行われているため、自分の希望と合致する相手を見つけやすく、取引が成立しやすい環境です。一方、出来高の小さい銘柄は、ほとんど参加者のいないオークションと同じで、なかなか取引が成立しなかったり、時には、相手の都合で価格を歪められたりもします。

こうしたリスクを回避する観点からも、特に初心者の場合は、まずは注目株から手がけてみるほうが安全なのです。

出来高の向こう側に思いを馳せて

出来高が急増した裏側を知ることで、投資家たちが何に注目したのか、そこにどんな期待や失望を抱いて売買に向かっていったのかを理解することができます。それが、大きな注目を集めている銘柄や、長期間にわたって投資家の目を引き続けている銘柄を見つけることにつながります。

「誰も知らない銘柄を密かに発見して、テンバガー(株価が10倍になること)を狙うぞー!」と意気込んでいる方もたまにいらっしゃいますが、誰も知らない銘柄は、そもそも誰も持っていないから売り手がいない(買いたくても買えない)、ということをぜひ覚えておいてください。

取引が活発な銘柄は、出来高のランキングを見れば一目瞭然です。まずは手慣らしにそれらの銘柄を手がけてみて、日々動いていく出来高(と株価)の向こう側にいる無数の投資家たちの心理を思い描きながら、少しずつ腕を上げていっていただければと思います。

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[執筆者]岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) かぶまどアワード2021大賞・検索賞
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