公募割れが多発した2021年上期のIPO市場を振り返る

山下耕太郎
最終更新日:2021-08-12 公開日:2021-08-10

《2021年上期のIPO新規株式公開)の数は53社(TOKYO PRO Marketを除く) で、2008年のリーマンショック以降の上期で最多となりました。しかし、初値が公募価格を割れる銘柄も複数発生しており、IPO株投資でも必ず勝てるわけではない、という教訓を改めて突きつけられることとなりました》

2021年上期のIPO市場を振り返る

2021年の上期(1~6月)には53社がIPOを果たしました。2020年の上期は39社、2019年は41社であり、コロナ禍でIPOの件数は増えています。

リーマンショック前の2006年には上期のIPOが83社ありましたが、その後は減少して、2015年の45社が最多でした。しかし、コロナ禍により東京などで緊急事態宣言が発令される中、2021年上期のIPOはリーマンショック後の最多を記録することとなりました。

期越え決算のIPOが続出したワケ

2021年上期のIPO53社のうち、実に22社が6月のIPOです。例年、IPOは3月および9~10月と12月に多くなる傾向にあり、6月のIPOが上期の約半数にも上るのは珍しい事態です。

2021年6月のIPO銘柄の多くは2020年3月期が公開申請決算であり、期越え決算でのIPOです。

3月期決算の企業は6月の株主総会で決算が確定します。したがって、6月に新規上場する3月期決算企業のほとんどは、前期(2020年3月期)決算で公開申請を行うことになります。

IPOの件数はコロナ禍の影響をほとんど受けていませんが、実体経済におけるコロナ禍の影響はいうまでもありません。そして、公開申請決算期の延期は非常に事務的な負荷がかかります。

そこで、コロナ禍で業績的なリスクのある企業については2020年3月期決算で公開申請を行い、2021年3月期決算の数字が固まって業績的に問題がないと確認ができたタイミングで、IPOが行われている状態です。

コロナ禍で本来2021年3月までにIPOを行う予定だった企業のIPOが後ろ倒しとなった結果、2021年上期のIPO件数が大幅増となったのです。

2021年最初の公募割れ銘柄も発生

期越え決算が非常に多いという特殊な2021年6月のIPO市場ですが、公募価格より低い初値が付いた「公募割れ」も複数の銘柄で発生しています。

上場日 コード 銘柄名 公募価格 初値 下落率
6/22 4489 ペイロール 1,380円 1,290円 −6.5%
6/22 7372 デコルテ・ホールディングス 1,720円 1,582円 −8.0%
6/23 7791 ドリームベッド 1,460円 1,350円 −7.5%
6/24 4932 アルマード 880円 861円 −2.2%

2021年6月には4社が公募割れとなりました。実は2021年のIPO市場では、5月までは1社も公募和をしていなかったのですが、6月に入って4社も公募割れをしてしまったことになります。上期全体の53社から見ると7.5%に相当します。

過去の公募割れの数を見てみると、2020年は1年間のIPO93社中23社が公募割れとなっており、2019年は86社中9社、2018年は90社中9社、2017年は90社中8社が公募割れでした。

2020年はさすがに数が飛び抜けていますが、それ以前に数字と比べると、2021円6月の4社というのが1か月の公募割れとしてはかなり多くなっていることがわかります。

〈参考記事〉IPO公募割れを引き起こす3つの要因と3つの共通点

その一方で同じ6月IPO組の中には、アイ・パートナーフィナンシャル<7345>のように公募価格3,120円に対して3倍以上となる初値9,880円をつけたIPO株もあり、全体として見れば、2021年6月も勝っています。

上場株投資と異なり、IPO株は抽選に当たらなければ投資できません。つまり、なかには「抽選で当たった銘柄が運悪く公募割れになってしまった……」という投資家も一定数発生しているでしょう。

IPO株投資は「負けにくい投資」といわれますが、それは「必ず負けない投資」ではないということです。

IPOの数は景気に大きく左右される

IPOを行う企業のほとんどが利益成長中、もしくは今後利益成長が期待できる企業です。不景気のときに利益成長がなされる企業は少なく、景気がよいときは利益成長する企業が多い、というのが通常です。したがって、景気のよいときはIPOの数も多くなります。

2022年以降のIPOも、株式市場および経済の状況に左右されると考えられます。

その観点ではワクチン接種によりコロナ感染の克服が進みつつある中で、金融市場と実体経済の乖離がどのような形で着地を迎えるのか(金融市場が下落して実体経済に合わせるのか、それとも、実体経済が伸びて金融市場に合わせるのか)、という点がIPOの件数にも大きな影響を与えることになるでしょう。

オリンピック後のIPOはどうなる?

コロナ禍で実体経済が落ち込む一方で、株式市場はある程度、堅調に推移しています。IPO市場も同様であり、2021年上期のIPO件数はリーマンショック前の水準に迫りました。

ただし、6月には初値が公募価格を下回る銘柄も複数生じており、IPO株投資といえども必ずしも負けないわけではないことを改めて突きつけらる結果となりました。

東京オリンピックを終えた8月以降のIPO市場はどうなるのか。引き続き、慎重に見守っていきたいと思います。

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[執筆者]山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌 かぶまどアワード2020大賞
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