新NISAでも人気の「高配当株」 追加利上げの影響はどうなる?
《安定的なインカムゲインが魅力で、個人投資家にも人気の「高配当株」。利上げによる影響は一体どうなるのでしょうか?》
追加利上げで高配当株への影響は?
日銀は7月31日の金融政策決定会合で追加利上げを決定し、政策金利を0.25%程度に引き上げる見通しです。今年3月、長年続けてきた「マイナス金利政策」を終了して約17年ぶりの利上げを行い、それまで世界的にも異例な対応を続けてきた日本の金融政策が、正常化へと大きく舵を切りました。
日銀が金融引き締めに転じて長期金利が上昇すると、株式市場全体に下落圧力がかかります。
株価に対して高い配当金を支払われる「高配当株」の場合も、当然、株価下落リスクに晒されます。さらに、金利上昇によって債券の利回りが上昇すると、高配当株の配当利回りの相対的な魅力が低下し、多くの投資家が債券にシフトすることで、高配当株から資金が流出する可能性もあります。
ただし、高配当株の中には強固な財務基盤を持ち、金利上昇の影響を受けにくい企業も存在するため、一概に高配当株が不利になるとは言えません。したがって、日銀の金融政策変更が高配当株に与える影響を判断する際は、個別企業の業績や財務状況をよく見極めることが重要になります。
高配当株とは
高配当株とは、株価に対して高い配当金を支払う株式のことを指します。一般的に、配当利回り(株価に対する年間配当金の割合)が高い3%以上の株式が「高配当株」と呼ばれます。
高配当株は安定的なキャッシュフローを生み出すため、長期的な資産形成や定期的な収入を目的とする投資家に適しています。その一方で、株価の上昇によるキャピタルゲインは限定的である点には注意が必要です。
上場企業は、利益の中から株主に還元する配当金の方針を、様々な方法で決めています。
従来は、利益に対する配当金の割合(配当性向)を基準にすることが多かったのですが、最近では、業績が悪化しても配当金を減らさない「累進配当」や、自己資本(会社の持ち金)に対する配当総額の割合(自己資本配当率、DOE)を重視する企業も増えてきました。
高配当を狙って投資をする際は、その企業の業績の動きや配当方針をよく確認することが大切です。特に、配当金が減ってしまうリスクは避けるようにしましょう。
高配当株の最近の動向
2023年3月末に東京証券取引所が発表した「株価を意識した経営」の要請を受けて、高配当株は、年度を通じて上昇傾向を示しました。高配当の銘柄で構成される「日経平均高配当株50指数」は、今年度に入ってからも連日のように最高値を更新しています。
7月4日につけた最高値の75376.74は、2023年3月末と比べて67.2%も上昇率に達しています。これは、同期間の日経平均株価の上昇率である約46%を上回る水準です。
この日経平均高配当株50指数は、日経平均株価の構成銘柄のうち、予想配当利回りが高い50銘柄で構成される株価指数です。安定的に高い配当金を支払う傾向のある優良企業を選別することで、配当利回りに着目した投資を可能にしています。6月末時点の配当利回りは3.85%。
配当や自社株買いなど株主還元の強化は、2024年も日本株式市場を支える重要な投資テーマであることは疑いありません。金利が上昇傾向にある現在の市場環境において、投資家は現状の還元水準に満足せず、業績と配当の両方を伸ばす企業を選別することができます。
ただ、今後の金利上昇を見据えた上で、持続的な成長が期待できる高配当株に注目することが重要です。単に高い配当利回りを追求するのではなく、企業の収益力や成長性を評価し、長期的に配当を増やしていける企業を選別することが、高配当株投資の鍵となるでしょう。
新NISAでも高配当株が人気
日本証券業協会による証券会社10社(大手5社、ネット5社)へのヒアリング調査の結果、今年1〜6月のNISAを通じた買付額は7兆5000億円を突破しました。これは、前年比で4倍を超えています。
NISAでは積み立て投資が注目されていますが、実は、買付額のうち77%は成長投資枠が利用されています。さらに、そのうち59%は株式で、投資信託の比率41%を上回っているのです。そして、買付上位10銘柄のうち、配当利回り3%以上の銘柄が6つあり、高配当株の人気が高いことがわかります。
日経平均株価が高値圏にある中でも、新たな投資家層がコツコツと高配当株を購入していることが見て取れます。
日本株はまだ割安?
日経平均株価の予想PERは現在20倍台にまで上昇しています。過去10年の平均が14倍台だったことに比べれば、割高な水準と言えます。ただ、足元では円安ドル高が進んでいるため、2024年度上半期の企業業績は上向き、PERに下げ圧力がかかり、割高感は薄れる可能性が高い……とも考えられます。
また、高配当株は一般的に、株価の下落局面でも比較的強い傾向があるといわれます。高配当株には、規模が大きく財務状況が安定したディフェンシブ性の高い企業が多いため、下落相場でも比較的堅調に推移する傾向があるからです。
また、キャピタルゲイン(値上がり益)を期待しにくい下落相場では安定的な配当収入を求める投資家の買い支えがあることに加え、株価下落により配当利回りが上昇し、バリュエーション面での魅力が高まることで投資家の買い需要が喚起される可能性もあります。
ただし、高配当株であっても業績悪化により配当が減額・廃止される恐れはあります。また、市場全体が大きく下落する局面では、当然ながら高配当株も影響を受けるでしょう。
高配当株投資では、個別企業の配当の安定性や、財務の健全性をよく吟味することが重要です。また、高配当株だけに集中投資するのではなく、分散投資を心がけて、ポートフォリオ全体でリスクの低減を図るようにしましょう。